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蝦夷と東北の日本古代史 林 順治(著) - えにし書房
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蝦夷と東北の日本古代史 (エミシトトウホクノニホンコダイシ) 幻の雄勝城をめぐる物語 (マボロシノオガチジョウヲメグルモノガタリ)

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発行:えにし書房
四六判
並製
価格 2,000円+税
ISBN
978-4-86722-119-8   COPY
ISBN 13
9784867221198   COPY
ISBN 10h
4-86722-119-8   COPY
ISBN 10
4867221198   COPY
出版者記号
86722   COPY
Cコード
C0021  
0:一般 0:単行本 21:日本歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年5月10日
書店発売日
登録日
2023年4月18日
最終更新日
2023年5月11日
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紹介

古代日本国家成立の歴史過程に秘められた、天皇家と蝦夷をめぐる相克の物語と著者自身の存在の故郷(ルーツ)東北、横手盆地と心理的葛藤をめぐる物語が重なり合う稀有な書。
加羅系崇神王朝と百済系応神王朝の二段階にわたる東方侵略の実態を明らかにした、
石渡信一郎の研究成果を基盤に展開する、驚くべき史実。

〈もくじ〉
序 章 故郷
第1章 鹿嶋祭り
第2章 雄勝城の所在地
第3章 多賀城跡の壺の碑
第4章 蝦夷国とよばれた日高見国
第5章 加羅系崇神王朝
第6章 百済系倭王朝の時代
第7章 足田遺跡と雄勝柵
第8章 元慶の乱
終 章 母と姉と鹿嶋祭りと雄勝城
おわりに

目次

序 章 故郷
第1章 鹿嶋祭り
第2章 雄勝城の所在地
第3章 多賀城跡の壺の碑
第4章 蝦夷国とよばれた日高見国
第5章 加羅系崇神王朝
第6章 百済系倭王朝の時代
第7章 足田遺跡と雄勝柵
第8章 元慶の乱
終 章 母と姉と鹿嶋祭りと雄勝城
おわりに

前書きなど

序 章 故郷

▼八幡神社
 広い竹藪に囲まれた福岡利兵衛の屋敷の前を通る本荘街道から横道に入ると八幡神社があった。その八幡神社の鳥居は利兵衛の玄関先からまっすぐに見える。鳥居のそばに大きな杉の木があった。その杉の木の根元は空洞になっていて、子ども二、三人が隠れることができた。太い大きなイチョウの木も杉の木の隣に立っていた。秋にはたくさんの実が落ち、辺り一面黄色いイチョウの葉でいっぱいになった。
 同級生の紀男や堅悦の家が利兵衛の前から鳥居までの参道ともいえなくもない道沿いに六、七軒並んでいた。紀男の家の赤スモモは秋になると道端までしなっていた。紀男の家の手前は堅悦の家、その手前はソーエン殿だ。夏にはソーエン殿の大きな黄色の花を咲かせた二本のヒマワリが道路の方に傾いていた。
 本荘街道の北側は神主のホーエン殿、利兵衛と親戚筋のフクヨシさん、富田ヒロジさんの麴屋、ヒロジさんの叔父サブローオンチャの家、私の母の姉の菓子屋の家、大工の鉄男の家、私の家と親戚筋の祐平の家、リンジャの家と裏畑に通じる細い道を挟んで雑貨店の加賀谷があった。
 麹屋の裏のスイカは参道の垣根からも見えるほどゴロゴロと転がっていた。ソーエン殿の手前はセベ殿の木端製材工場の木材が道沿いに堆く積まれていた。工場からでるおがくず(チップ)をもらって八幡神社の境内の土俵にふんだんに運んだ。
 利兵衛の家を基点とする参道は鳥居の前で二手にわかれ、右側は神社の杉で鬱蒼と薄暗く、湿った細い道は雄物川の川原に続いていた。川端には同級生の善一や富士夫やサワ子の家があった。
 善一も富士夫もクラスで背丈が低い方であった。善一と富士夫はとても仲がよかった。善一は富士夫より少し小さかったが度胸があり、二人はいつも一緒に遊んでいた。富士夫は日に焼けて色が黒かった。富士夫はほとんど学校には来なかったが、家にもいなかった。富士夫を探すのは大変だった。
 鳥居の左の道は右手より明るく、セツ子の家と二、三軒の家があった。セツ子は小学校三年の時、満州から引き揚げて来た。勉強がよくできたし、サワ子と同じようにソロバンが抜群だった。ガラガラ声だったが、それが魅力であった。
 この辺り一帯はスモモや柿やリンゴの木がたくさんあった。頭上から藤の弦が垂れ下がり、ツツジも道が狭くなるほど生い茂っていた。この道は水浴びの行き帰りに必ず通る道であった。初夏には銀ヤンマがツツジの葉かげに無数に逆さにぶら下がっていた。
 藤の弦というと利兵衛の家の裏には漆樹に巻きついた藤の弦が地面まで垂れ下がっていた。そこは青大将がいそうだったので子どもたちはターザンごっこも止めてしまった。
 セツ子の家の近くの道を下ると八幡神社の裏側に出た。神社の二の殿が高く石垣上に聳えていた。道は十字路になっていて右に行くと富士夫や善一の家の方につながり、隣町の沼館に続いていた。土手を越えると雄物川の河原だ。
 左の道は学年が二年下の直樹の家の築地の間の狭くて細い道に通じた。直樹の家はなぜかタナヤといって利兵衛の親戚筋だが、直樹をタナヤノアンチャと呼んだ。蚕を飼っていたので棚屋になったのかもしれない。白壁で囲まれた大きな家だった。
 本荘街道は横手市と日本海側の本荘市を東西に結ぶ街道だ。横手から私の集落深井まで一六キロの距離だ。深井を通りすぎて雄物川橋を渡ると出羽山地に入る。本荘街道は雄物川橋を渡るまえに土手沿いに大きく左に曲がり、その右側に棚屋の家があった。
 棚屋の家から雄物川の橋の袂まで両側に一〇軒ほどの家があった。同級生の良二や重治やトヲ子の家があった。トヲ子の父はイタロウ巡査と呼ばれていたが、若いときは私の父の弟子であった。
 棚屋の裏は赤沼という深い大きな沼があった。赤沼の対岸は土手になっていた。土手にはバッケやドカランポやスッカンポがたくさん生えた。ドラカンポはイタドリのことだ。雄物川橋の手前の深川さんの家の坂道を下ったところに土橋がかかっていた。ヨシや柳やマコモの間を水が噴き出すように渦巻いて赤沼の方に流れていた。
 赤沼からたくさんのフナや天皇魚やクキが遡って来るのを土橋から見ることができた。土手をこえて雄物川の河原に出るにはこの道は一番近かった。かつてこの坂道は船付き場だったという。大雨で赤沼が増水すると大きな川の流れとなって、船が二、三艘坂道の桜の木に繋がれた。
 春になると土手の下のネコヤナギが茂る岸辺から、水草がしだいに沼の真ん中まで伸びていった。水草と水草の間に釣り糸を垂れると小さなフナがたくさん釣れた。土手の反対側は棚屋の畑になっていた。サヤエンドウやナスやジャガイモ、キュウリの弦がのび、淡いグリーンの葉が畑をうめつくしていた。
 沼の岸に大きな柳の枝が水面まで垂れ下がり、夕方になるとその辺りでオイカワが無数に飛び跳ねた。オイカワのことを天皇魚と呼んで誰もオイカワと呼んだことはない。オスは色鮮やかで大きかったがメスの方が蒸して食べると旨かった。
 沼の北側は八幡神社の裏までしだいに浅くなって水草が繁茂していた。沼は蒲鉾形のようなコンクリートで堰き止められていたが、土手に繋がっていた。赤沼の水は土手の下をくぐって幾筋にもわかれて川原の砂地を流れた。
 河原のせせらぎを上って小魚が赤沼に入るのを見ることができた。八幡神社のわき道の坂を下り、丸いコンクリートの上を走り、土手を上ると白くびっしりと敷き詰められた小石と砂が雄物川橋の方まで広がっている。
 雄物川が西馬音内の方から蛇行して流れてくる。はるか向こうの出羽丘陵と奥羽山脈が出会うところは大きな谷間がV字のように見える。その向こうは日本海だ。鳥海山から雲が沸き立ち、たちまち横手盆地を覆っていく。風が吹く、一面の水田が波打ち、草木がざわめく、子どもが畦道を走り、川で泳ぐ。山、川、畑、雑草、村々、神もなく、さしたる約束もなく、儀式もない。権威もないが、不自由もない。

著者プロフィール

林 順治  (ハヤシ ジュンジ)  (

旧姓福岡。1940年東京生れ。東京空襲の1年前の1944年、父母の郷里秋田県横手市雄物川町深井(旧平鹿郡福地村深井)に移住。県立横手高校から早稲田大学露文科に進学するも中退。1972年三一書房に入社。取締役編集部長を経て2006年3月退社。
著書に『馬子の墓』『義経紀行』『漱石の時代』『ヒロシマ』『アマテラス誕生』『武蔵坊弁慶』『隅田八幡鏡』「アマテラスの正体」『天皇象徴の日本と〈私〉1940-2009』『八幡神の正体』『古代七つの金石文』『法隆寺の正体』『日本古代国家の秘密』『ヒトラーはなぜユダヤ人を憎悪したか』『「猫」と「坊っちゃん」と漱石の言葉』『日本古代史問答法』『エミシはなぜ天皇に差別されたか』『沖縄!』『蘇我王朝の正体』『日本古代国家と天皇の起源』(いずれも彩流社)、『応神=ヤマトタケルは朝鮮人だった』『仁徳陵の被葬者は継体天皇だ』(河出書房新社)、『日本人の正体』(三五館)、『漱石の秘密』『あっぱれ啄木』(論創社)、『日本古代史集中講義』『「日本書紀」集中講義』『干支一運60年の天皇紀』『天皇象徴の起源と〈私〉の哲学』『改訂版・八幡神の正体』『日本古代史の正体』『天武天皇の正体』『日本書紀と古事記』『天皇の系譜と三種の神器』(えにし書房)。

上記内容は本書刊行時のものです。