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アルペンスキー競技における技術・戦術指導 近藤 雄一郎(著) - 中西出版
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アルペンスキー競技における技術・戦術指導

発行:中西出版
A4判
縦297mm 横210mm 厚さ15mm
重さ 800g
276ページ
並製
定価 4,571円+税
ISBN
978-4-89115-283-3
Cコード
C3035
専門 単行本
出版社在庫情報
品切れ・重版未定
初版年月日
2013年8月
書店発売日
登録日
2014年2月22日
最終更新日
2015年12月12日
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目次

はじめに

序章
第1節 課題の所在
第2節 本研究の目的と方法

第1章 アルペンスキー競技における技術・戦術
第1節 スキーにおけるターン運動のメカニズム
第2節 スキーのターン運動における局面構造
第3節 アルペンスキー競技の技術的特質
第4節 アルペンスキー競技における技術・戦術構造
第5節 アルペンスキー競技大回転種目における技術の質的発展構造と技能レベル区分

第2章 アルペンスキー競技大回転種目における初級者及び中級者を対象とした指導理論
第1節 指導目標
第2節 指導内容
第3節 教材の順序構造
第4節 教授の方法
第5節 授業の評価
第6節 アルペンスキー競技大回転種目における初級者及び中級者を対象とした教授プログラム

第3章 アルペンスキー競技大回転種目における初級者及び中級者を対象とした実験授業
第1節 実験授業の概要
第2節 実験授業の結果及び考察

終章
第1節 本研究のまとめ
第2節 本研究の成果
第3節 今後の課題と展望

補章 運動学習における認識と習得―主として運動学習における認識的側面の位置づけに関して―
第1節 体育科教育における認識問題に関する先行研究の成果と課題
第2節 運動学習における「わかる」と「できる」に関する諸問題
第3節 運動学習における認識過程の意義
第4節 運動学習における認識内容
第5節 運動学習における認識方法
第6節 運動学習で形成すべき認識能力

本書の引用・参考文献一覧
あとがき

前書きなど

 2006年にトリノ(イタリア)で開催された第20回冬季オリンピックのアルペンスキー競技男子回転競技において、日本人選手2名が入賞したことは記憶に新しい。また、近年日本人選手がワールドカップや世界選手権で入賞を果たすなど国際大会で活躍することにより、アルペンスキー競技がメディアに取り上げられるようになり、再度脚光を浴びつつある。しかし、景気後退や少子化などの影響を受け、日本国内のスキー人口は90年代以降減少の一途を辿っている。このスキー人口の減少に比例するように、アルペンスキー競技者も年々減少してきているのが現状である。
 全日本スキー連盟(以下SAJ)は、文部科学省によるスポーッ振興計画に基づき、公認スポーツ指導者制度(SAJコーチ制度)を2008年にスタートした。このコーチ制度は、「ジュニア期からトップレベルに至るまでの一貫した理念に基づき最適な指導を行う一貫指導システムの構築」及び「指導者の養成・確保(専任化の促進等)」を目標としている。したがって、競技者の母集団が小さくなっている現在の日本アルペンスキー競技界において、より多くの世界で活躍することのできる優秀な選手を輩出するには、各技術レベルに応じた普遍的で統一性のある系統的な指導理論を確立し、それらを指導者間で共有することができるようにしなければならない。
 また、これまで各国のスキー連盟や指導者が書籍や専門誌の中で指導論を展開しており、多くの指導者がそれらに学び指導を行っているのであるが、アルペンスキー競技の技術・戦術指導に関する学術的研究は管見の限りみることができない。書籍や専門誌の中で展開される技術・戦術指導に関する課題として、「技術や戦術の相互関連や全体的構造が明らかにされていないこと」や「練習ドリルについては紹介されているが、指導内容や練習方法については体系的に示されていないこと」などが課題として挙げられる。加えて、書籍や専門誌の中で展開される指導論は、紙面の関係上詳細な解説はされておらず、多くの場合各指導者の解釈と経験により指導が委ねられる結果となっている。
 そして、我が国におけるアルペンスキー競技指導の現状については、的確なアドバイスや指導法を実践し、優秀な選手を多数輩出する優れた指導者は多く存在するのであるが、このような指導者による指導方法は、高い競技実績や長年の指導経験に基づく指導方法である場合が多く、どのような指導者でも追試・実践することが困難であることが課題として挙げられる。
 以上のようなアルペンスキー競技の技術・戦術指導に関する現状を改善するためにも、運動学習理論や教授学的理論からアプローチした科学的なアルペンスキー競技の指導理論を構築する意義があると考える。本研究では、アルペンスキー競技における滑降・スーパー大回転・大回転・回転の4種目の中から、大回転種目を対象とした指導理論を展開する。その理由は、大回転種目は他の種目とも共通する多くの技術的要素を含んでおり、アルペンスキー競技の中で基本となる競技種目と位置づけられているためであり、大回転種目における指導理論を明らかにすることで、技術系種目である回転や、高速系種目である滑降やスーパー大回転の指導理論の構築に発展的に繋がっていく可能性があると考える。
 そこで、本書は、アルペンスキー競技大回転種目における初級者及び中級者を対象とする指導理論を展開し、指導過程を客観的に示した教授プログラムを作成して実験授業による検証を行うことによって、筆者独自の指導体系を提起することを目的とした。
 本書では、まず、力学的視点からスキーにおけるターン運動のメカニズムと、運動学的知見に基づくタ一ン運動の局面構造及び各局面における技術について整理し、アルペンスキー競技の競技構造を解明して、アルペンスキー競技独自の「技術的特質」「技術・戦術構造」を提起した。これに基づき、競技会における選手の滑走の量的・質的分析を行い、「技術の質的発展構造」を明らかにし、「技能レベル区分」の根拠となる基準を明確化した。次に、アルペンスキー競技初級者及び中級者を対象として「指導目標」「指導内容」「教材の順序構造」「教授の方法」「授業の評価」を統一的に構成した指導理論を構築し、指導過程を客観的に示した「教授プログラム」を提示した。そして、実験授業によって、指導理論及び教授プログラムの評価検証を行った。
 第1章では、スキーにおけるターン運動を生起するための基本的なメカニズムを整理し、運動学的知見に基づきスキーのターン運動の局面構造を明らかにした。そして、アルペンスキー競技の構成要素を主体と客体の相互関係から構造化し、アルペンスキー競技の「技術的特質」を「用具の特性を発揮させ、雪質・斜面・旗門設定に規定される多様なシチュエーションに対応した技術・戦術を駆使して、規制されたコースを最短時間で滑走すること」と規定した。「技術・戦術構造」にっいては、競技開始前及びスタートからゴールまでの各局面における「時間及び空間」「運動課題」「技術・戦術」または「技法」を構造的に示した。ここで明らかにした技術・戦術構造に基づいて競技場面における選手の滑走の質的分析を行った結果、「カービング」「切り換え期の技術」「舵とり期の技術」「全局面の技術」「ラインどり」の各項目において質的な発展が明らかとなった。そして、SAJポイント分析・タイム分析・滑走の質的分析の結果に基づき、SAJポイントで50点未満の選手を上級者、50点以上125点未満の選手を中級者、125点以上の選手を初級者とした技能レベル区分の根拠となる基準を明確化した。
 第2章では、アルペンスキー競技初級者及び中級者を対象とした筆者独自の指導理論及び教授プログラムを構築した。指導目標にっいては、「滑走タイムが速くなる」「ストレッチングカービングターンで滑走するための客観的な技術を認識し、初級者はカービング要素に近い質の高いストレッチングスキッディングターンを習得し、中級者はストレッチングカービングターンを習得する」「セーフティラインとアタックラインについて認識・習得し、滑走コースのシチュエーションや自己の技能に応じた滑走ラインを選択・駆使して適切なラインどりで滑走できる」「アルペンスキー競技の楽しさを感じることができる」の4っを位置づけた。
 指導内容の構造については、「ストレッチングカービングターンの習得に関する指導内容」「ターン弧及びラインどりの調節に関する指導内容」「スピードの調節に関する指導内容」「斜面・旗門設定への対応に関する指導内容」に分類し、フリースキートレーニング及びゲートトレーニングにおける指導内容の関連性・系統性を構造的に捉えた。本指導理論では、技術に関する「ストレッチングカービングターンの習得に関する指導内容」と、戦術に関する「夕一ン弧及びラインどりの調節に関する指導内容」を中心的な指導内容として時間・空間・力動的観点から指導内容を位置づけ、認識・習得する技術・戦術が系統的に発展する指導内容の構造とした。
 教材の順序構造については、教材構成論理を「技術指導にっいては、『主要局面』及び『中間局面』の2局面における技術と、両局面を協働させて効率よく行うための『全局面』の技術を相互関連させて学習者の条件に合わせながら指導する。また、運動リズムを指導内容として設定し、局面構造と運動リズムを相互関連させて段階的に発展させながら指導する。初めに一定の安定した学習条件のなかで基本となる動作を学習することで技術の確実な習得を図り、技術学習の高度化に応じて学習の条件設定及び動作を応用的に変化させ、技術の質を漸次的に習熟させていく。戦術指導にっいては、初めはどのような状況にも対応可能な失敗する危険性の少ない安全で確実な戦術について指導し、この基本的な戦術の習得によって、学習する戦術を段階的に発展させ、より高いレベルでの課題達成を可能とする高度な戦術について指導する」と提起し、指導内容の構造を教材の順序構造に反映させて教材構成した。
 そして、仮説的に提起した「指導目標」「指導内容」「教材の順序構造」「教授の方法」「授業の評価」を統一的に構成した指導理論に基づいて、指導過程を客観的に示した「教授プログラム」を作成し、提示した。
 第3章では、作成した教授プログラムに従って実験授業を実施し、指導理論及び教授プログラムの評価及び考察について論述した。実験授業に関しては、初級者4名、中級者3名を対象として、フリースキートレーニング2日間、ゲートトレーニング4日間の実験授業を実施した。実験授業の結果、ゲートトレごニングの実験授業の前後で実施したタイム測定では、学習者全員の滑走タイムが短縮した。また、技術の認識・習得に関しては、全ての学習者が概ねストレッチングカービングターンを構成する技術に関して認識することができ、初級者はカービング要素に近い質の高いストレッチングスキッディングターン、中級者はストレッチングカービングターンを習得することができた。ラインどりの認識・習得に関しては、全ての学習者が各ラインどりについて認識することができ、中級者はシチュエーションに応じて的確にラインどりを選択して正確なターン弧で滑走することができ、初級者はセーフティラインとアタックラインを区別して滑走することができた。そして、8割以上の学習者が授業を通じてアルペンスキー競技独自の楽しさを感じることができた。
 実験授業の結果、学習者が短時間で確実にアルペンスキー競技において基本となるストレッチングカービングターンの主要な技術を習得することができ、セーフティラインとアタックラインを習得しシチュエーションに応じて選択・駆使できるようになり、学習者から歓迎される内容であったことからも作成した指導理論及び教授プログラムの有効性は示された。
 最後に、アルペンスキー競技における用具や技術等は日進月歩で進化し、選手や指導者はこれらの変化に適宜対応していかなければならない。このように日々変革を遂げるアルペンスキー競技界において、本書を一つの飛躍台として、アルペンスキー競技に関わる多くの人たちが世界で戦うことのできる選手育成を見据えた指導法に関する議論を深め、今後の日本アルペンスキー競技界の発展に役立てていただけたら幸いである。また、指導者の方々には他のスポーツ種目にはないアルペンスキー競技の独自性を再認識し、指導を通して多くの選手にその独自性を伝えていくことで、アルペンスキー競技を文化として継承・発展していただきたいと願っている。

著者プロフィール

近藤 雄一郎  (コンドウ ユウイチロウ)  (

1983年 群馬県に生まれる
2006年 北海道浅井学園大学(現:北翔大学)生涯学習システム学部 卒業
2008年 北海道大学大学院教育学研究科教育学専攻 修士課程修了
2012年 北海道大学大学院教育学院 教育学専攻 博士課程修了
現 在 北海道大学大学院教育学研究院 専門研究員
学位:教育学博士(北海道大学)
両親の影響により幼少のころからスキーに親しみ、小学校3年生の時にアルペンスキー競技に出会う。中学校ではサッカー部に所属しながら並行してアルペンスキー競技に励み、高校(私立本庄東高等学校)ではスキー部に所属しインターハイや国民体育大会に出場する。スキー環境への憧れから北海道の大学(北海道浅井学園大学〔現:北翔大学〕)へ進学し、大学卒業までスキー部に所属しながら競技に没頭する。大学卒業を機に選手を引退し、北海道大学大学院に進学しアルペンスキー競技に関する研究を始める。2006年からは北翔大学スキー部の外部コーチも務め、アルペンスキー競技に関する研究を進めながら、指導実践も行い選手の育成に携わっている。

上記内容は本書刊行時のものです。