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出版者情報
ルンタ
- 書店発売日
- 2014年10月29日
- 登録日
- 2015年8月13日
- 最終更新日
- 2015年8月13日
書評掲載情報
2018-01-14 |
朝日新聞
朝刊 評者: 町田康(小説家) |
2015-01-18 |
朝日新聞
評者: 佐々木敦(批評家、早稲田大学教授) |
2014-12-28 |
東京新聞/中日新聞
評者: 陣野俊史(文芸評論家) |
2014-11-23 | 日本経済新聞 |
2014-11-16 | 毎日新聞 |
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紹介
人間という暮らしにうんざりしたというわたしは、それでも自殺はせずに「わたし」と呼ぶ装置をもう少し観察してみたいと望み、家を出て山へ向かうことに。ユという女性との記憶と死んだはずの友人の中西を道連れに山を目指し、吹雪の中で出会った黒い馬「ルンタ」に乗り、さらに深い雪の中を進んでいく。生と死、現在と過去を行き来する人々が、人間の意識や時間の虚構を疑わせながらもまた確かな生を感じさせる。保坂和志氏絶賛!
1996年より劇団FICTIONを主宰。2011年より小説を発表しはじめ、2012年「ギッちょん」で芥川賞候補、同年初の創作集『緑のさる』で野間文芸新人賞を受賞。2013年「砂漠ダンス」で芥川賞候補。同年、「コルバトントリ」で芥川賞候補となる。今最も注目される作家、山下澄人氏最新作。
人間という暮らしにうんざりした、というわたしは、それでも自殺はせずに「わたし」と呼ぶ装置をもう少し観察してみたいと望み、家を出て山へ向かうことに。ユという女性との記憶と死んだはずの友人の中西を道連れに山を目指し、吹雪の中で出会った黒い馬「ルンタ」に乗り、さらに深い雪の中を進んでいく。
生と死、現在と過去を行き来する人々が、人間の意識や時間の虚構を疑わせながらもまた確かな生を感じさせる。
天性の言語感覚と非凡な着想で書かれた傑作。保坂和志氏絶賛!デビュー作『星になる』も収録。
「そろそろ無理か」
ユが言った。たぶんそういった。
「無理ちゃうか」
わたしがいった。
わたしの見ているこいつがそういった。
ユが手元で携帯電話をいじっているのがわかった。
少ししてわたしの携帯電話がメールを受信した。そこにはこう書かれていた。
「でんきつけて」
わたしはため息をわざとつきながら明かりをつけた。そのとたんなぜか電子レンジが大きな音をたてて、パンッと破裂し壊れた。
ルンタがからだを揺すって泣いていたわたしが雪の上へ落ちた。雪は冷たく、わたしはわたしの中にいた。──本文より。
目次
ルンタ
星になる
上記内容は本書刊行時のものです。