書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
核問題の「当事者性」
時間と場所を超えた問いかけ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年12月2日
- 書店発売日
- 2024年12月6日
- 登録日
- 2024年11月2日
- 最終更新日
- 2024年12月6日
書評掲載情報
2025-01-19 |
中国新聞
朝刊 評者: 佐田尾信作(中国新聞客員編集委員) |
MORE | |
LESS |
紹介
ノーベル平和賞を受賞した日本被団協が結成される発端となった、1954年のマーシャル諸島の核実験で漁船員が被ばくした「ビキニ事件」。それ以外にも、太平洋で広範に行われた核実験があった。世界的に顧みられることのなかったこれら核実験や原発事故も含めた核の問題はなぜ「忘れられ」「不可視化」されていくのか。被害者/加害者だけではなく、放射線の影響を受けたすべての人びとの「当事者性」という視点から見つめ直し、核廃絶の可能性を探る。様々な分野の研究者に加えて、医師、学芸員、主婦といった市民の立場で活躍している人で作り上げた、核問題研究に新たな視座を拓く論考集。
目次
はじめに 核問題の「当事者性」 中原 聖乃・三田 貴・黒崎 岳大
ひとこと解説
第Ⅰ部 いまも困難な状況にある核被災者
第1章 ビキニ事件から「忘れられた」被災者たち 聞間 元
第2章 核実験に伴う強制移住者たちの生活・社会・文化の変容ーマーシャル諸島・ビキニ環礁およびエヌエタック環礁の事例から 黒崎 岳大
第3章 太平洋核実験をめぐる当事者性ーキリバス共和国クリスマス島の英米核実験を中心に 小杉 世
第Ⅱ部 核被災を「不可視化」する力
第4章 原発事故による放射能汚染の「無被害化」ー当事者性排除への疑問 三田 貴・島 明美
第5章 何についての当事者かーフランス領ポリネシア核実験の元前進基地ハオにみる当事者性 桑原 牧子
第6章 地方紙報道からみる沖縄水産業における1954年 吉村 健司
第Ⅲ部 グローバルな連帯から考える核問題
第7章 核のゴミを押し付けられる太平洋 中原 聖乃
第8章 太平洋諸島の核実験と地域協力機構 黒崎 岳大
第9章 帝国のホモ・サケルー太平洋核実験をめぐる当事者性と芸術の想像力 小杉 世
第Ⅳ部 一人ひとりが当事者として核被災を引き受ける
第10章 ビキニ事件の「当事者」は誰か―分断を乗り越える大石又七の思想を通して 市田 真理
第11章 核実験の被害を解き明かすーマーシャル諸島ロンゲラップの人びとはなにを被害として語るのか 中原 聖乃
第12章 被爆者と核兵器禁止条約 林田 光弘
核問題の「当事者性」関係年表
おわりに 中原 聖乃
目次
目次
はじめに 核問題の「当事者性」 中原 聖乃・三田 貴・黒崎 岳大
ひとこと解説
第Ⅰ部 いまも困難な状況にある核被災者
第1章 ビキニ事件から「忘れられた」被災者たち 聞間 元
第2章 核実験に伴う強制移住者たちの生活・社会・文化の変容ーマーシャル諸島・ビキニ環礁およびエヌエタック環礁の事例から 黒崎 岳大
第3章 太平洋核実験をめぐる当事者性ーキリバス共和国クリスマス島の英米核実験を中心に 小杉 世
第Ⅱ部 核被災を「不可視化」する力
第4章 原発事故による放射能汚染の「無被害化」ー当事者性排除への疑問 三田 貴・島 明美
第5章 何についての当事者かーフランス領ポリネシア核実験の元前進基地ハオにみる当事者性 桑原 牧子
第6章 地方紙報道からみる沖縄水産業における1954年 吉村 健司
第Ⅲ部 グローバルな連帯から考える核問題
第7章 核のゴミを押し付けられる太平洋 中原 聖乃
第8章 太平洋諸島の核実験と地域協力機構 黒崎 岳大
第9章 帝国のホモ・サケルー太平洋核実験をめぐる当事者性と芸術の想像力 小杉 世
第Ⅳ部 一人ひとりが当事者として核被災を引き受ける
第10章 ビキニ事件の「当事者」は誰か―分断を乗り越える大石又七の思想を通して 市田 真理
第11章 核実験の被害を解き明かすーマーシャル諸島ロンゲラップの人びとはなにを被害として語るのか 中原 聖乃
第12章 被爆者と核兵器禁止条約 林田 光弘
核問題の「当事者性」関係年表
おわりに 中原 聖乃
前書きなど
「おわりに」より
いま、学術の世界(大学や研究者の世界)では、一般市民や行政とともに社会の問題を解決しようという研究が進められています。こうした流れは、これまで研究者が論文を書いて終わり、としてきたことの反省からきています。核開発に携わったがその後その使用に対して疑念をいだいた研究者ロバート・オッペンハイマーに関する映画が日本でも公開されました。オッペンハイマーのみならず、核兵器開発に携わった研究者の中には、核兵器の存在に疑問を持ったり、さらに多くの市民と協力し進んで平和運動に身を投じた研究者もいます。私は、もっと市民や行政が社会問題に対し、研究や実践という形で参画しやすくなり、その成果をみなで共有していけるようになれば、と考えています。
核問題は過去の被害と加害を考えることなしに解決はありません。しかしそれだけでは不十分です。そのためこの本では被害者/加害者と単純な二項対立で考えるのではなく、核問題に関係する人を広く「当事者」と捉える視点を用いることにしました。当事者は放射線の影響を受けた直接的な被害者に加えて、間接的な影響を受けた人をも含む概念として用いました。本書では、核との様々な関係性を持った人を描きましたが、核問題に対する新たな視座を提示することはできたのではないかと考えます。
この本の出版直前に日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞するというニュースが届きました。このことは、核の問題は世界にとって重要な課題であるということを改めて私たちに示しています。日本被団協をはじめこれまで多くの人びとが取り組んできた核の問題を、私たち一人ひとりが自分事として引き受ける時代がやってきたのではないでしょうか。そのために、自分は核とどのような関係性を持っているのか、どのような引き受け方をするのかを考える必要があります。この本を、この新しい時代に、よりよい世界を創るための一つの材料にしてもらえることを願っています。
版元から一言
市民目線と当事者視点で核問題と当事者に寄り添う、これまでにない視点の学術書。問題を自分事として引き受け、核廃絶への未来を拓くための資料となる内容になっています。
上記内容は本書刊行時のものです。