書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
死者の力
津波被災地「霊的体験」の死生学
- 初版年月日
- 2021年9月10日
- 書店発売日
- 2021年9月14日
- 登録日
- 2021年8月10日
- 最終更新日
- 2024年4月11日
書評掲載情報
2021-12-26 |
読売新聞
朝刊 評者: 加藤聖文(国文学研究資料館准教授・歴史学者) |
2021-11-14 | 読売新聞 朝刊 |
MORE | |
LESS |
紹介
東日本大震災の津波被災地でしばしば語られる「霊」体験。メディアで取り上げられ、多くの人々の関心を集めてきた。この切実な体験をどう考えるか。物語の力、伝統宗教や習俗、儀礼との関わり、残された人の心身のケア、共同体における作用等から「死者の力」に迫る。被災地住民と宗教者への聞き取りに基づいた調査研究の決定版。
目次
はじめに高橋 原
第一章 物語の力──被災地の霊的体験になぜひきつけられるのか……………高橋 原
メディア報道
亡き人との再会
未知の霊、身近な霊(見知らぬ死者、身近な死者)──阪神・淡路大震災との違い
たとえ幽霊でもいいから会いたい
犠牲者遺族の夢
物語の力
心霊現象と被災地復興のフェーズ
第二章 儀礼の力──被災地の宗教者は霊的体験にどう対処したのか……………高橋 原
儀礼の効用──「楽になりました」
宗教的応急手当て(Religious First Aid)
相談内容──オガミヤとの関係
仏教教団の霊魂観
宮城県の宗教者の「心霊現象」観 (一)仏教僧侶
宮城県の宗教者の「心霊現象」観 (二)神職
宮城県の宗教者の「心霊現象」観 (三)キリスト教牧師
儀礼の力
むすび
第三章 絆の力──被災者たちは亡き人との絆にどう支えられているのか……………堀江宗正
調査に至った経緯──塞翁さんの話
継続する絆──調査の目的と鍵となる概念
日本人にとっての「継続する絆」
方法論
霊の実在の肯定か否定か──語られた現実への限定
悲嘆、記憶、前向きさ
自然な霊的体験──四分の一が気配を感じ、メッセージを受け取っている
悲嘆共同体
震災後の宗教性の高まり?
身近な霊に関する心温まる物語の典型
(夫の霊を近くに感じている女性たち)
被災地外の人が体験する未知の霊についての怪談
(1 自動車の運転手の話/2 工事関係者の話/3 ボランティアの話)
第四章 共同体の力──霊的体験の地域差はなぜ生じたのか……………堀江宗正
「未知の霊」の「身近な霊」への包摂
身近な霊と未知の霊の間
(イエを越えた隣人との絆/地区住民への思い/未知ではないが包摂しがたい霊)
被災地内で語られる「未知の霊」
(宮城県B市のコンビニ怪談/岩手県A市の信号待ち怪談/コンビニ怪談と信号待ち怪談の比較/岩手県A市の回答者の状況/宮城県B市の回答者の状況)
両市の違いを生む三つの要因
(地理的要因/心理的要因/宗教的要因)
「死者の力」を支える「宗教の力」
平時の悲嘆と非常時の悲嘆
第五章 信仰の力──被災地の外から来た信仰者は霊的体験をどのように見たのか……………堀江宗正
被災地における「宗教」
スピリチュアルケアの可能性
復興世俗主義のなかでの宗教者の活動
調査の枠組──信仰者たちの視点の異質性
調査対象者の条件・特徴
被災地での霊的体験
(伝聞への関心の低さと疑い/霊視された被災地──残存思念・実存思念・未浄化霊・祈りの重層性/面識がある人の霊的体験/被災者からの供養の依頼──地域の宗教者には頼めないこと/被災地での信仰者の実体験──複数の現実への開かれ/被災者への傾聴は、すなわち死者への傾聴/高次の霊、仏、神に関わる信念と体験/祈りの体験──震災を起こした神の悲しみと浄化)
霊・霊魂についての見解
(慎重な態度をとる信仰者/霊を認める仏教者/多宗教の信仰者の共通言語としての「霊」と「魂」)
霊的体験への対応の仕方
(憑依への対応──あくまで普通の被災者の霊として/拝み屋による対応/行方不明者の遺体への関心/なぜ東日本大震災では「幽霊」が出るのか)
死者と生者の「継続する連帯」へ
(苦を通しての連帯──仏教系信仰者の場合/霊としての連帯──スピリチュアリズム系信仰者の場合/悲嘆における連帯──神道系信仰者の場合/再び塞翁さんの話)
ポスト近代の悲嘆文化
結 論……………堀江宗正
1 物語的現実としての死者・霊
(現代日本人の一般的な死後観/物語的現実という概念/死者が「ここにいる」という語り/物語的現実の理論的背景/物語によって生きる人間/変容する物語、変容する自己/死者の変容/重要な他者となる死者──阪神・淡路大震災の先行研究から/日本語の「ものがたり」の含意──「かたり」と「はなし」/生々しい死者の物語、生き生きとした死者の物語)
2 霊概念の三モデル
(辞書に見る「霊」/変容する霊──霊の疫病モデル/霊の電磁波モデル、霊の情報モデル/霊の情報モデルの理論的基礎/集合的無意識の噴出とは)
3 死者の力をめぐって
(震災後の死者論/死を経てなお生きる力/和解と連帯のドラマツルギー)
あとがきに代えて──片方の調査者から見た主観的現実……………堀江宗正
参考資料
参考文献
上記内容は本書刊行時のものです。