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児童文化としての動物園教育 原賀 いずみ(著者) - 人言洞
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児童文化としての動物園教育 (ジドウブンカ トシテノ ドウブツエンキョウイク) 到津と上野にみる歴史・実践・未来 (イトウヅ ト ウエノ ニミル レキシ・ジッセン・ミライ)

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発行:人言洞
A5判
縦210mm 横148mm 厚さ11mm
196ページ
並製
価格 2,200 円+税   2,420 円(税込)
ISBN
978-4-910917-20-7   COPY
ISBN 13
9784910917207   COPY
ISBN 10h
4-910917-20-9   COPY
ISBN 10
4910917209   COPY
出版者記号
910917   COPY
Cコード
C3037  
3:専門 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2026年2月28日
書店発売日
登録日
2026年1月9日
最終更新日
2026年3月5日
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書評掲載情報

2026-08-03 日本教育新聞    2026年8月3日付
評者: 藤本鈴香(大谷大学教職アドバイザー)
2026-05-03 全私学新聞  2026年5月3・13日合併号
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紹介

本書では、日本社会における児童文化の意味と役割を探るために、広い視野から児童文化史の先行研究や資料・文献調査を行っている。さらに、上野動物園と到津遊園の歴史や実践を中心に据えて動物園と児童文化の関係史の先行研究や資料の文献調査、動物園での資料調査から戦前の動物園教育活動と児童文化運動との関係性を著者独自の視点から問い直し、次世代に引き継ぐこれからの動物園教育の可能性と未来を展望している。

目次

 刊行に寄せて
序 章 児童文化としての動物園教育を考える意義
 第1節 本書の課題
 第2節 動物園教育の問題点
 第3節 動物園における教育活動と教育的機能
 第4節 児童文化と動物園
 第5節 研究方法と研究の対象
 第6節 研究の構成
第1章 日本社会における児童文化の意味と役割
 第1節 課題の設定
 第2節 児童文化の領域と統一概念
 第3節 児童文化前史としての明治期のお伽運動
 第4節 児童博覧会という児童文化運動
 第5節 大正期の『赤い鳥』運動による児童文化運動
 第6節 昭和前期の児童文化運動と少国民文化運動
 第7節 戦後の民主主義的児童文化運動
 第8節 児童文化運動の変遷と領域や統一概念の意味
第2章 明治期から戦前期・戦中期までの動物園教育活動と児童文化運動
 第1節 課題の設定
 第2節 日本の動物園の発祥と博物館・博覧会の関係性
 第3節 児童博覧会と遊園地型動物園の関係性
 第4節 関西の公立動物園における児童文化運動
 第5節 マスメディアから生み出された動物園教育活動
 第6節 戦時下の動物園と児童文化運動
第3章 児童文化としての動物園教育活動の変遷―久留島武彦と到津林間学園を事例として
 第1節 課題の設定
 第2節 児童文化としての動物園教育
 第3節 久留島武彦と機関誌『お伽倶楽部』
 第4節 到津林間学園における教育活動の変遷
 第5節 到津林間学園の教育活動にみる環境教育の視点
 第6節 お伽倶楽部と到津林間学園の教育活動に対する評価
第4章 戦後の上野動物園を舞台にした児童文化運動と動物園教育活動
 第1節 課題の設定
 第2節 上野動物園の概要と研究の視点
 第3節 明治期から戦中期までの児童文化運動と上野動物園の関係性
 第4節 戦後の上野動物園と民主主義的児童文化運動
 第5節 上野サマースクールにおける動物園教育活動の分析
終 章 児童文化としての動物園の可能性
 第1節 各章の成果と振り返り
 第2節 上野サマースクールと到津林間学園の教育活動・教育内容の比較
 第3節 教育的機能の再評価と未来の児童文化構築のための概念図
 第4節 未来の動物園教育への展望と課題
〈年表〉動物園史と児童文化史の歴史的変遷

前書きなど

刊行に寄せて
■ 児童文化の視点から動物園教育史を紡ぎ直す意義
 本著『児童文化としての動物園教育―到津と上野にみる歴史・実践・未来』は,著者の博士論文『動物園における児童文化の展開と教育的機能に関する歴史的研究~明治期から現代に至るまでの動物園教育活動を事例に~』に基づいている。
 著者は美術教師であり,父親は西鉄到津遊園(現 到津の森公園)園長ならびに海の中道海洋生態科学館館長であったことからインタープリテーションに興味を持ち,日本の動物園教育史,および児童文化史の関係性の研究を学位論文としてまとめられた。
 まず,日本社会における児童文化の意味と役割を探るために,児童文化史の先行研究や資料・文献調査を行い,動物園と児童文化の関係史の先行研究や資料の文献調査,動物園での資料調査から戦前の動物園教育活動と児童文化運動との関係性を明らかにしている。
 特に,恩賜上野動物園でのサマースクールの実施よりも前に始められた到津遊園(現 到津の森公園)における林間学校“到津林間学園”(1937年開始)を動物園教育史の中に位置づけたことは大きい。
 また,学園長であった久留島武彦に着目し,久留島が組織した児童文化団体の機関誌『お伽倶楽部』に掲載された文献調査から,『お伽俱楽部』に掲載された記事が,①野外活動,②ボーイスカウトや通俗教育施設,③動物園関係に分類されることを明らかにした。久留島は明治期からのお伽運動の牽引者で口演童話という言葉の技と動物園という場の体験を重視した教育を目指しており,久留島の意志は,今日に至るまで85年間同園で継承されている。
 さらに,著者は明治期に始まった児童文化運動,お伽運動の変遷をたどることで,動物園におけるインタープリテーション活動のルーツを探ろうとしたところに斬新さがある。インタープリテーションには直接解説と間接解説とがあるが,子どもに向けた直接解説を1937年に到津遊園で始まった到津林間学園に見出し,間接解説の始まりを1902年に恩賜上野動物園が来園者用のガイドブックとして発行した『上野動物園案内』ならびにお伽運動を牽引した博文館が全国の少年たちの科学読み物として発行した『少年世界』の『動物園増刊号』に見ている。ほかにも,明治期後期,大阪を中心に創刊された『お伽絵解こども』に着目し,それが幼児教育に即した内容で構成され,箕面動物園(現在は存在しない),京都市動物園,府立大阪博物場(現 天王寺動物園)の動物が紹介されていることもつきとめ,京都市教育部が発行した『動物園の研究』(1935年)は学校教育との連携教育用ガイドブックの嚆矢であることも明らかにした。また,本書は戦後復興を願った恩賜上野動物園のサマースクールについての研究書ともなっている。
 このように,著者は,これまでの動物園教育史を児童文化という視点から問い直し,広い視野から過去の文献を渉猟し,紡ぎ直したところにオリジナリティーがある。読者諸兄はぜひ一読され,動物園史研究者としての第一歩となる本書の醍醐味を味わっていただけたら幸いである。
                  髙橋宏之(日本動物園水族館教育研究会会長)

■ 動物園教育における“ポピュラーサイエンス”の眼差し
 キリンの長い首,ゾウの長い鼻,ライオンの立派なたてがみ,カバの大きな口など,特徴的な動物たちへの様々な印象を,私たちはすでに幼少期に自ずと記憶に刻んできた。では,それはどこで,誰からどのような手段であったのだろうか。自分自身は幼かったので答えは定かでないかもしれない。一方で,保護者や子育てをする側からみれば,その機会の1つは動物園の訪問もあっただろう。しかしそこにたどり着くまでには,訪園時までの「予習」と,その後の「復習」の時間が積み重なるなどし,ある意味,長い日時・年月をかけてプログラム化された動物・自然・環境学習の成果であったともいえよう。
 予習とは,保護者などの学習支援者から,幾度となく読み聞かされた絵本や物語の中に登場する数多くの動物であり,また人を介さずとも子ども自身が,図鑑やテレビ,インターネットなど,時代ごとに提供されてきた身近なメディアの自学閲覧を通して視覚や聴覚経由で得た情報もあったことだろう。また復習でも同様の学習資源が提供されている。
 このように私たちは,多様な情報源から,動物そのものの特徴だけでなく,彼らがすむ環境,生き様,他の生物との関係性などを予習でき,その後に訪問した動物園で,答え合わせをするかのように,実物を見て感動と共に理解,興味関心を深め,また時には動物画コンクールのようなじっくり細部を観察して表現する活動や,さらにサマースクールや林間学園などの園側が用意した教育事業への能動的参加も,人間形成の分野からも適材適所に功を奏してきたに違いない。
 本書では,動物園や動物園動物への学びを,過去にほとんど事例のない「児童文化活動」という視点から,我が国の動物園の誕生から今日までを丁寧に回顧・解析・研究することで,今後の動物園教育の在り方への提言がなされている点が極めて興味深い。
 これらにより,動物園を単にレクリエーション・レジャー的な見学利用で終わることなく,家庭環境の中で与えられる絵本や科学雑誌を普及啓発教材としてとらえ,その読み聞かせによる学びと,本書にあるように動物園側からも提供されてきた多様な児童文化活動を有機的に組み合わせることにより,その時その時に児童にとって有益な学習資源の提供と学びのプロセスがどのように成熟してきたかを俯瞰的にとらえることを可能にしている。
 動物園における教育普及は,これまでそこで勤務する専門的な知識や経験,技術をもった当事者である飼育員やボランティアスタッフによって,動物や環境への科学的理解への成果を評価することに主眼がおかれてきた。しかし本書で特筆すべきは,ややもすれば外野席や部外者ととらわれがちな保護者や文化活動をする団体側からの視点と,学びを組み立てていくロジックが示されていることは意義深い。さらに,動物や自然に対する感情と価値表現である「大人から与えられる文化」にこそ教育的意義があるとする,新しい学びの仕組みに注目していることは動物園教育への大きな成果の眼差しである。
 私は,大学で教鞭を執っていた時代,「これからの水族館活動には“ポピュラーサイエンス”の考え方が必要になる」と説いた。科学教育は学校教育だけでなく,博物館(動物園・水族館)や図書館などの社会教育分野でも扱われ,特に教育として大上段に構え臨まなくとも,一般の家庭や普段の生活の中でも何気なく科学に触れ,得られた情報を活用しての交流から学ぶきっかけにもなる。面白くて分かりやすい教育を“ポピュラーサイエンス”と呼ぶのであれば,学校教育のような指導案や評価などの教育制度に縛られない,家庭教育や社会教育側にこそ自由度が高い出番がある。
 これと比較して論じれば,本書『児童文化としての動物園教育―到津と上野にみる歴史・実践・未来』も,しっかりと練られて実践されてきた“ポピュラーサイエンス”の手法であるといえよう。
 本書を端緒として今後も本研究が,動物園におけるポピュラーサイエンス教育としても一層に磨きが深まることを願って巻頭言としたい。
        高田浩二(海と博物館研究所所長/海の中道海洋生態科学館前館長)

版元から一言

長きにわたり動物園教育に携ってきた著者の熱い想いが込められた渾身の書です。
幼少期から著者の身近にあった動物園について、その存在の意義を探究し続けて、戦前期から今日までの歴史(巻末に年表があります)と実践を教育者・社会活動実践家・研究者の立場から幅広く柔軟に捉えようとする着眼点は、これから未来の児童文化運動ならびに動物園教育に関わる多くの関係者にとって刮目の必読書としてお薦めします。 

著者プロフィール

原賀 いずみ  (ハラガ イズミ)  (著者

博士(農学) 北九州市立大学大学院修士課程,東京農工大学大学院博士課程修了
北九州インタープリテーション研究会代表/豊の国海幸山幸ネット代表
到津の森公園市民ボランティア「森の仲間たち」環境教育グループメンバー
〈略歴〉
・北九州市小倉生まれ
・北九州市の特別支援学校教諭を経て,福岡県内の小学校,中学校,高等学校,短期大学,専門学校,福岡教育大学や西南学院大学の非常勤講師として,美術教育や環境教育を担当
・到津の森公園市民ボランティア「森の仲間たち」環境教育グループ及び北九州ESD協議会などで活動中
〈著書〉
『到津の森の詩~市民の森到津遊園が育んだ児童文化と環境教育』(北九州インタープリテーション研究会,2003)
〈絵本〉
『いとうづの森のなかまたち~カバのカバオとシロガシラトビのものがたり』(動物の森工房,1999)
『到津林間学園物語』(北九州インタープリテーション研究会,2018)
『ももたろうからのてがみ』(子どもの未来社,2019) など

上記内容は本書刊行時のものです。