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熊取六人衆の脱原発
- 初版年月日
- 2014年5月
- 書店発売日
- 2014年5月27日
- 登録日
- 2014年4月30日
- 最終更新日
- 2014年6月25日
紹介
「原子力災害・放射能汚染など、原子力利用にともなうリスクを明らかにする研究」を行ってきた京都大学原子炉実験所の原子力安全研究グループ。その中で、熊取六人衆と呼ばれる6人の講演を一冊にまとめ、熊取の原子力に対するサイエンスの考え方、気風を伝え、脱原発への道を拓く。
目次
1 熊取の学者たち
(1)市民とアカデミズムのはざまで──川野眞治
(2)福島原発事故3年後の過去、現在、未来──海老澤徹
(3)危険で無意味な高速増殖炉「もんじゅ」──小林圭二
(4)学問とは、科学(サイエンス)とは──今中哲二
2 この国は原発事故から何を学んだのか?──小出裕章
3 証言──女川原発差し止め訴訟──瀬尾 健
前書きなど
はじめに
2013年11月22日に、「熊取六人衆講演会in京都大学 熊取の学者たち──学問のあり方を問う」(主催・熊取六人衆京大講演実行委員会)が行われました。講演会の呼びかけ文では、「京都大学原子炉実験所で研究をしてきた彼らが、京都大学で講演をする機会はこれまでほとんどなかった」として、「熊取の学者たちが歩んだ道のりを、今、京都大学の場で振り返り、未来につなげていきたい」「彼らはなぜ反原発の道を歩んだのか。科学者として、何を考えどのように行動し、結果どのような待遇を受けてきたのか」を語ってもらうのを趣旨としています。また熊取六人衆について、次のように紹介しています。
「原子力安全研究グループに所属する海老澤徹さん、小林圭二さん、瀬尾健さん、川野眞治さん、小出裕章さん、今中哲二さんの六人(年齢順、瀬尾さんは94年に逝去された)。グループの目的は『原子力災害、放射能汚染など、原子力利用にともなうリスクを明らかにする研究を行い、その成果を広く公表することによって、原子力利用の是非を考えるための材料を社会に提供する』こと(原子力安全研究グループホームページより)。『熊取六人衆』は自称ではなく、『伊方原発設置許可取り消し訴訟』の支援や、原子力安全研究グループとして公開の勉強会を開催する中で『熊取六人衆』と呼ばれるようになる。『熊取』は京大原子炉実験所の所在地」
当日に講演したのは、川野さん、海老澤さん、小林さん、今中さんの4人で(講演順)、本書では「1 熊取の学者たち」として収録しました。都合がつかず不参加となった小出さんは次のようなメッセージを寄せています。
「集会にご参加の皆さん、ありがとうございます。
熊取6人組のメンバーでありながら、今日の集会に参加できないことを、お詫びします。
福島原発から2年半以上過ぎましたが、いまだに数十万人もの人が生活を破壊されたままです。そして、数百万人もの人が、本来なら放射線管理区域にしなければならない汚染地帯に棄てられ、そこでの生活を余儀なくされています。また、多数の下請け・孫請け労働者が被曝環境で、事故収束作業にあたっています。それなのに、この国はオリンピックが大切なのだそうです。
今なすべきことは福島原発事故収束と被害者の救済なはずで、オリンピックどころではありません。それなのにオリンピックに反対すれば非国民のようです。私は喜んで非国民になろうと思います。京都大学も、法人になって以降、ますます金儲け、業績主義に向かっていて、これが大学なのかと呆れます。6人組のメンバーは一人ひとり違った個性で意見も違います。それでも原子力を廃絶させるためには力を合わせてここまで来ました。今日は、違った個性、そして力を合わせてきた歴史などについても聞いていただけると思います。
今日の集会に参加してくださっている方々の場もそれぞれに厳しいものと思います。でも諦めた時が最後の負けですので、それぞれの場でのご活躍を願います」
小出さんについては、2013年11月4日に「核戦争を防止する岡山県医師」主催で行われた講演を「2 この国は原発事故から何を学んだのか?」として収録しました。
瀬尾さんについては、今中さんから「瀬尾さんの思い出」(1995年秋)を送っていただきました。瀬尾さんを惜しむ敬愛に満ちた文集ですが、女川原発差し止め訴訟で証言したことを知りましたので、女川原発訴訟支援連絡会議(当時)の篠原弘典さんからパンフレットになった証言録を送っていただきました。証言は、1986年5月27日に行われたと言いますが、チェルノブイリ原発事故(4月26日)からわずか1か月しか経っていないにもかかわらず、限られた情報を元に渾身の証言をしています。紙幅の関係で証言録の「原子炉事故の災害評価の歴史」を割愛せざるを得ませんでした。
このようにしてまとめられた本書をあらためて読んでみると、サイエンスに対する研究者としての熱意に満ちています。六人それぞれが原発事故に警鐘を鳴らし続けてきたわけですが、おのずから生まれる“気風”というものを読み取って、サイエンスを志す未来の若者たちに伝えたいと考えます。
七つ森書館編集部
版元から一言
★著者のひとこと
・今中哲二……私はジャーナリストの方によく言ってますが、「科学的に!」にこだわらなくてもいいから、もっと自分の感覚で確かなところに突っ込んで下さい、と。
・海老澤徹……福島第一原発の立地が如何にいい加減だったかということをこれらの事実が実証しています。
・川野眞治──70年生きてきましたが、それもあっという間だった感じがしています。……最後は原発を是非止めたいと考えています。
・小出裕章──福島の事故が起きて、せめてそのくらいのことを私たちが学ばなければいけないし、未来に向かっての歴史を築いて行こうとしなければいけないと思います。
・小林圭二……これは官僚のメンツを優先し科学的な常識を無視して安全性を軽視する極めて危険な冒険です。
・瀬尾健──大事故というのは、人間が考えられる範囲で安全装置を張り巡らしても、その網目を潜って大事故に発展していくという風に考えるのが常識であります。
上記内容は本書刊行時のものです。