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和心のものがたり
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年12月
- 書店発売日
- 2014年12月1日
- 登録日
- 2014年12月1日
- 最終更新日
- 2014年12月17日
紹介
新進作家が「日本人が持つ美しい感情」を描いた時代小説集。
和(やまと)の心を恋の物語に織り込みました。
「幻の姫さま」・・・顔の醜い赤ん坊は三人の僧侶から三つの恵みをもらう。ひとつは薬草の知識・・・人のために役だっているという誇りがこの子の誇りを支えるだろう。もうひとつは闘う強さ・・・槍と剣と弓で迫害から身を守れるだろう。最後のひとつは美しい言葉・・・情緒のある感情や優雅なふるまいは人に安らぎを与える、せめて話し相手は得られるだろう。この三つの恵みがあれば生きてゆける、たとえ愛されなくとも。
三つの恵みを得てその子は険しい道のりを生きるのだが、本当の愛にたどりつけるのか・・・。
「人魚と侍」・・・・二人の侍は「人魚をしとめれば二百石を加増し屋敷も与える、し損じれば切腹」と殿様に命じられる。二人は毎日人魚を捜すが見つからない。なぜなら人魚は海の神によって人間の娘に変えられ、片方の侍の家に来ているから。毎日少しずつ愛情を培い、侍は二百石を加増されれば娘に求婚しようと思うようになる。しかし期限の日は来て、とうとう人魚は別の侍によって射られてしまう。人魚と侍の愛は思いがけない展開をもたらす。
「世迷い道中膝栗毛」・・・江戸で一番大きな地本問屋である耕書堂が舞台。蔦屋重三郎にひろわれた売れない戯作者とその作家に恋する貧しい職人の娘が主人公。作家はお上ににらまれ手鎖の刑を受けるが、やがてふたりは大当たり作を産み出す。売れっ子になった戯作者はファンの女に囲まれ多忙の日々を過ごし、大店の娘と縁談もある様子。娘とは会えなくなるが、滝沢馬琴の友情がふたりの縁をつなぐのか・・・。
「振り返った女」・・・・幕末の会津の侍とその侍を追って会津から京へ来ている女のものがたり。侍を捨てふたりで商いをしようと約束をして、女は侍を待っているが侍は来なかった。やがて薩摩の男と結婚した女は年に一度ある男に会いに行っている。その男は生きた人間ではなかった・・・。
「関所破りに道なくて」・・・関所破りは天下の御法度、もし犯せば磔(はりつけ)にされねばならない。見せ物小屋で綱渡りをしている俊と花はそれぞれ火事で焼け出された孤児で、富士のお山を両親と思い生きていた。ある日、俊は侍が迎えに来て連れて行ってしまう。残された花は数年後、俊に会いたいと東海道の旅に出た。お金もなくなった花は箱根関所を通ることができない。関所破りとして捕らえられ白州に連れて来られたその時、裁きをする番頭(ばんがしら)は俊であった。折しも将軍が替わり幕府から関所のゆるみを正すための巡検使が来ている時で、俊に早く磔にしろと言う。俊はいかにして花を助けるのか・・・。
全五編、読み終わった時に流れる温かさを実感してください。日本人の感情にはこういうものがあるというメッセージが伝わる、新しい時代小説です。
目次
幻の姫さま
人魚と侍
世迷い道中膝栗毛
振り返った女
関所破りに道なくて
前書きなど
作者より。
時代小説で「大人の童話」を‥‥。
日本人には独特の美しい感情があります。
かつて、わたくしの師である亡き藤本義一先生にひねりとは何か、
と尋ねたことがあります。
藤本先生は「鶴屋南北を読んだらええ」とおっしゃいました。
読んでみますと鶴屋南北の脚本にはひねりの妙味もさることながら、細やかな日本人の感情が流れていました。
後妻に来た女の話も胸打たれるものでした。
貧しさから夫は娘を売りに出そうとするのですが、後妻はそれを止めさせ、自らが売られてゆくのです。
「そんなことをさせたらこの子の亡くなった母親に申し訳が立たない」 と言って・・・。
こういう日本人の感情の美しさを誇りに思ってもらいたいという願いをこの五編の時代小説にこめて書きました。
藤川ヤヨイ
版元から一言
今までにない癒される時代小説集。
「大人の童話」と作者は書いています。 日本人の感情の美しさをテーマにしているので、外国人の方にも読んで欲しい本です。
上記内容は本書刊行時のものです。