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ソテツをみなおす 安渓 貴子(編) - ボーダーインク
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ソテツをみなおす 奄美・沖縄の蘇鉄文化誌

A5判
170ページ
並製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-89982-270-7
Cコード
C0000
一般 単行本 総記
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2015年3月
書店発売日
登録日
2015年3月23日
最終更新日
2015年3月23日
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紹介

ソテツを食べた記憶をもつ人々が少なくなった現在、正しい毒抜きの仕方、おいしい食べ方、年中行事の中のソテツ、琉球王府時代のソテツ政策、空中写真からみたソテツ利用や近代沖縄の新聞、ソテツの美や文化に至るまでさまざまな視点よりソテツを検証。
奄美沖縄の人々の生活を支えてくれたソテツの賢い利用について、それを利用してきた人々の経験に耳を傾け、安全な食糧による地域自給の確立と地域文化の尊厳の確保という課題に迫る。

目次

はじめに 
第一章 南島の自然と文化
日本のソテツ  前田芳之
暮らしの中のソテツ 安渓貴子
奄美・年中行事のなかのソテツ点描  町健次郎
ソテツの三つの毒抜き法  安渓貴子
◇コラム◇先史時代のソテツとドングリ  木下尚子

第二章 激動の歴史の中で
琉球王府による蘇鉄政策の展開  豊見山和行
「蘇鉄かぶ」のこと ―久米島の古記録から─ 上江洲均
◇コラム◇明治中期に田代安定が見た八重山のソテツ 安渓遊地
空中写真から復元するソテツ利用 早石周平・当山昌直

第三章 もうひとつの未来へ
近代沖縄の新聞にみるソテツをめぐる事件  当山昌直
◇コラム◇国境を越えるソテツ  前田芳之
琉球列島の里の自然とソテツ利用 盛口満
◇コラム◇横井庄一さんを生き延びさせたナンヨウソテツ 盛口満
ソテツの「美」を愛でる 町健次郎
ソテツ文化の継承──もうひとつの未来へ 安渓貴子・盛口満
資料 世界のソテツ類  前田芳之

あとがき 
索引 
執筆者紹介 

前書きなど

はじめに
「ソテツ地獄」という言葉をごぞんじですか。一九三〇年代の世界大恐慌のなか、砂糖の値段が大暴落して沖縄は経済破綻をしました。人々は食べものを買うお金がなく、「サツマイモどころか毒があるソテツの実や幹を食べた、そのひどかった生活」を象徴的にあらわす言葉として、『沖縄県史』や『沖縄近代史辞典』にも載っています。
しかし、この言葉は沖縄の新聞記者が作った言葉でした。あまりにわかりやすい言葉だったからか、「本土」のマスコミがとびついて「決まり文句」になってしまいました。実際には台風に強く、耕地でなく、崖や段畑の斜面でよく育つソテツは、その毒を抜いて澱粉にし、おかゆなどで食べる食べ方が日常食であった地域もあって、悲惨なものではなかったのです。庶民の感覚では「地獄はソテツを食い尽くしたその先にあった」と、昭和五三年三月一九日の沖縄タイムスの「唐獅子」に、「ソテツ地獄」というタイトルで大城将保さんが書いています。
 「ソテツ地獄」という言葉が日本中に知られるようになってから、長い時がたちました。しかし、奄美沖縄の島々では、いまも赤い実からつくる「ソテツ味噌」がなつかしいふるさとの味として空港で売られているところや、ソテツの幹からとれるデンプンを生産する小規模な工場もあります。そうした島々ではソテツこそが人々を飢えから救って生き延びさせてくれたものだという意味で「ソテツは恩人」と呼びます。
 ソテツを食べた記憶をもつ人々が少なくなり、正しい毒抜きの知識、おいしい食べ方の知恵が失われる一方、ソテツそのものが畑や牧場のじゃまもの扱いされたり、放棄された段畑が山林に還っていく木々の下になって枯れたりして、島の景色からいつのまにか消えていくという例も少なくありません。
奄美沖縄の人々の生活を支えてくれたソテツの賢い利用について、それを利用してきた人々の経験を学び、次世代に伝えたいと思います。それはまた、グローバル化の中でこれからますます重要となる、安心安全な食糧の確保による地域自給と、地域文化の尊厳の確立という課題に答える道のひとつでもありうるはずです。
 この本では植物としてのソテツの特徴や分布、人々の生活とのかかわり、毒抜きの方法や食べ方、緑肥や燃料と言った生活の中でのソテツのありようやソテツへのまなざしが奄美と沖縄で、また島ごとに、特徴をもっていたこと、政治的にソテツの栽培が奨励された時代などの歴史、第二次世界大戦末期に米軍機が空から撮影した膨大な写真の中のソテツ林、近代にはいって新聞に載ったソテツの記事、さらに海外との関係など、ソテツをめぐるたくさんのエピソードを紹介していきます。
編者を代表して 安渓 貴子  

版元から一言

表紙画は奄美大島の自然を愛した日本画家・田中一村作の「蘇鐵残照図」

著者プロフィール

安渓 貴子  (アンケイ タカコ)  (

愛知県生まれ。生態学専攻。山口大学・山口県立大学非常勤講師。理学博士。主な著作に、安渓貴子 二〇〇九『森の人との対話――熱帯アフリカ・ソンゴーラ人の暮らしの植物誌』アジア・アフリカ言語文化叢書四七:一~六一四頁 東京外語大AA 研、安渓貴子 二〇〇三「キャッサバの来た道―毒抜き法の比較によるアフリカ文化史の試み」吉田集而・堀田満・印東道子編『イモとヒト』平凡社 二〇五~二二六頁、ANKEI Takako 1990 Cookbook of the Songola, African Study Monographs, Suppl.13:1-174 京都大学、など。

当山 昌直  (トウヤマ マサナオ)  (

一九五一年沖縄県那覇市生まれ。動物学専攻。沖縄国際大学南島文化研究所特別研究員。主な著作に、当山昌直・安渓遊地編 二〇〇九『聞き書き・島の生活誌①野山がコンビニ 沖縄島のくらし』ボーダーインク。安渓遊地・当山昌直編 二〇一一『奄美沖縄環境史資料集成』南方新社。当山昌直・安渓遊地 二〇一三『奄美戦時下米軍航空写真集』南方新社、など。

上記内容は本書刊行時のものです。