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仏教と西洋の出会い
原書: LA RENCONTRE DU BOUDDHISME ET DE L'OCCIDENT
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2010年9月
- 書店発売日
- 2010年9月5日
- 登録日
- 2010年8月12日
- 最終更新日
- 2022年3月24日
書評掲載情報
2023-11-04 |
毎日新聞
朝刊 評者: コリーヌ・カンタン(翻訳家) |
2010-10-24 | 朝日新聞 |
2010-09-26 | 東京新聞/中日新聞 |
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紹介
仏教は、近代科学と両立可能な唯一の宗教である。― アルバート・アインシュタイン
ブッダは実際には哲学を提唱しているのではない。彼は人間に挑戦状を突きつけているのだ。―カール=グスタフ・ユング
仏教と西洋の出会いは、二十世紀のもっとも有意義な出来事である。― アーノルド・トインビー
西洋にとって、ときに恐怖の的となり、ときに希望や幻想の対象となった仏教とは何だったのか。
仏教の誤解と理解のドラマを描く、古代から21世紀までの壮大な通史。
目次
日本語版への序文
序 論
西欧における仏教の浸透/断続的な「出会い」の歴史/「解釈された仏教」と「本当の仏教/仏教の成功と西洋の三大「抑圧」
第Ⅰ部 幻想の誕生―古代、中世、ルネサンス、前近代―
第一章 仏教はギリシャとインドをつないだか
直接の影響か、たんなる相似か/海を渡って扶桑の国へ/古代人の幻想のインド
第二章 中世の旅行者たち
マルコ・ポーロが伝えたブッダの伝記/キリスト教版ブッダ伝/福音の理想としての仏教僧院
第三章 中世のチベット神話
神秘、黄金、性的自由
第四章 宣教師たちによる発見 十六世紀から十八世紀まで
「神なき宗教」の繊細さ/宗教論争に仏教を利用する
第五章 「ラマ教」の幻惑 一六二〇年から一八五〇年まで
「黄色い教会」/ユック神父の旅行記
第Ⅱ部 仏教の発見 一七八〇年から一八七五年まで
第一章 「東洋ルネサンス」
『アヴェスタ』と『バガヴァッド・ギーター』の翻訳/ロマン主義者のインド/ヒンドゥー教を通して見た仏教/学問的研究の進展
第二章 キリスト教の強敵
仏教とキリスト教の驚くべき相似/「近代的」仏教と「教条的」キリスト教
第三章 ショーペンハウアーと「仏教厭世主義」
『意志と表象としての世界』をめぐって/ショーペンハウアーは仏教哲学者か/「仏教厭世主義」という誤解
第四章 ニーチェと「仏教虚無主義」
キリスト教に対抗する盟友/仏教との決別
前書きなど
日本語版への序文
日本はダルマ〔仏法〕の伝承に決定的な役割を果たしてきたし、ブッダの教えを独自なものに発展させた。その一つである禅仏教に特有な教えは、数百年のち西洋に広がり、今日では何百万人ものヨーロッパ人、アメリカ人が禅の修行に没頭し、日本人の師たちの著作を通してダルマに入門している。仏教の西洋への浸透――これにはチベットのヴァジュラヤーナ〔金剛乗〕の影響も同じくらい多大であるが――はまだ日が浅いが、その重要性は今後も薄れるどころではなく、洋々たる前途が期待される。とはいえ、そうなるまでには、多くの誤解を踏み越えねばならないであろう。なぜなら、アリストテレスやデカルトの論理学とは別の論理学に属し、ユダヤ・キリスト教世界とはあまりに異なる宗教世界に位置する、ブッダの教えの精妙さをとらえるのは、西洋精神にとっては至難のことであるからである。
本書は十年間にわたる研究と、パリの国立社会科学高等研究院(EHESS)に提出した博士論文から生まれた。ここに語られるのは、西洋人による仏教発見の、また、マルコ・ポーロら十三世紀以来の旅行者たち、イエズス会士フランシスコ・ザビエルら十六世紀以降の宣教師たち、ニーチェやショーペンハウアーら十九世紀の哲学者たちによる仏教理解の、そして二十世紀における欧米への仏教伝播の、興味津々たる歴史である。
本書はすでに十カ国語あまりに訳されているが、このたび「日出ずる国」で出版の運びとなったことを、筆者はことのほかうれしく思う。なぜなら、日本は仏教の発展とその西洋への伝播に、決定的な役割を果たした国だからである。しかしそればかりではない。東洋を、けなすにせよ理想化するにせよ、みずからに固有の枠組で再解釈せずにはいられない西洋精神について、またそのような西洋精神が東洋を理解することの困難さについて、西洋との文化的交流に関心を持つ日本の読者の認識に資するところが必ずやあるものと、筆者は確信しているからでもある。
フランス語に堪能なすぐれたチベット学者であり、本書を日本の人々に知らしめることを深く心にかけ、その翻訳のために、時間と学識を惜しみなく注いでくださった今枝由郎教授に、そして有能な共訳者の富樫瓔子さんに、心から敬意を表したい。今枝教授の努力と忍耐なくして本書が日本で出版されることはけっしてなかったのであり、そのことに篤く感謝する。
二〇〇八年三月
フレデリック・ルノワール
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。