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精読 アレント『全体主義の起源』 牧野 雅彦(著/文) - 講談社
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精読 アレント『全体主義の起源』 (セイドク アレントゼンタイシュギノキゲン)

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発行:講談社
四六判
288ページ
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-06-258607-8   COPY
ISBN 13
9784062586078   COPY
ISBN 10h
4-06-258607-X   COPY
ISBN 10
406258607X   COPY
出版者記号
06   COPY
Cコード
C0310  
0:一般 3:全集・双書 10:哲学
出版社在庫情報
不明
書店発売日
登録日
2015年8月17日
最終更新日
2015年8月17日
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書評掲載情報

2021-08-14 日本経済新聞  朝刊
評者: 橋爪大三郎(社会学者)
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紹介

ハンナ・アレントの主著が『全体主義の起源』であることに異論はない。ところが、全三部から成るこの大著を愚直に読み、その構成や論の展開を跡づけた研究は今日に至るまで存在していない……。邦訳書が改訂を加えられたドイツ語版を底本とする中、本書は初版である英語版を順序どおりに精読する試みである。ナチズムとスターリニズムという20世紀がもたらした最大の謎にして災厄に取り組んだ大著の全容が、ついに明らかになる。


近年、注目を浴びることの多い思想家ハンナ・アレント(1906-75年)は、ユダヤ人としてドイツに生まれ、ナチスが政権を奪取した1933年に亡命して、1941年以降はアメリカで活動した。『人間の条件』(1958年)や『革命について』(1963年)、『イエルサレムのアイヒマン』(同年)などの著作で知られるアレントだが、その主著は何かといえば、1951年に発表された『全体主義の起源』であることに異論はないだろう。ところが、全三部で構成されるこの大著の内容を包括的かつ系統的に検討した研究は、不思議なことに、今日に至るまで存在していない。
その理由は何か? それは『全体主義の起源』が体系性を欠いたモザイク状の書物だと考えられてきたからである。そうした見解は、ドイツ語版(1955年)の「緒言」で「まず第三部を読んだほうがよい」と書いたカール・ヤスパースにすでに見て取られる。こうして『全体主義の起源』は、第三部「全体主義」と英語版・ドイツ語版の第2版で付加された終章「イデオロギーとテロル」を中心に議論がなされ、第一部「反ユダヤ主義」と第二部「帝国主義」は個別の話題を恣意的に取り上げるだけの対象にされてきた。その結果、この大著を第一部、第二部、第三部という順序で読む試みは、なおざりにされてきたわけである。
さらに日本について言えば、邦訳がドイツ語版を底本としている、という特殊事情を無視できない。ドイツ語版は英語版の単なる翻訳ではなく、多くの加筆がなされたものだが、そのためにかえって論旨の展開が読み取りにくくなっていると言わざるをえない。
こうした現状を踏まえ、本書は主として英語版の初版を読解することを通して『全体主義の起源』の全貌を初めて明らかにする、画期的な1冊である。

目次

序 章 アレントと『全体主義の起源』
第一章 『全体主義の起源』以前のアレント
第二章 ユダヤ人と国民国家――『全体主義の起源』第一部「反ユダヤ主義」
 1 反ユダヤ主義と全体主義
 2 国民国家体制の展開とユダヤ人
 3 反ユダヤ主義の形成
 4 ユダヤ人と社会
 5 ドレフュス事件
第三章 帝国主義と国民国家体制の崩壊――『全体主義の起源』第二部「帝国主義」
 1 国民国家解体の原動力として帝国主義
 2 人種思想の起源
 3 「アフリカ争奪戦」と人種主義の形成
 4 大陸帝国主義と種族的ナショナリズム
 5 国民国家体制の崩壊と「人間の権利」
第四章 全体主義の成立――『全体主義の起源』第三部「全体主義」
 1 階級社会の解体
 2 運動としての全体主義
 3 体制としての全体主義
第五章 イデオロギーとテロル
 1 初版結語
 2 「イデオロギーとテロル」
第六章 戦後世界と全体主義
 1 スターリン死後のロシア
 2 全体主義的帝国主義の問題
結 『全体主義の起源』以降のアレント

著者プロフィール

牧野 雅彦  (マキノ マサヒコ)  (著/文

1955年生まれ。京都大学法学部卒業、名古屋大学大学院法学科博士課程単位取得。名古屋大学法学部助手・助教授などを経て、現在、広島大学法学部教授。専門は、政治学、政治思想史。主な著書に、『歴史主義の再建』(日本評論社、2003年)、『マックス・ウェーバー入門』(平凡社新書、2006年)、『国家学の再建』(名古屋大学出版会、2008年)、『ヴェルサイユ条約』(中公新書、2009年)、『ロカルノ条約』(中公叢書、2012年)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。