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出版者情報
源実朝 「東国の王権」を夢見た将軍
- 書店発売日
- 2014年7月12日
- 登録日
- 2015年8月13日
- 最終更新日
- 2024年1月9日
書評掲載情報
2021-02-20 | 東京新聞/中日新聞 朝刊 |
2019-01-26 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 呉座勇一(日本史学者) |
2014-09-28 |
読売新聞
評者: 松木武彦(考古学者、国立歴史民俗博物館教授) |
2014-09-14 | 東京新聞/中日新聞 |
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紹介
「文弱の貴公子」という八百年来の誤解から実朝を解放する。政治状況の精緻な分析と、和歌への犀利な読み込みが明らかにする「東国の王権」を夢見た男の肖像。(講談社選書メチエ)
「悲劇の将軍」「文弱の徒」「青白きインテリ」「北条氏の傀儡」……。多くの人の抱く三代将軍実朝のイメージはこのようなものでしょう。太宰治や小林秀雄、吉本隆明もつまるところ同様の解釈から逃れられてはいません。
文学側のこうしたイメージのいっぽうで歴史学の側も実朝像を捉えかねているきらいがありました。これは彼が若くして暗殺されてしまった以上、しかたのないことではありますが、やはり承久の乱後に固まった鎌倉優位の政治構造を、それ以前の時代に投射した論、すなわち結果から過去を規定してしまったものといえます。しかし、近年の鎌倉幕府成立史研究は頼朝の晩年から承久の乱までの時期の京都と鎌倉の関係はきわめて流動的であり、事態がどう転んでもおかしくなかったことを明らかにしているのです。
詩魂を以て史料に対し、史眼を以て和歌に向き合わねばなりません。そのときにみえてくるのは「東国の王権」を夢見た男の肖像であり、その歌も、京の公家との縁組みも、有名な宋への渡航計画もまったく違った姿ををあらわしてきます。兄の失脚と暗殺からその位についたという経緯も、当時の政治的諸相から判断すればけっして彼のトラウマになどなっていなかったといっていいのではないか。当然、暗殺事件の背景の検討もしますが、おそらくそれは従来の北条義時黒幕説にはならないはずですし、永井路子の三浦義村首謀者説の慎重な吟味も必要になるでしょう。
本書は『源平合戦の虚像を剥ぐ』『後白河法皇』『頼朝の精神史』『大仏再建』など鎌倉時代史研究をリードしてきた選書メチエが送る、「八百年来の誤解」から実朝を解放する一書であります。
目次
第一章 実朝擁立の舞台裏
第二章 成長する将軍
第三章 青年将軍の歌
第四章 激動の一年
第五章 未完の東国王権
エピローグ ─新たな実朝像の創出
上記内容は本書刊行時のものです。