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なぜ、北海道はミステリー作家の宝庫なのか? 鷲田 小彌太(著) - 亜璃西社
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なぜ、北海道はミステリー作家の宝庫なのか? (ナゼホッカイドウハミステリーサッカノホウコナノカ)

文芸
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発行:亜璃西社
四六判
272ページ
並製
定価 1,600 円+税   1,760 円(税込)
ISBN
978-4-900541-81-8   COPY
ISBN 13
9784900541818   COPY
ISBN 10h
4-900541-81-8   COPY
ISBN 10
4900541818   COPY
出版者記号
900541   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2009年7月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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紹介

佐々木譲、京極夏彦、馳星周、東直己、今野敏、鳴海章、高城高、久生十蘭、長谷川海太郎―彼らは共通するのは、北海道出身であるということ。戦前から戦後、そして現在に至るまで、数々の人気ミステリー作家を輩出してきた北海道と日本ミステリーの深き縁を、約40人の作家論を通してひもとく、ミステリー王国・北海道「発見の書」。

目次

序――北海道はミステリー作家の宝庫か?
 Ⅰ ミステリーは文学じゃないのか?
 Ⅱ ミステリーの嚆矢は函館だって?
 Ⅲ 時代小説はミステリーなのか?
 Ⅳ 戦後における北海道のミステリーは「不毛」か?
 Ⅴ 量からいっても質からいっても、北海道はミステリー作家の宝庫だ

第一部 戦前――函館生まれの探偵小説作家たち
 Ⅰ 函館が生んだ探偵小説三銃士
   ◆水谷準…日本ミステリーの草創期を切り盛りする
     編集者と作家の狭間で/評価されなかった戦後の長編/水谷なしに北海道にミステリーは生まれなかった
   ◆長谷川海太郎…「谷譲次・林不忘・牧逸馬」の三人で一人
    『丹下左膳』も『浴槽の花嫁』もミステリーだ/無国籍小説が持つ意味/倣岸と礼節の間で/「良質な小説」という高みを目指す
   ◆久生十蘭…探偵小説を芸術にまで高めたファーストランナー
     「海豹島」の幻惑、「顎十郎捕物帳」の洒脱/十蘭のメインテーマ/文壇からの冷遇/函館に顔を「背けて」
 Ⅱ ミステリーを切り開く
   ◆松本恵子…日本初の女性探偵作家
     女性探偵作家の夜明け/欧米文化と親しんだ幼少期
   ◆渡辺啓助…探偵小説の黎明期を生きた長寿作家
     作家の道に導いた二つの悲しみ/弟・温の存在
   ◆渡辺温…横溝正史とコンビを組んだ、夭折のモダンボーイ
     「新青年」に生き、「新青年」に散る/愛すべき人柄と惜しまれた才能
   ◆地味井平造…芸術に遊んだ画家の手遊び
     埋もれた存在/乱歩が鮎川が讃えた才能

第二部 戦後――消えた作家、甦った作家
 Ⅰ 「忘却」と「再発見」
   ◆楠田匡介…脱獄トリックの名手
     長編ではなく短編がいい/「復活!」といえば大げさか
   ◆夏堀正元…影薄い多作な社会派
     社会派の落とし穴/本当にミステリー作家なのか?
   ◆高城高…和製ハードボイルドの先駆者
     ハードボイルド前夜を走る/高城は短編作家なのか?
   ◆中野美代子…ミステリー史に名の出ない偉才
    行間に漂うミステリアスで隠微な空気/「一字」で千変万化の世界を織りなす
   ◆幾瀬勝彬…戦中派の美学
     娯楽作と異色作/戦場の記憶を「娯楽」へ転写
   ◆南部樹未子… 不毛な「愛」のさまざまな結末を描いて
     型どおりの愛憎復讐劇
   ◆佐々木丸美…復活遂げた「伝説」の作家
     伝説化で広がったファン層/作家と読者の共通意識
 Ⅱ ミステリーも手がけた作家
   ◆伊藤整…考え抜かれた方法論で書く
     ニヒリズムの極致/独白と幻想
   ◆井上靖…謎解きの面白さと重厚な人間ドラマ
    『氷壁』のハードボイルドなカッコよさ
   ◆三浦綾子…鈍るミステリーとしての論理性
     見逃せない信仰の影響
   ◆加田伶太郎(福永武彦)…純文学作家の見事なる余技
     キャラクター造形の妙
   ◆寺久保友哉…精神科医が仕掛けるミステリー
     心の森を彷徨う

第三部 現役―― 日本ミステリーの一翼を担う
 Ⅰ 第一線で活躍する作家たち
   ◆佐々木譲…冒険小説から警察小説へ、「エースのジョー」誕生!
     冒険小説の白眉『エトロフ発緊急電』/文字通りの代表作『警官の血』/作品の核心にあるもの/
  ◆今野敏…「自立自尊」の生き方を貫く
     二つのシリーズで描く、好対照の警官像/ミステリーと倫理の密なる関係
   ◆東直己…日本ハードボイルドの巨艦
     ハードボイルドの幅を広げた、名無しの探偵/『残光』でハードボイルドを極める/奇妙な小説たちの持つ意味
   ◆鳴海章…故郷に戻り、新境地を開く
     パイロットのプロ意識が見所の『ナイト・ダンサー』/警官の境目を描く『ニューナンブ』/ララバイ東京
   ◆京極夏彦…世を目晦まし異境に生きる、時代の寵児
     ベストセラーの謎/京極作品が読まれる理由/文字で呪い、キャラクターで祓う/饒舌と自己演出/辺境としての北海道
   ◆馳星周…異端こそ、日本文学の正統な潮流
     度肝を抜いたデビュー作の衝撃/恐怖と魅惑の「異国」/底なしの狂気を冷徹に追求
 Ⅱ まだまだいる、ミステリー作家たち
   ◆井谷昌喜…ジャーナリストならではの視点
     説得力あるバイオサスペンス
   ◆内山安雄…陽性のアジアン・ノワール作家
     体当たり人生から生まれた作品/海外で迎えた二度の転機
   ◆奥田哲也…得体の知れない毒素を仕込む
     意図の見えない物語の壊れ方
   ◆丹羽昌一…中南米の風土に魅せられて
     元外交官ならではのリアルな状況描写
   ◆矢口敦子…ブレイクの秘密
     乙女チックなミステリー
   ◆桜木紫乃…男女の関わりをテーマに
     原田康子を超えられるか
   ◆小路幸也…不思議な浮遊感で描く、救いの物語
     新しい発想に満ちた奇抜なストーリー
   ◆佐藤友哉…に十一世紀に息づく、北海道ミステリー作家の潮流
     「恐るべき子ども」が生み出した「おとぎの世界」    
 Ⅲ ミステリーも手がけた作家たち
   ◆原田康子…作家としての原点であるミステリー
     原田がミステリーを書いた理由とは
   ◆渡辺淳一…心の謎への飽くなき探求心
     ミステリー好きには一読の価値あり
   ◆荒巻義雄…伝奇色の濃い荒巻的ミステリー
     「架空戦記」前の作品に一興あり
   ◆嵯峨島昭(宇能鴻一郎)…変態する鬼才の片鱗
     官能作家・宇野の異能ぶり
   ◆久間十義…ぶれない生真面目な視点
     実際の事件をモチーフに
 Ⅳ ジャンルを横断するミステリー
   ◆川又千秋…荒巻義雄の流れを汲む
    『幻詩狩り』の荒唐無稽な面白さ
   ◆朝松 健…筋金入りのホラー作家
     ホラーとミステリーの境界をゆく
   ◆森真沙子…時代小説に転じたベテラン作家
     受け継がれるミステリーの結構
   ◆宇江佐真理…時代小説界の超新星
     宇江佐の時代小説はミステリーだ
 Ⅴ ミステリーを評論する
   ◆山前 譲…ミステリー評論の正統派
     マニアックさを感じさせない叙述
   ◆千街晶之…本格ミステリー批評を目指して
     先入観を裏切るわかりやすさ

跋――なぜ、函館はミステリー作家の水源地なのか?

 一、なぜ、函館から生まれたのか?
 二、函館が国際都市であったことの影響
 三、出身作家を顕彰する小樽、しない函館
 四、作家の営為を吸収し、未来へ生かす
 五、孤独な闘いを続ける作家たちに光を

前書きなど

 戦前、戦後、そして一九八〇年代以降の現在、北海道のミステリー作家は、数においても、その作品数と質においても、注目すべき成果をあげてきたといえる。
 郷土愛がある。そのなかには、郷土で生まれ、活躍した人々に対する愛敬がある。ところが、戦前の長谷川海太郎も久生十蘭も、北海道(函館)を捨てた人間であるといっていい。いわゆる郷土愛に欠けた人間である、と断じることができる。と同時に、国境を越えて生きようとした人間でもあるのだ。それは北海道生まれの人間に共通する、ある種の無意識でもあるだろう。
 佐々木譲や東直己、それに宇江佐真理は、北海道に在住しながら、しかし北海道に特有であるとされる安直な風土性やイデオロギーにとらわれず作品を発表している。鳴海章は郷里の帯広に居を移し、郷土愛にむしろ寄りかかるような作品を発表しはじめている。今野敏、京極夏彦、馳星周は、これまでのところハイパー欲望都市・東京(江戸)を舞台に作品を書いている。この四人が今後どのような軌跡を辿るのか、ますます楽しみだ。
 なお本書は、ミステリーのメインストリートにある作家を中心に、第一部・戦前、第二部・戦後、第三部・現役という大まかな時代区分のもとに展開してゆく。同時に、枝道や杣道を歩んだ作家も取り上げて紹介してゆく。
 この種の紹介の妙味は「発見」にある。さて、いくつ読者の胸に発見の灯を点すことができるだろうか。お楽しみあれ。(「序」より)

版元から一言

戦前の日本ミステリー草創期を支えた面々から、現在の日本ミステリー界第一線で活躍する人気作家まで、約80年におよぶ北海道出身ミステリー作家の知られざる系譜がいま明らかに。約40人の作家論からその全貌を辿る、発見の喜びに満ちた一冊です。

著者プロフィール

鷲田 小彌太  (ワシダ コヤタ)  (

1942年北海道札幌市生まれ。1966年、大阪大学文学部哲学科卒業。1972年、同大学大学院博士課程修了。津市立三重短期大学教授を経て、現在、札幌大学教授。哲学・倫理学の教鞭をとる傍ら、評論活動、エッセイ・人生書等の執筆も精力的に行う。『新 大学教授になる方法』(ダイヤモンド社)、『日本を創った思想家たち』(PHP新書)、『「佐伯泰英」大研究』『ビジネスマンのための時代小説の読み方』(共に日経ビジネス文庫)など、著書は200冊を越える。

井上 美香  (イノウエ ヨシカ)  (

1963年北海道札幌市生まれ。鷲田研究所の所員として鷲田小彌太の仕事を補佐しながら、新聞等で原稿を執筆。本作が初の著書となる。

上記内容は本書刊行時のものです。