書店員向け情報 HELP
出版者情報
書店注文情報
在庫ステータス
取引情報
HIV/エイズと中国 感染者たちの挑戦
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2006年3月
- 書店発売日
- 2006年3月23日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2024年3月18日
紹介
中国政府は「二〇一〇年までに直面する十大危機」の一つとして「エイズの脅威」をあげている。「国家の存亡に関わる」とまで表現されるこの脅威のはじまりは、「売血」と「麻薬」による感染の劇的な拡大で、人口の数十%が感染した“エイズ村”さえ続出していた。政府が打開策をとる一方、凄まじい差別・偏見に苦しむ感染者自身も、HIV/エイズへの正しい知識を普及し、「差別を取り除かないかぎり、共生はかなわない」と、自ら劇団をつくって、訴えはじめた。
本書はその経緯を取材し、NHKスペシャルとして番組を制作した著者たちによる渾身のドキュメントである。
目次
第1章 HIV感染爆発──揺れる中国……直面する危機──エイズの脅威/貧しさゆえの悲劇──売血/麻薬による感染の拡大/政策の転換まで
第2章 感染者たちへの凄まじい差別……地域コミュニティからの排除──公民鎮/肉親からの拒絶──宜賓市
第3章 差別と闘う──感染者たちの劇づくり……感染者劇団の誕生/人びとは変わる・村は変わる
第4章 生きるために声をあげる……麻薬汚染の広がる街で/カミングアウトへの逡巡/私たちの声を届けたい
第5章 共生への道……それぞれの夢・それぞれの願い/共に生きていくために
前書きなど
二〇〇五年、日本のHIV/エイズの感染者、患者の総数は一万人を超えた。
最近発表された厚生労働省などによる「HIV/エイズに関する意識調査の結果」(対象者が四万人近い大規模な調査である)によると、九割の人が「日本で感染者、患者が増加していることは知っている」が、「重要な問題で身近に起こりえる出来事である」と考える人は約五割にとどまり、「重要な問題ではあるが、身近に起こりえる出来事ではない」と答えた人が約三割に上った。
そして、「感染者や患者に対する社会的偏見があってはならない」とする人は九割弱となっている。
この数字からは、多くの日本人がHIV/エイズの感染者、患者を偏見なく受け入れようとしていることがうかがえる。しかし、回答者たちの多くが身近に感染者、患者がいない、もしくは知らない人々であろうことも想像に難くない。実際に、日本の感染者や患者たちを支援するNPOなどのホームページを見れば、怖がられたり、避けられたりといった差別や偏見は根強くあることがわかる。
そのなかに「日本では差別や偏見が、無関心によって見えなくされている」という感染者の声があった。「無関心」という言葉が胸に刺さった。
話題性や速報性を第一に考えるテレビというメディアに携わる人間として、こうした「無関心」をつくり出すことに無意識に加担しているのではないか、という恐れはいつも心を離れないからだ。中国で出会った感染者たちが、舞台に立ったのは、まずなによりも「差別や偏見」を生み出す「無関心」を打ち破るためだったのかもしれない……そう思えてきた。
「感染者、患者への社会的偏見はあってはならない」と考える大多数の人間の一人として、これからもHIV/エイズを自分自身の問題として関心を持ち続けるということ。いま、そのことをあらためて心に刻んでいる。
この小さな本がHIV/エイズの理解に、少しでも役立つことができるなら、筆者たちにとって望外の喜びである。
版元から一言
エイズ―感染爆発の中国で、いま何が起こっているのか。NHKスペシャルで放映された番組をもとにNHK取材班が渾身のドキュメントを紹介する。
上記内容は本書刊行時のものです。