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変容するインドネシア 小川忠(著) - めこん
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変容するインドネシア (ヘンヨウスルインドネシア)

社会一般
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発行:めこん
四六判
縦188mm 横128mm 厚さ30mm
重さ 480g
464ページ
並製
定価 3,200円+税
ISBN
978-4-8396-0336-6   COPY
ISBN 13
9784839603366   COPY
ISBN 10h
4-8396-0336-7   COPY
ISBN 10
4839603367   COPY
出版者記号
8396   COPY
Cコード
C0030  
0:一般 0:単行本 30:社会科学総記
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2023年12月10日
書店発売日
登録日
2023年11月9日
最終更新日
2024年1月11日
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書評掲載情報

2024-02-10 日本経済新聞  朝刊
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紹介

インドネシアが日本を抜くのは時間の問題か…台頭するインドネシアの実力を知らないのは日本人だけだ。20年以上この国を見続けている著者が最新の情報と自らの観察と体験をもとにインドネシアの全体像をリアルに描いた大著。
カギとなるのは「イスラーム」と「デジタル化」です。

目次

序章 なぜインドネシアに注目する必要があるのか
台頭するインドネシア
日本社会の身近な隣人として
インドネシア理解の要諦――多様性と変化
豊かになるとは
増大する肥満人口
健康ブームのインドネシア
かつての「庶民」はどこへ?
本書の構成

第1部 インドネシア社会――変化の潮流と多様性

第1章 インドネシア・イスラームは「非寛容」へ向かうのか
暗雲が立ちこめ始めた「多様性の中の統一」
「イスラームが勝者」なのか
サウジアラビア帰りのイスラーム社会運動リーダー
サウジアラビア留学体験がもたらしたイスラーム理解の変容
バクティアル・ナシルの既存イスラーム機関批判
非寛容なイスラーム指導者に潜む怨念
キャンパス過激化への懸念
少数派へ非寛容な「Z世代」
なぜ学生は非寛容化するのか
「文明の衝突」にあらずして「文明内の分断」
啓蒙主義者ヴォルテールのムハンマド風刺
ムハンマドを評価していたナポレオン、ゲーテ
ゲーテの反イスラーム劇翻訳の真意は狂信批判?

第2章 インドネシア社会のデジタル化と民主主義
デジタル化が進むインドネシア
デジタル経済振興を目論んだジョコ政権
デジタル化は民主主義を強化するか
第一期ジョコ政権が目指した電子ガバナンスによる民主主義強化
デジタル化社会の負の側面
SNSが主戦場となった二〇一九年大統領選挙
デジタル社会化に伴う選挙の変質
電子情報・商取引法の呪縛
メディアの変容――活字からデジタルへ
メディア産業のコングロマリット化と寡頭化
デジタル市民運動の盛り上がり
デジタル市民運動のネットワーク
デジタル・リテラシーと選挙モニター
少数派の声を伝える
「四〇四エラー」落書きがもたらした波紋
民主化とともに台頭したデジタル・アート
アートと伝統知を活用して社会の絆を創造する「ルアンルパ」
アートとテクノロジーを融合させる「HONF」

第2部 社会・文化変容から見たインドネシ
ア各地

第3章 西部ジャワ――アートとデジタル化で変貌
を遂げるバンドン
バンドンから始まる変革
英国初の「創造都市」論
バンドンのユネスコ創造都市ネットワーク加盟
辣腕大臣の創造経済論
創造都市を牽引する市民派建築家
市民参画型政治を主導するリドワン
バンドンは人権都市足りうるか

第4章 中部ジャワ――ジャワ文化本場のイスラーム女性組織に見る多様なジェンダー言説
ジャワ・アイデンティティーの退潮
インドネシア女性ウラマー会議の創設
ジョクジャカルタにおける主要イスラーム女性組織
スルタンの王位継承権問題
一夫多妻制をめぐって
LGBTへのスタンス

第5章 東部ジャワ――イスラーム・エリートを生み出す国際派プサントレンの教育力
国民教育の一翼を担うイスラーム教育機関
イスラームのグローバル人材養成を目指すプサントレン
リベラル・イスラームの論客
イスラーム主義の精神的指導者
両極端の思想がゴントールから生まれる理由
プサントレンに浸透する東アジアのポップカルチャー


第6章 バリ――グローバル化とジャワのイスラーム化が刺激するバリ文化復興運動
G20バリ・サミットを支えた自警団
インドネシアにおけるバリ島、バリ人の特別な意味
盛り上がる「アジュグ・バリ」(バリ文化復興運動)
植民地支配の遺産――地上の楽園イメージの形成
バリの「インドネシア」化と国家開発としての観光振興
ポスト・スハルト期の地方分権化、一体感の揺らぎ
インドネシアのイスラーム化が生んだアジュグ・バリ
変質するアジュグ・バリ
もうひとつの「回帰すべき過去」
バリに持ち込まれるヒンドゥー・ナショナリズム

第7章 アチェ――イスラーム法が施行される唯一の州
イスラーム法の厳罰化によって束縛される若者の自由 
インドネシアにイスラームが伝播した地、イスラーム王国の栄光
外部勢力への抵抗の歴史
和平交渉取引材料としてのイスラーム法適用
過酷化するイスラーム法
アチェとどうつき合うか


第8章 中部スラウェシ、ポソ――「宗教」紛争の負の遺産をどう乗り越えていくか
「多様性の中の統一の試金石」ポソ
ポソ紛争の背景
エスカレートする暴力
これは「宗教戦争」なのか
イスラーム過激組織の介入と軍・警察の関わり
「脱過激化」プログラムとは?
紛争地ポソでの脱過激化プログラム

第9章 パプア諸州――パプアが問う国民国家のかたち
「住民投票」という欺瞞
村井吉敬の愛したパプア
分離独立運動の活発化、犠牲者拡大
精鋭部隊の配備、テロ対策機関の関与、州の分割
インドネシア・ナショナリズムはパプアを包含するのか?


第10章 東ヌサ・トゥンガラ――キリスト教徒多数派の社会
例外的な宗派人口構成
ジャカルタとの格差が拡大する最貧困州
宗派間対立の少ない州
キリスト教化は比較的新しい現象
祖霊崇拝と結びついたキリスト教
東ティモール紛争の傷跡

第11章 スマトラ諸州――「開発」を問う森の人々
スマトラ開発に力を入れるインドネシア中央政府と日本
「日本の援助の目玉商品」:アサハン開発プロジェクト
日本のODAはインドネシアの開発に貢献したか?
深刻度を増すスマトラ島の環境破壊
森の民の学びの場
土地所有権を認められてこなかったオラン・リンバ
なんのための教育か

第12章 ジャカルタからヌサンタラへ――壮大な首都移転構想の目指すもの
首都移転の決定
首都移転決定の理由
新首都ヌサンタラのビジョン
新首都の区割りと移転スケジュール
新首都建設の基本原則
過去のインドネシアの首都移転
これからの課題

第3部 コロナ禍後の世界におけるインドネシア


第13章 イスラームを外交資源とするインドネシア――タリバンへの説得
想定外だった急激な体制崩壊
タリバン復権に歓喜するインドネシアのイスラーム過激組織
当面低いテロ・リスク
外交を活発化させるインドネシア
イスラーム・ネットワークを用いたパブリック・ディプロマシー
ナフダトゥル・ウラマーがアフガニスタンに打ってきた布石
モデルとなるインドネシアのイスラーム女子教育
女子教育の再開に向けて

第14章 新冷戦が刺激する新・非同盟主義外交
対ロシア国際世論は一致しているか?
独自路線を行くインドネシア外交
対ロシア制裁に慎重姿勢を崩さないインドネシア政府
プーチンに共感するインドネシアのネット市民
反欧米感情の裏がえしとしての親ロシア、親プーチン論
ソ連の対インドネシア援助・文化交流、ロシアのパブリック・ディプロマシーの成果
大衆の「強い指導者」好き
ロシアのウクライナ侵攻の宗教原理主義的解釈

第15章 深まる中国との関係と華人系インドネシア人
インドネシアで存在感を高める中国
習近平が発したメッセージ
語られなかった過去
基本的価値観の違いを超える対話は可能か
イスラームに着目して
世界最大級の規模の華人人口
インドネシア・ナショナリズムと華人
プラナカン新世代の新たな文化創造への期待


第16章 近代医学とナショナリズム――インドネシアの原点回帰
パンデミック下の国家アイデンティティーの問い直し
ナショナリズムの起源となった医学校
ペストと戦う青年インドネシア人医師たち
「スペイン風邪」被害を拡大させた植民地当局の怠慢
医療ナショナリズムの形成
日本軍政期の医療ナショナリズム
「親日国インドネシア」をめぐる誤認
保健医療の先駆者の死
医者と世直し

終章 日本・インドネシア関係の未来に向けて 
「グローバリゼーション」と連動する「イスラーム化」「デジタル化」
「歴史」となったインドネシア独立
対等なパートナーシップのための提言

あとがき
参考文献
索引

前書きなど

序章 なぜインドネシアに注目する必要があるのか 


台頭するインドネシア
 
「インドネシア経済が日本を凌駕する」
今から三〇有余年程前、私が初めて国際交流基金の駐在員としてインドネシアに赴任した一九八九年に、そんなことを言ったら、「なにをバカな」と一笑に付されただろう。世銀統計によれば、この年の日本の名目GDPは三・〇五兆米ドル、インドネシアのそれは九四四億米ドルである。当時世界最強と呼ばれた八〇年代末の日本経済は、インドネシアの三二倍の規模で躍動していた。それがコロナ危機直前の二〇一九年のGDP値では、日本五・〇六兆米ドルに対して、インドネシア一・一九兆億ドルとなり、その隔たりは四・二倍程度まで縮小しているのだ。
これから三〇年先はどうなるだろうか。三〇年先といえば現在大学生の若者が四〇代から五〇代の働き盛りとなって社会を動かしている頃である。一世代のサイクルが回るぐらいで、さほど遠い未来ではない。
少なからぬ経済専門家が、三〇年先インドネシア経済は世界トップ一〇に仲間入りしていると予測している。中でもロンドンに本拠を置く国際コンサルティングのPwC(      )は、二〇五〇年インドネシアのGDPは、一〇・五兆米ドルで中国、インド、米国に次いで世界四位に躍進すると予測する。世界第四位の二億七二二三万人の人口を擁し(二〇二〇年国勢調査)、国民の平均年齢は二九歳と若く、消費意欲も旺盛で国内市場は拡大し、経済成長に有利な勤労世代の人口増が続く「人口ボーナス」のある国として、インドネシア経済の実力を評価する。
他方PwCによると、二〇五〇年日本のGDPは六・七七兆米ドルで、世界ランキングを現在の三位から八位にまで落としている。前述の四ヵ国に加えて新興国ブラジル、ロシア、メキシコにも抜かれるという見立てだ。
三〇年前の絵空事は、三〇年後には現実のものとなるかも知れない。
このような未来予測は、世界経済の主軸が近代以来長く続いてきた欧米(プラス日本)からアジアを中心とする新興国へと移行しつつある、という二〇世紀後半から始まった世界史的潮流に基づくものである。
「インド太平洋」という地政学的観点からも、国際社会においてインドネシアへの関心が高まっている。中国の海洋進出、一帯一路構想に対抗する形で、日米両国は「インド太平洋」戦略を強化してきた。日本の安倍晋三首相は二〇一六年八月に「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱し、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持、強化を訴え、米国トランプ政権は海軍の「アメリカ太平洋軍」の名称を「アメリカインド太平洋軍」と改称し、中国に対抗する姿勢を鮮明にした。日米の「インド太平洋戦略」のカギを握るのが、インド洋と太平洋の結節点に位置し、東西五〇〇〇キロと米国大陸部に匹敵する長大な海域を持つインドネシアなのである。二〇二二年四月にインドネシアを訪問した岸田文雄首相は、日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋」とインドネシアが主導策定した「インド太平洋に関するASEANアウトルック」の実現に向けて、「戦略的パートナー」として協力を強化していくことを、ジョコ・ウィドド大統領と確認した。
かくして世界的に存在感を高めるインドネシアについて、国際政治や国際経済の専門家はその重要性について、従来の「東南アジアの大国」という認識を超えた評価を与えつつある。曰く「世界の行方を左右する国(glOBal swing state)」「アジア第三の巨人」「インド太平洋で台頭する海洋パワー」「民主主義を定着させた初めてのイスラーム大国」等々。
このような国際的なインドネシア再評価の高まりに、インドネシアの指導者たちは自信を深めつつある。ジョコ大統領が政権発足直後の二〇一四年一一月ASEAN首脳会議で表明した外交ドクトリンも、その自信の表れであろう、海洋防衛、海洋外交、海洋資源開発、海洋インフラ整備、海洋文化の五分野からなる外交戦略は、インド太平洋の海洋パワーとしてこの地域の安全と安定に主体的な役割を果たしていくという意思を表明したものである。
一九五〇年代初代大統領スカルノは、冷戦時代のインドネシア外交の基軸として非同盟主義に力を入れ、第一回アジア・アフリカ会議(バンドン会議)をホストした後、反米色の強い外交を展開した。六五年には国連を脱退するなどして世界を引っ掻き回したが、六五年の九月三〇日事件を契機に失脚した。スカルノから権力を奪った第二代大統領スハルトは、スカルノの派手な反帝反植民地主義路線を改め、自国の国家開発に重きを置く外交に転換する。深謀遠慮の人スハルトは、国際問題に自ら首を突っ込み、自身の存在をアピールする風雲児スカルノのような姿勢は採らなかった。
外交より内政を優先させるスハルトの時代は三〇年続き、さらにスハルト後の政権も、強権体制から民主主義社会へという体制転換の不安定な状況が続いた。外交に力を振り向けようという議論への支持は拡がらなかったのである。
ところがここに来て目覚ましい経済発展が、これまでASEANのリーダーを自認するも域外への発信はさほどでもなかったインドネシア外交を、積極的に外に向かって発信し、関与する方向へと変化させているのである。

版元から一言

ひさしぶりのインドネシア本です。「本格的」でボリュームもありますが、インドネシアファンは潜在的に多いので売れると思います。

著者プロフィール

小川忠  (オガワタダシ)  (

1959年神戸市生まれ。
1980~81年米国キャンザス大学留学。1982年早稲田大学教育学部卒、2012年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程修了。博士(学術)。
1982~2017年国際交流基金に勤務。1989~93年国際交流基金ジャカルタ日本文化センター駐在員、2011~16年国際交流基金東南アジア総局長(在ジャカルタ)。2017年より現職。
【専門】国際交流政策、東南・南アジア研究。
【著書】
『インドネシア 多民族国家の模索』(岩波新書、1993年)
『ヒンドゥー・ナショナリズムの台頭』(NTT出版、2000年。毎日新聞・アジア調査会 アジア・太平洋賞特別賞受賞)
『インド 多様性大国の最新事情』(角川選書、2001年)
『原理主義とは何か:アメリカ、中東から日本まで』(講談社現代新書、2003年)
『テロと救済の原理主義』 (新潮選書、2007年)
『戦後米国の沖縄文化戦略』(岩波書店、2012年)
『インドネシア イスラーム大国の変貌:躍進がもたらす新たな危機』(新潮選書、2016年)
『自分探しするアジアの国々 揺らぐ国民意識をネット動画から見る』(明石書店、2021年)
『逆襲する宗教:パンデミックと原理主義』(講談社選書メチェ、2023年)

上記内容は本書刊行時のものです。