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論語物語
- 初版年月日
- 2008年11月
- 書店発売日
- 2008年11月6日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2013年5月9日
紹介
-『論語』は「天の書」であるとともに「地の書」である。孔子は一生こつこつと地上を歩きながら、天の言葉を語るようになった人である。天の言葉は語ったが、彼には神秘もなければ、奇蹟もなかった。いわば、地の声をもって天の言葉を語った人なのである。…こうした『論語』のなかの言葉を、読過の際の感激にまかせて、それぞれに小さな物語に仕立ててみたいというのが本書の意図である。
と、『論語』とともに生きた著者・下村湖人は本書の序文で語る。本書はその意図が活き、『論語』の真髄を小説として、物語として、イメージゆたかに読み取ることができる。
目次
序文
富める子貢
瑚璉
伯牛疾あり
志をいう
子路の舌
自らを限る者
宰予の昼寝
觚、觚ならず
申[木長]の欲
大廟に入りて
豚を贈られた孔子
孝を問う
楽長と孔子の目
犂牛の子
異聞を探る
天の木鐸
磬を撃つ孔子
竃に媚びよ
匡の変
司馬牛の悩み
孔子と葉公
渡し場
陳蔡の野
病める孔子と子路
一以って貫く
行蔵の弁
永遠に流るるもの
泰山に立ちて
解説 納村公子
前書きなど
■富める子貢
[論語・読み下し] 子貢曰く、貧にして諂うことなく、富みて驕ることなくんば如何と。子曰く、可なり、未だ貧にして楽しみ、富みて礼を好む者に若かざるなりと。子貢曰く、詩にいう、切するが如く、嵯するが如く、琢するが如く、磨するが如しとは、それ、これをこれいうかと。子曰く、賜や、始めて与に詩をいうべきのみ。これに往を告げて、来を知る者なりと。 ――学而篇
[物語] 子貢は、その日、大きく胸を張って、腹の底まで朝の大気を吸いこみながら、ゆったりと、大股に歩いていた。彼は、このごろ、いい役目にありついて、日ましに金回りのよくなっていく自分のことを考えて、身も心もおのずと伸びやかになるのであった。
(先生は、顔回の米櫃の空なのを、いつもほめられる。そして、天命をまたないで人為的に富を積むのを、あまり快く思っていられないらしい。しかし、腕のある人が、正しい道をふんで富を積むのが、なんで悪かろう。自分にいわせると、貧乏はそれ自体悪で、富裕は善だ。第一、金に屈託がないと、楽々と学問に専念することができる。それに、なによりいいことはだれの前に出ても、平生どおりの気持ちで応対ができることだ。貧乏でいたころは、どうもそうはいかなかったようだ)
彼は、数年前までの、苦しかった時代のことを思い出して、何度も首を横にふった。
(あのころは、貴人や長者の前に出ると、変にぎこちなく振る舞ったものだ。むろんそれは、自分の貧乏ったらしい姿を恥じたからではない。そんなことを恥じるほど弱い自分でもなかったようだ。その点では、子路にだって負けないだけの自信を、自分もたしかに持っていた。ただ、自分は、少しでも相手に媚びると思われたくなかったのだ。
貧乏はしかたがないとして、そのために物欲しそうな顔つきをしているように見られたら、それこそおしまいだし、かといって、礼を失するような傲慢なまねもできないので、つい物腰がぎこちなくならざるを得なかったのだ。今から考えると不思議なようだが、貧乏という事実がそうさせたのだからしかたがない。やはり貧乏はしたくないものだ)
(それにしても――)
と、彼は急に昂然と左右を見まわしながら、心の中でつぶやいた。(下略)
版元から一言
◎ここがポイント
1.難解で読みにくかった「論語」が物語形式で、楽しく読める。
2.万葉の昔から日本人の考え方に影響を与えてきた「論語」。価値観の混乱した現代に、また次代へと伝えるべき古典の内容がわかりやすい。
3.孔子の鋭い乱世の人間観察を活かした物語は、人生を学ぶのにもよい。
◎こんな人にお薦め
・論語を読みたいが、原文では辛いという人。
・中国の古典が好きな人。
・人生に迷い、もっと考えたいと思っている人。
上記内容は本書刊行時のものです。
