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室町社会史論
中世的世界の自律性
- 初版年月日
- 2021年10月14日
- 書店発売日
- 2021年10月18日
- 登録日
- 2021年9月10日
- 最終更新日
- 2021年10月12日
書評掲載情報
2022-01-16 |
読売新聞
朝刊 評者: 苅部直(東京大学教授・政治学者) |
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紹介
日本中世、とりわけ室町期の社会は、各社会集団が自律的な「法」をもって対峙しあう多元性を特徴としていた。「自力救済社会」とも形容すべきその実像と、そこに生きた中世人の心性を、「習俗」への着目を通して解き明かすとともに、続く戦国期・近世への展望をも示す。法制史・社会史の視角を継承しつつ室町時代史研究を牽引してきた著者の、ここ二〇年間の研究成果を集成する。
目次
序 章 室町社会の特質
Ⅰ 在地社会の自律性
第一章 『看聞日記』に描かれた中世村落――山城国伏見荘
はじめに
一 伏見荘の姿
二 村々の姿
三 伏見荘の農業環境
おわりに――『看聞日記』に描かれなかった世界
第二章 「鞆淵荘下村歩付帳」を読む――紀伊国鞆淵荘
はじめに
一 鞆淵荘下村の集落
二 鞆淵荘下村の信仰
三 用水路開発と集落――大湯と柳瀬湯
四 谷田開発への挑戦――平野原と神路谷
おわりに
第三章 室町期畿内における町場の構造――大和国古市郷
はじめに
一 古市城と迎福寺
二 古市郷環濠内の構造
三 古市氏の古市郷支配
四 古市郷のなかの町と村
おわりに
第四章 新見荘祐清殺害事件の真相――備中国新見荘
はじめに――通説への疑問
一 ここちよく候間、我らまで目出候――百姓たちは事件をどうとらえていたのか
二 敵討なんどと申しかけらるる子細候とも、下馬の子細にて候――三職たちは何を恐れていたのか
三 家を作り候処にて、下馬咎め仕候――なぜ事件は起きたのか
おわりに
Ⅱ 室町幕府法と在地社会
第五章 足利義持の二つの徳政――山城国木幡浄妙寺の所職をめぐって
はじめに――室町時代の徳政
一 義持の第一次徳政――『御前落居記録』第二八項を読む
二 義持の第二次徳政――『満済准后日記』応永三三年九月二一日条を読む
おわりに――災異徳政から正長の徳政一揆へ
第六章 室町殿権力と広域逃散
はじめに
一 百姓逃散と逃散許容禁令
二 室町殿権力と逃散許容禁令
三 広域逃散の実態
おわりに
Ⅲ 習俗が構成する中世社会
第七章 習俗論としての社会史
はじめに
一 戦後歴史学から社会史への系譜
二 日本の社会史とヨーロッパの社会史
三 八〇年代における習俗論の成果と課題
四 中世習俗論の総括のために
付録 日本中世慣習法一覧
補論 習俗論の射程
第八章 中世日本の互助金融――室町幕府の訴訟記録にみえる頼母子
はじめに
一 室町幕府の訴訟記録の世界
二 頼母子をめぐるトラブル
三 頼母子の「式目」
四 「逓減式」の誕生
おわりに――中世人の結集する力
第九章 日本中世後期の私文書と公権力
はじめに
一 無文書契約の意外な広がり
二 徳政と文書契約
三 戦国大名の買地安堵
おわりに
第一〇章 湯起請をめぐる室町人の意識
はじめに
一 共同体にとっての湯起請
二 当事者にとっての湯起請
三 為政者にとっての湯起請
おわりに――湯起請を支えた心性
第一一章 中世日本における人身御供の選抜法
はじめに
一 戦国のロシアンルーレット
二 貧乏くじの本義
三 貧乏くじと解死人制
四 貧乏くじの起源
おわりに――貧乏くじの論理
第一二章 習俗雑考
聖なる休戦日
法然の「敵討ち」をめぐって
武器としての「棒」
なぜ室町の酒屋は金融業を営んだのか?
人肉食研究の地平――氏家幹人『増補大江戸死体考』によせて
「強方」考
「儺房」考
「篠を引く」の起源と進化
Ⅳ 戦国時代への展望
第一三章 戦国の法と習俗
はじめに
一 呪術からの訣別
二 折中・中分への傾斜
三 職権主義の萌芽
おわりに
終 章 比較史と習俗論
一 比較史の可能性
二 湯起請の比較史
三 耳鼻削ぎの比較史
おわりに
初出一覧
あとがき
索 引
上記内容は本書刊行時のものです。