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故郷に生きる
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2003年3月
- 書店発売日
- 2003年3月1日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
故郷に帰った作家たち──パイワン女性のまなざし/海の民・タオ族の世界
◎ リカラッ・アウーはパイワン族の女性作家。外省人の父が送った苦難の人生やパイワン族の女性たちが生きる厳しい現実を、あふれんばかりの愛をこめて描いた散文集。
◎シャマン・ラポガンはタオ族(ヤミ族)の海の作家。トビウオとともに生きる、台湾最南端の蘭嶼島のタオ族の生活、
魅惑的な海の世界を描いた物語。
目次
◎リカラッ・アウー集◎
誰がこの衣装を着るのだろうか/歌が好きなアミの少女/軍人村の母/白い微笑/離婚したい耳/祖霊に忘れられた子ども /情深く義に厚い、あるパイワン姉妹/色あせた刺青/傷口/姑と野菜畑/故郷を出た少年/父と七夕/あの時代/赤い唇のヴヴ/ムリダン/永遠の恋人/医者をもとめて/山の子と魚/オンドリ実験/誕生/忘れられた怒り/大安渓岸の夜/ウェイハイ、病院に行く/さよなら、巫婆
◎シャマン・ラポガン集◎
黒い胸びれ
第一章/第二章/第三章/第四章
【解説】部落に生きる原住民作家たち 魚住悦子
前書きなど
本巻では、台湾原住民文学では数少ない女性作家リカラッ・アウーと、海の作家シャマン・ラポガンを収録した。
まず、本巻のタイトル「故郷に生きる」について述べたい。「故郷」は、原住民族の集落である部落を指す。
台湾で民主化への運動がくりひろげられるようになった1970年代後半から、都市に住む原住民族もさまざまな要求をかかげて運動を行なうようになった。84年12月には台湾原住民権利促進会が結成され、87年7月に戒厳令が解除されると、いっそう活発に街頭活動や抗議デモを展開するようになった。
80年代末になると、都市で原住民文化運動にたずさわっていた原住民族の知識人のあいだに、それまでの運動が自分たちを育んだ文化から乖離したものであることや、部落に住む人たちからの理解や支持を得ていないという反省から、故郷の部落に帰ろうという運動がおこった。
97年8月18日付の『中国時報』は「帰郷―原住民作家回到部落之後……」と題する特集を組んで、部落に帰った原住民作家のその後をとりあげた。故郷にもどって創作活動を行なっている作家として、ルカイ族のオヴィニ・カルスワン、タイヤル族のワリス・ノカン、パイワン族のリカラッ・アウー、タオ族(自称。ヤミ族)のシャマン・ラポガンがあげられている。一方、生まれ故郷には帰らなかったが、原住民族の部落に住んで創作を行なった作家として、第1巻収録のトパス・タナピマをあげ、この運動より早く部落回帰の精神を実践したと述べている。また、同じく第1巻のモーナノンは、眼が見えないという障害ゆえに都市に出てマッサージ業につくしか生計を立てる道がないが、彼の活動も忘れてはならないとし、さらには、都市に出ることなく故郷に残って創作を続ける作家として女性作家のリイキン・ヨウマ(タイヤル族)とタオ族のシャプン・チヤポヤをあげていて、この特集全体が当時活躍していた原住民作家を紹介する記事になっている。
リカラッ・アウーはワリス・ノカンとともに、ワリスが生まれ育った台中県のタイヤルの部落にもどり、シャマン・ラポガンは故郷の蘭嶼島にもどった。ふたりの文学はこうして生まれたのである。
版元から一言
本選集は、原住民文化運動を背景に生みだされてきた台湾原住民文学を体系的に日本に紹介する最初の試みである。第1巻から第4巻までは、80年代から90年代に輩出した11族の原住民作家の詩や小説、さらに随筆や評論を収め、第五巻では各族の神話伝説を収録する。これによって台湾の原住民族の人々がどのような神話伝説を有し、どのような価値観をもって、どのような環境のなかで、どのように生きているのかを知ることができるだろう。
上記内容は本書刊行時のものです。