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依存症からの脱出
つながりを取り戻す
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2018年2月
- 書店発売日
- 2018年2月8日
- 登録日
- 2017年12月14日
- 最終更新日
- 2019年7月31日
受賞情報
第36回 ファイザー医学記事賞優秀賞
書評掲載情報
2019-06-08 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 松本 俊彦 |
2019-06-08 |
日本経済新聞
朝刊 評者: 松本俊彦(精神科医) |
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重版情報
2刷 | 出来予定日: 2019-09-03 |
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紹介
電車の中でもスマホを手放せない若者たち。ネット上のオンラインゲームにはまり込み、学校に行け
なくなるネット依存症は、薬物、アルコール、ギャンブルがやめられない依存症と同じ「脳の病気」なのか。
こうした依存症の負の面だけが強調されるなか、依存症からの回復を目指す人の日常は全く知られていない。
人生を立て直そうともがく人のもとへ、その周囲の家族や医療関係者のもとへ、取材班は全国に足を運んだ。
やがて、ずっと秘めてきた思いや真実が姿を見せ始める。
こんな話が聞きたかった、話を聞いてくれて「ありがとう」の声が……
◆ネットゲームにはまり高校を6年で卒業した若者がいま、考えていること
◆覚醒剤で逮捕された元「歌のお兄さん」が再起の舞台で歌う力の源は?
◆酒と精神安定剤を乱用する息子に苦しむ母親が「共依存」に気づいたとき
◆ギャンブル依存の体験者が、ギャンブルで借金まみれの人の回復と金の返済を支援
◆夫のアルコール依存に苦しむ中年の夫婦が訪ねた病院で言われた最初の一言
◆ビールのテレビCMに起きた変化、それでも「酒に甘い」と言われる日本
◆「家族の会」の宿題は「依存症からの回復を目指す本人を褒めること」
新聞掲載時より大きな反響を呼んだ連載に、連載中の読者の声や専門家の意見も収録してここに書籍化する。感動のルポルタージュ。
第36回 ファイザー医学記事賞優秀賞受賞。
目次
プロローグ やめられない、リスクは隣に
1章 ネットに吸い込まれ
1 高校卒業に6年--夜通しゲーム、遠のく学校
2 「おれはネット依存だ!」
3 試行錯誤する医療機関
2章 らせんの苦しみ
1 元「歌のお兄さん」、再起の舞台
2 仲間との共感が転機に
3 酒でざわつき紛らわせ
4 借金を重ねてパチンコ
5 危険ドラッグ事故
3章 家族ゆえ
1 「ご主人を逮捕しました」
2 夫が急変、アルコール依存症に
3 断とうともがく 父からの連鎖
4 家族会に携わる男性
5 「共依存」にきづいた女性
4章 医療に何ができるか
1 駒ヶ根の模索
2 精神科と連携する内科医
3 カジノ解禁、足元の現実
4 我慢しすぎる「過剰反応」
5 飲酒欲求を抑える新薬
6 ギャンブル依存を脳画像から探る
5章 地域で支える
1 池田のグループ、励まし合って
2 長野ダルク一般社団法人化
3 東京の通所施設の「離れた机」
4 ネット依存の少年を集め野外キャンプ
5 ギャンブル依存、借金返済も支援
6 自助グループ参加にも配慮
7 保健師にできることを問い続け
6章 変わるか業界
1 20兆円産業パチンコ 提供側の論理、省みる機運
2 ビールCMに変化、刺激を考慮し自主基準
3 ゲームに「はまらせる技術」
4 学校に講師派遣を始めたLINE
7章 罪に終わらせず
1 放火の陰に「病的賭博」
2 飲酒運転摘発の先へ 福岡の試み
3 薬物捜査のいたちごっこ
4 刑務所で回復プログラム
5 治療優先の発想
6 裁判後も窃盗症からの回復を支援
8章 小さくても一歩
1 元「歌のお兄さん」の誕生日
2 自助グループの女性仲間3人
3 ギャンブル依存症克服へ
4 断酒しながら働く喜び
5 佐久の試み ネットの使い方は生徒が決める
6 壊れかけた親子 絆再び
エピローグ 新たなつながりへ踏み出す
特集 もっと知りたい「依存症」
◆知りたい、ネット依存
久里浜医療センター 樋口進院長
ネット依存の定義いまだ 基準も複数
ネット依存、「先進」韓国も対策の途上
韓国カトリック大学聖母病院教授 李亥國に聞く
韓国の法的規制、業界は反発を強める
◆なぜやめられないのか
国立精神・神経医療センター 松本俊彦部長に聞く
「脳内報酬系」と快感の記憶
推計人数、実態は見えず
韓国ギャンブル依存症対策
◆依存症と向き合う
作家・アルコール依存症当事者 月乃光司
◆刑罰より治療--世界との比較
英国の事情に詳しい岡山の精神科医 橋本望
イタリアの場合 少量の薬物は「非刑罰化」
「酒に寛容な」日本--各国の規制紹介
「伝えたい」--読者の生の声から
信毎健康フォーラム「アルコール依存症」
アルコール依存症とは何か 信州大学病院助教 中村敏範
治療への道筋 長野県立こころの医療センター駒ヶ根院長 樋掛忠彦
断酒会の役割と家族 長野県断酒連合会加盟・こまみ会グループ代表 松村勝美
パネルディスカッション
あとがき
前書きなど
取材班は2016年秋から、さまざまな依存症の当事者や家族を訪ね、自助グループや回復支援施設、医療機関に足を運んだ。薬物使用容疑で逮捕された著名人は私生活も含め大々的に報じられるが、回復を目指す人の日常は知られていない。
「家族のため」「自分の将来のため」。人生を立て直そうとする当事者たちの姿は真摯だった。
連載や依存症を巡る報道に対し、この半年間で約150通の反響が寄せられた。大半が当事者や家族からだ。これまで誰にも言えなかった苦悩やつらさを初めて言葉にする人が少なくなかった。
アルコール依存症だった夫の飲酒に20年以上悩まされてきた女性は、手紙をこう書き出していた。
「ずっと心の中にしまっていました。けれど、いつも誰かに話をしたいと思っていました」
記者が電話すると、女性は夫が亡くなってから16年間、ずっと秘めてきた思いの丈を吐き出した。依存症への憎しみ、夫に冷たく当たった自分への後悔………。「聞いてくれてありがとう」。最後は涙声だった。
依存症に苦しみ、社会の中で孤立する当事者や家族の存在を「可視化」していくことが、連載の目標となった。
・・・・・・・
無意識のうちに、困っている人がいても目をそらしていたり、職場や学校でつらい状況の人への目配りを欠いていたり……。一方で、依存症に陥っていく人たちを「自業自得」と突き放し、つながりを切ってきたのは社会の側でもある。報道に携わる者の責任も改めて自覚したい。
依存症を防ぎ、回復していくために必要なのは、苦しみへの共感や、弱い姿をさらけ出しても排除されないという安心感だ。連載に登場した人たちの姿が、新たなつながりに向けて、それぞれが一歩を踏み出すきっかけになることを願う。(「エピローグ」より)
版元から一言
依存症というと「だらしがない人間」「意志が弱いから」と、あたかもその個人に問題があるかのように片付け、他人事と見ていまいがちだ。実は、よく周りを見てみると、電車の中でスマホを手放さない若者たちがいて、つい最近まで、元気で酒を飲んでいたおじさんが肝障害とか膵炎で入院したという話や、危険ドラッグで多人数を巻き込む交通事故が起き、ギャンブルで借金をこさえてしまったご近所の例などがあり、依存症のリスクはすぐ隣りにあるのかもしれない。
本書は、ネット依存から、薬物、アルコール、ギャンブル依存まで、「心の闇」と立ち向かいながら、周りの人の助けと協力で回復への道を歩む人たちに初めて光を当てる。
「依存症になったら、それでおしまい」なのではない。そこから人生を立て直そうと必死でもがく人たちがいた。試行錯誤しつつ、一歩でも前に進ませようと手助けする周囲の人たちの思いがあった。こうした人たちの日常はこれまで全く知られていなかった。ずっと秘められてきた苦悩やつらさ、喜びと憎しみ、そして後悔が姿を見せ始める。そう、あなた方のすぐ側で、それは起きていた真実だった。
第36回 ファイザー医学記事優秀賞受賞。感動のルポルタージュ‼
上記内容は本書刊行時のものです。