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児童文学批評・事始め
- 初版年月日
- 2001年10月
- 書店発売日
- 2002年10月17日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2014年1月3日
紹介
宮川健郎・藤田のぼる・細谷建治ら10人の児童文学評論家による待望の評論集。好評を頂いている「児童文学への三つの質問」の姉妹編にあたる。児童文学を語ることで、混迷している日本の大人と子ども関係のありように対しても一助となる一冊。
目次
児童文学批評という夢 宮川健郎
「共感」の現場検証 西山利佳
ひとは何になるのか 奥山恵
扉の向こうの少年A 濱崎桂子
日本児童文学批評史のためのスケッチ 細谷建治
竹下文子作品における猫の役割 井上征剛
ジャンルとしての「児童文学」 佐藤宗子
萩原規子作品の少女と恋 原田留美
中国児童文学批評の熱き日々 河野孝之
児童文学批評家への道 藤田のぼる
前書きなど
音楽でも美術でも政治でもスポーツでもなく、なぜ文学評論なのか、そして小説でも詩でも短歌でもなく、なぜ「児童文学評論」なのか。なぜ児童文学の創作ではなく、児童文学の批評なのか。(中略)僕もここで児童文学批評という行為に向かうモチーフに実際どのようなものがありうるのかということを考えてみようと思う。・・・
大人である児童文学の読者が、児童文学の創作ではなく批評という立場に身を置こうとするとき、まずもって考えられるのは、自分が受けた作品からの感銘を言葉にしたい、そして併せて作品に対する助言というか、激励というか、その作品がもっといいものになるために、あるいは自分なりに受けとめたその作品のねらいといったものがより完遂されるために、その問題点について指摘したい、語りたいといった感情だろう。作品、作家に対する共感的、同伴者的立場とてもいえようか。ただし、これはかなり一般的な心の動きであるだけに、すべての場合に批評という方向に向かうということではないかもしれない。つまり、こうした思いが批評に向かうためには、その作品のすばらしさや問題点が「他人事」ではなく、どこかで自分自身の問題に重なってくるということがなければならない。作品について、それを書いた作家に向けて語るという部分もあるが、いえば投函しないことを前提としたラブレターのようなもので、問題は自分がその作品に対して感じた親和感や違和感をどう言葉にできるか(あるいは言葉にしてみないと気がすまない)、という点にあり。作家に対してコーチをしようという欲求とは違うのだ。・・・(本文より)
追記
日本図書館協会選定図書
上記内容は本書刊行時のものです。