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出版者情報
〈序文〉の戦略 文学作品をめぐる攻防
- 書店発売日
- 2024年2月15日
- 登録日
- 2024年1月11日
- 最終更新日
- 2024年4月5日
書評掲載情報
2024-04-28 |
産經新聞
朝刊 評者: 富岡幸一郎(文芸評論家) |
2024-04-13 |
朝日新聞
朝刊 評者: 保阪正康(ノンフィクション作家) |
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紹介
文学作品が刊行されたあと非難や攻撃や異議を受けるというのは今日でも目にする光景です。学術的な論文や書籍でも、文学作品でも、盗用の疑惑をもたれたり、実際に告発されたりすることは決して稀ではありません。そういうとき、後ろめたさゆえに無言を貫く著者もいるでしょう。告発はあたらないと思いつつ、言い訳をしないのが美徳だと考えて、あえて反論しないケースもあるでしょう。その一方で、批判は間違っていると確信して反論する著者ももちろんいます。
こうした光景はめずらしくないだけに、あらかじめ弁明や正当化、謝罪や説明を表明する著者がいることにも不思議はありません。本書は「序文」に注目して、作家たちが序文でいかなる戦略を展開しているのかを紹介しつつ、個々の戦略を分類しつつ説明していきます。すでに起きているものであれ、まだ起きていないものであれ、攻撃に対する防御のために利用される戦場が序文であり、そこには文学者たちが編み出した戦略と戦術があるのです。
目次を見ていただければお分かりのように、想定されている「攻撃」は実に多種多様であり、それに応じて「防御」の戦術も多種多様です。西洋古典から近代文学に至るヨーロッパ文学に造詣が深いだけでなく、修辞理論にも通じた著者が、渉猟した膨大な作品から実例を選りすぐりました。そこで繰り広げられている作家たちの戦いの場に、本書で立ち会ってください。文学作品を読んでいる時には見過ごしてしまう巧妙なテクニックの数々を目撃し、驚愕すること、請け合いです。
[本書の内容]
第I部 序文の防御戦略を記述するさまざまな理論
第1章 伝統レトリック
第2章 メタ談話
第3章 ポリフォニー
第4章 読 者
第5章 言語行為
第6章 ポライトネス
第II部 攻撃側のさまざまな訴因
第7章 涜 神
第8章 猥 褻
第9章 剽 窃
第10章 背徳と反体制
第11章 性別や人種に関する規範に違反
第12章 有害無益
第13章 虚偽と実在指示
第14章 ジャンルの規則に違反
第15章 悪 文
第16章 不出来
目次
序 論
第I部 序文の防御戦略を記述するさまざまな理論
第1章 伝統レトリック
法廷モデル/問題状況/定義の問題状況/性質の問題状況/転移の問題状況/論証のフィギュール/比較問題/聴き手の好意を得ること/使用と説明
第2章 メタ談話
発語内行為標識/ヘッジ/確実性標識/言説帰属者/態度標識/コメンタリー
第3章 ポリフォニー
否 定/譲 歩/比 較/条件文/確 認/ことわざ/暗示引用/アイロニー/パロディー
第4章 読 者
間接的に特徴づけられた読者/直接的に特徴づけられた読者/読者層の表示/読者のふるまい方自体の表示/記述的用法
第5章 言語行為
謝 罪/弁 明/正当化/説 明
第6章 ポライトネス
尊 敬/謙 譲/敬 遠/気後れ/複合的使用
第II部 攻撃側のさまざまな訴因
第7章 涜 神
マヌティウス/ランバン/ヒッフェン/イーヴリン/ハッチンソン/デュファイ
第8章 猥 褻
出版自体の可否/浄化しない/選択による浄化/置換による浄化/削除による浄化
第9章 剽 窃
過 失/偶然の一致/非類似/単なる類似/先 行/古典の翻訳/複数の説明/より強烈な《対抗非難》
第10章 背徳と反体制
作品自体の性質に基づく議論/作品と作者・読者の関係に基づく議論/著者と語り手の距離づけによる議論/逆の弁明
第11章 性別や人種に関する規範に違反
主題に関する条件/読者層に関する条件/分量に関する条件/抑 圧/人種差別
第12章 有害無益
教育的意義(1)/教育的意義(2)/予備教育/娯 楽/読者の態度
第13章 虚偽と実在指示
事実性の主張/「発見された手稿」/ありそうもない出来事/虚偽性の主張/事実と虚偽の混合
第14章 ジャンルの規則に違反
ジャンル誤認/ジャンル誤認なしの規則違反
第15章 悪 文
サミュエル・ジョンソン/ドーヴァー・ウィルソン
第16章 不出来
執筆時の悪条件/《適合》/課題の困難さ/執筆能力、執筆態度、執筆目的
結 論
注
文献一覧
あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。