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国民とは何か エルネスト・ルナン(著/文) - 講談社
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国民とは何か (コクミントハナニカ)

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発行:講談社
文庫判
88ページ
定価 600円+税
ISBN
978-4-06-527857-4   COPY
ISBN 13
9784065278574   COPY
ISBN 10h
4-06-527857-0   COPY
ISBN 10
4065278570   COPY
出版者記号
06   COPY
Cコード
C0131  
0:一般 1:文庫 31:政治-含む国防軍事
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2022年3月1日
最終更新日
2024年4月5日
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書評掲載情報

2022-07-02 東京新聞/中日新聞  朝刊
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紹介

「国民の存在は日々の人民投票である」――
この有名な言葉が見出される本書は、エルネスト・ルナン(1823-92年)が今からちょうど140年前、1882年3月11日にパリのソルボンヌで行った名高い講演の記録です。
文献学者として出発したルナンは、その手法を用いて宗教史に取り組み、コレージュ・ド・フランスの教授に就任しましたが、イエスを「比類なき人間」だと断言したことで物議を醸しました。その主張は1863年に『イエスの生涯』(邦訳・人文書院)として出版され、たちまち大ベストセラーとなって名を馳せます。
そんなルナンが、なぜ「国民」について論じることになったのか? そのきっかけは普仏戦争(1870-71年)での祖国フランスの敗北にあります。第二帝政の崩壊、パリ・コミューンの騒擾、そしてアルザス・ロレーヌの割譲といった政治的悲劇を目のあたりにした宗教史家は、にわかにナショナリストとしての顔を見せ始め、政治的な発言を積極的に行うようになりました。その白眉とも言うべきなのが、敗戦から10年あまりを経て行われた本書の講演にほかなりません。
振り返れば、フランス革命に起源をもつとされる「国民国家」の根幹をなす「国民」とは、いったい何なのでしょう? ルナンは、人種、言語、宗教、さらには利害の共通性、国境など、さまざまな要因を検討した上で、それらのいずれも「国民」を定義するには不十分であることを明らかにします。そうして至りついたのが「国民とは魂であり、精神的原理です」という主張でした。国民という「魂」を形成しているものは二つ――過去の栄光と悔恨の記憶、そしてともに生きていこうとする意志です。これら二つを現在という時の中に凝縮した形で述べた定義が、冒頭に挙げた「国民の存在は日々の人民投票である」だったのです。
本書は、フィヒテの『ドイツ国民に告ぐ』(1808年)と並ぶ「国民」論の古典中の古典として読み継がれ、アーネスト・ゲルナー『国民とナショナリズム』(邦訳『民族とナショナリズム』岩波書店)、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』(邦訳・書籍工房早山)など、20世紀のナショナリズム研究を生み出す基礎になりました。その流れは、グローバリズムの進展の中で逆説的にも国民国家が存在感を増している今日もなお継続されています。
にもかかわらず、本書は日本では文庫版で読むことができずにきました。最適任の訳者を得て実現した明快な新訳は、現代世界を理解するために不可欠の1冊となるはずです。

目次

I
II
III
訳者解説
訳者あとがき

著者プロフィール

エルネスト・ルナン  (エルネスト ルナン)  (著/文

1823-92年。フランスの宗教史家・文献学者。主な著書として、本書(1882年)のほか、『キリスト教起源史』(1863-83年)など。

長谷川 一年  (ハセガワ カズトシ)  (翻訳

1970年生まれ。同志社大学教授。主な訳書に、ミラー『ナショナリティについて』、シュナペール『市民権とは何か』(以上、共訳)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。