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映画にもTVにもなった ファンタジー・ノベルの魅力 井辻 朱美(編著) - 七つ森書館
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映画にもTVにもなった ファンタジー・ノベルの魅力

発行:七つ森書館
A5判
224ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-8228-1391-8
Cコード
C0098
一般 単行本 外国文学、その他
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年12月
書店発売日
登録日
2013年11月13日
最終更新日
2013年12月9日
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紹介

あなたはどの物語を読んで観る?
映画やTVになったファンタジーの名作101を、この一冊に凝縮しました!
『美女と野獣』『オズの魔法使い』などの古典から、『ナルニア国ものがたり』や『ハウルの動く城』や『ハリー・ポッター』、さらに『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』など最新作まで――数百年におよぶファンタジーの歴史から選び抜かれた101作品。
誰もが知っている名作を、映像化作品のデータも駆使して読み解くまったく新しいファンタジー・ガイドブック!

目次

はじめに 井辻朱美

PART1 みんなが読んできた古典 
     美女と野獣 ボーモン夫人(金子真奈美)
     ほら吹き男爵の冒険 ビュルガー(高橋尚子)
     クリスマス・キャロル ディケンズ(西山素代)
     雪の女王 アンデルセン(浜名那奈)
     ふしぎの国のアリス ルイス・キャロル(浜名那奈)
     若草物語 オルコット(金子真奈美)
     海底二万里 ヴェルヌ(浜名那奈)
     フランダースの犬 ウィーダ(浜名那奈)
     お姫さまとゴブリンの物語 マクドナルド(佐竹朋子)
     ハイジ シュピリ(西山素代)
     王子と乞食 マーク・トウェイン(浜名那奈)
     ピノッキオの冒険 コッローディ(金子真奈美)
     十五少年漂流記 ヴェルヌ(浜名那奈)
     ジャングル・ブック キップリング(高橋尚子)
     オズの魔法使い ボーム(浜名那奈)
     小公女 バーネット(金子真奈美)
     ニルスのふしぎな旅 ラーゲルレーヴ(高橋尚子)
     赤毛のアン モンゴメリ(金子真奈美)
     青い鳥 メーテルリンク(浜名那奈)
     秘密の花園 バーネット(金子真奈美)
     ピーター・パン バリ(佐竹朋子)
     あしながおじさん ウェブスター(西山素代)
     少女パレアナ ポーター(浜名那奈)
     クマのプーさん ミルン(金子真奈美)
     エーミールと探偵たち ケストナー(浜名那奈)
     タンタンの冒険 エルジェ(浜名那奈)
     点子ちゃんとアントン ケストナー(浜名那奈)
     飛ぶ教室 ケストナー(浜名那奈)
     風にのってきたメアリー・ポピンズ トラヴァース(金子真奈美)
     大草原の小さな家 ワイルダー(浜名那奈)
     バレエ・シューズ ストレトフィールド(西山素代)
      ●コラム アメリカ開拓時代の映像化(浜名那奈)

PART2 ファンタジーの黄金時代
     ホビットの冒険 トールキン(井辻朱美)
     ジェニーの肖像 ネイサン(佐竹朋子)
     黒い兄弟 テツナー(西山素代)
     空とぶベッドと魔法のほうき ノートン(佐竹朋子)
     長くつ下のピッピ リンドグレーン(高橋尚子)
     スチュアートの大ぼうけん ホワイト(浜名那奈)
     まぼろしの白馬 グージ(佐竹朋子)
     やかまし村の子どもたち リンドグレーン(高橋尚子)
     楽しいムーミン一家 ヤンソン(高橋尚子)
     ふたりのロッテ ケストナー(浜名那奈)
     ナルニア国ものがたり ルイス(高橋尚子)
     シャーロットのおくりもの ホワイト(金子真奈美)
     床下の小人たち ノートン(浜名那奈)
     ミオよ、わたしのミオ リンドグレーン(高橋尚子)
     第九軍団のワシ サトクリフ(高橋尚子)
     指輪物語 トールキン(井辻朱美)
     ビーザスといたずらラモーナ クリアリー(西山素代)
     さすらいの孤児ラスムス リンドグレーン(高橋尚子)
     くまのパディントン ボンド(高橋尚子)
      ●コラム ロシアの国民的人気キャラクター (浜名那奈) 

PART3 ナンセンスと想像力の多様化
     ミス・ビアンカ くらやみ城の冒険 シャープ(高橋尚子)
     プチ・ニコラ ゴシニ(高橋尚子)
     おばけモモの冒険 ダール(金子真奈美)
     大どろぼうホッツェンプロッツ プロイスラー(浜名那奈)
     チョコレート工場の秘密 ダール(浜名那奈)
     ふしぎなマチルダばあや ブランド(佐竹朋子)
     黄金の七つの都市 オデール(浜名那奈)
     光の六つのしるし クーパー(西山素代)
     クローディアの秘密 カニグズバーグ(佐竹朋子)
     ゲド戦記 ル=グウィン(浜名那奈)
     こいぬのうんち ジョンセン(大竹聖美)
     父さんギツネバンザイ ダール(金子真奈美)
     クラバート プロイスラー(浜名那奈)
     ロッタちゃんとじてんしゃ リンドグレーン(高橋尚子)
     モモ エンデ(佐竹朋子)
     プリンセスブライド・ストーリー ゴールドマン(西山素代)
     ミルドレッドの魔女学校 マーフィー(金子真奈美)
     時をさまようタック バビット(佐竹朋子)
     テラビシアにかける橋 パターソン(佐竹朋子)
     くもりときどきミートボール バレット(西山素代)
     子ブタ シープピッグ キング=スミス(金子真奈美)
     はてしない物語 エンデ(西山素代)
     リトルベアーの冒険 バンク(金子真奈美)
     戦火の馬 モーパーゴ(佐竹朋子)
     急行「北極号」 オールズバーグ(金子真奈美)
      ●コラム ドラゴンラージャ(大竹聖美)

PART4 メディアミックスの新次元
     魔法使いハウルと火の悪魔 ジョーンズ(浜名那奈)
     ミセス・ダウト ファイン(西山素代)
     マジックツリーハウス オズボーン(西山素代)
     フリーク・ザ・マイティ――勇士フリーク フィルブリック(西山素代)
     黄金の羅針盤 プルマン(浜名那奈)
     ハリー・ポッター ローリング(金子真奈美)
     さよなら「いい子」の魔法 レヴィン(西山素代)
     サンサン 曹文軒(中由美子)
     穴 サッカー(佐竹朋子)
     世にも不幸なできごと スニケット(佐竹朋子)
     ダレン・シャン ダレン・シャン(金子真奈美)
     ポビーとディンガン ライス(西山素代)
     プリンセス・ダイアリー キャボット(佐竹朋子)
     タイドランド ミッチ・カリン(西山素代)
     トラベリング・パンツ ファインブラッシェアーズ(佐竹朋子)
     コララインとボタンの魔女 ゲイマン(西山素代)
     チョコレート・アンダーグラウンド シアラー(浜名那奈)
     世界でいちばん大切な思い イ・ミエ(大竹聖美)
     魔法の声 フンケ(高橋尚子)
     ヒックとドラゴン コーウェル(浜名那奈)
     スパイダーウィックの謎 ブラック(金子真奈美)
     トワイライト メイヤー(佐竹朋子)
     パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 リオーダン(佐竹朋子)
     ガフールの勇者たち ラスキー(西山素代)
     ユゴーの不思議な発明 セルズニック(金子真奈美)
     グレッグのダメ日記 キニー(西山素代)

作品名索引 

前書きなど

はじめに──白百合女子大学教授 井辻朱美

●ファンタジー成分の長命力
 本書は子どもの本の映像化を扱ったものです。
 こんな本があるといいな、と思ったきっかけは、数年前、某社の企画で、ローティーン向けに、世界の名作童話のアンソロジーを編んだときでした。
 百ほどの項目を立てるのに、グリムやペローの昔話、アンデルセンや『不思議の国のアリス』あたりの突出した名作までは、ラインナップに悩むこともなかったのですが、二十世紀の作品、それも戦後から今まで紹介されてきた定評ある作品の中から選ぼうとすると、知名度が大きな問題になりました。三十代の女性編集者さん複数が知らない、と言った作品を外してゆき、また読者対象の親世代が知っているはずの作品を、と考えると、九割以上がファンタジー作品になってしまったのです。
 たとえばある世代以上では非常に人気があったアーサー・ランサムの知名度は、いまかなり低いことがわかりました。
 ある時代、ある国、ある社会制度に強く特化したリアリズムの作品は、知識のない子どもにはかなりハードルが高くなります。共感しにくいため、時代を超えた不朽の名作、となることはなかなか難しいのです。その点、時代による制約を持たない、空想をもとにした作品、たとえば『ピーター・パン』を知らない人はいません。放恣とも見える、人類の想像力に根ざしたファンタジーがむしろ、神話や昔話と同じように普遍性を持っていることを改めて感じました。
 そして、それとともに気づいたのは、多くの人が、知っている、と嬉しそうに答えた作品は、ほとんどがディズニーをはじめとするアニメや映像化をへたものだということでした。
 ファンタジー成分の含有度の高さ。そして、それを二次的に映像化した作品の存在。おそらく現代では、子どもが親しみ、血肉としている作品の要件は、それなのです。
 面白いから、何度もさまざまな形での映像化が行われ、それを見て育った世代が、次にはそれをもとに新たな再話やパロディを試み、ついては原作も参照する、という形で、プラスのフィードバックが続きます。ファンタジーゆえのいじりやすさ、転化しやすさもそれを促進します。
 そして逆に言えば、映像化されなければ、特に児童文学の場合、その作品は読まれなくなり、時代の化石となって埋もれてゆきがちです。映像やアニメによって延命してゆくことがなければ……。最近では、『床下の小人たち』シリーズ(メアリー・ノートン)が、リバイバルした好例でしょうか。
 時代を超えて生きのびるファンタジー。
 それに大きく関与するのが作品の(ゲームを含む)映像化。
 本書も、映像をひろっていった結果、自然に八割ほどがファンタジー系作品になってしまったことを思いあわせると、このふたつは不即不離の関係にあるようです。

●上書きされる原作・失われる「著者性」
 ところで、ここにもうひとつの問題も見えてきました。
 勤務先の児童文化学科の学生たちですら、『ナルニア』のディズニー映画に満足して、めったに原作を読みません。まして『リトル・マーメイド』となると、さらに古いアンデルセンの原作は関心の外にあるようです。人魚姫は王子と結ばれ、ともに魔女を倒す。この大団円の充足感が、王子と結ばれずに泡になってしまい、唯一の救いは三百年のあいだ善行を積めば天国に行けること、という原作のいじらしく哀しい結末を、(集合意識レベルで)上書きしてしまったようです。
 おそらく、原作はアンデルセンの「人魚姫」だ、という知識は受け継がれていっても、心の中でのキャノン〈正典〉となるのは『リトル・マーメイド』のほうなのでしょう。
 原作がもっとも正統的特権的な位置を占める、という「著者性」の優位は、そろそろ危うくなっているのかもしれません。
 わたし個人の経験からも、子どものころ読んだ翻案リライト本のほうが、ずっと面白く、フェイクと言われようと、それが自分にとっての「あの作品」なのだという本は何冊もあります。たとえばボアゴベーの『鉄仮面』のように、大人の作品を「少年少女名作全集」に入れた場合は、訳者の力量によって、原作よりよっぽど子どもの心に訴えるものになることも多いのです。黒岩涙香の書いたハッピーエンドは、大人になって読んだ完訳本には影も形もなく、だからといって、わたしの心に深く刻まれた『鉄仮面』のあれこれのせりふや、感動的なシーンを消し去ることは、もはやできません。
 原作は、そんなふうに時代とともに上書きされてゆきます。生まれた異本(あるいは映像)のほうが、その時代にフィットすれば、それが〈正典〉になって引き継がれてゆきます。
 「著者性」というものが成立したのが、印刷テクノロジーをめぐる制度に随伴したできごとであったとすれば、そして紙に記されることで侵しがたい「原作」が成立したのであったとすれば、自由に書き換えることのできる電子文字の時代には、おびただしいパロディや異本、二次、三次創作が生まれやすくなるのも当然であり、口承文芸がそうであったように無数の異本、異伝、そして映像(さらに自由なCGによる)作品が広がってゆき、もっとも人口に膾炙したものが生き残ってゆくことになるのかもしれません。
 特に幼いころに目で見た「映像」は、文字以上に強烈な記憶として刻印されます。
 アスランのオーラ濃度が大幅に薄まった映画の『ナルニア国ものがたり』が、自分の「ナルニア」になった学生にとっては、原作はむしろ違和感を覚えるものでしょう。そして面白いものだけを正直にうけとめる子どもの感性が、それぞれの時代の児童文化を作ってゆくとすれば、原典主義は、子どもの本に関するかぎり、あまり意味がなくなっているような気もします。
 「美女と野獣」の物語がギリシア神話の時代から、どのように再話、再解釈、変容を被りつつ生き残ってきたかを論じた本があります。確かに同じコンテンツでありながら、時代によって教訓のバイアスがかかったり、社会的な解釈がほどこされたり、多様な姿を見せつつ、紆余曲折の末に二十世紀のコクトーやディズニーにたどりつくわけですが、強靱なエッセンスを持つもの(特に神話や昔話的なもの)は装いを変えながらも、しっかりと生きのびてゆく。ディズニーの『美女と野獣』の映画からは、新たにミュージカルも生まれるなど、いまも増殖を続けています。
 まとめてみましょう。活性化しやすい作品とは、人類の普遍的な想像力に触れるファンタジー性を持ち、それらは再解釈の欲望を刺激するため、多くの映像化作品が生まれ、それらに触発されて、また新たなヴァリアントが生じ、そんなふうな時空連続生命体として生き延びてゆくのではないか。その中では最初の「著者」はむしろドミノ倒しのきっかけを与えただけに過ぎないように見えることもある。そういう生き物として、作品を考えてみたいと思います。
 映像化されつづけるフェアリーテイル
 そんななかで、二年ほど前に大学院のゼミで、社会学者ジャック・ザイプスの『魔法にかけられたスクリーン―フェアリーテイル映画の知られざる歴史』(二〇一一)を読みました。ザイプスは昔話と社会の関係の解明を一貫したテーマにしていますが、この本は映画という技術が生まれてから、「白雪姫」「シンデレラ」のような昔話、「青ひげ」のような伝説、あるいは『ピーター・パン』のような古典ファンタジー作品がどれほどさまざまな解釈によって映像に翻案(アダプテーション)されてきたのかを丹念に追ったもので、各時代に支配的なイデオロギーによって、作品のニュアンスが染め変えられてゆくさまを、教室では実際に古い映画をユーチューブ等で鑑賞しながら追うことができました。
 なんで、こんなところが強調されているの?   
 驚きと笑いとたくさんの疑問符を頭に浮かべながら、白黒の映像を見ました。
 そして思ったのは、この映画を見た人は、「こういう話なんだな」と刷りこまれつつ、監督の采配の及びきれなかった微妙な余白の存在をも感じていたのだろうなということでした。映像は文章とは違った意味で、多くの解釈未満のディテールを持っています。そしてそれは原作のさりげない一部の残存であることもあり、無意識に書き換えられたところでもあり、あるいは時代のアイテムにすり替えられた部分でもあり、しかしながら、そういう操作を誘引したこと自体、原作にはやはり強いパワーがあったのでしょう。原典至上という時代ではない、とさきに書きましたが、それでも、尽きせぬ想像力をかきたてる最初の火種として、原作は存在しています。
 時空連続生命体としての作品を考えつつ、その中で、まずは原作にたちかえってみよう。本書はそういう意図から編まれています。実際の映像とともに、楽しんでいただけたら幸いです。

著者プロフィール

井辻 朱美  (イツジ アケミ)  (編著

1955年、東京都生まれ。白百合女子大学教授。『ファンタジーの魔法空間』(岩波書店)にて日本児童文学学会賞受賞。そのほかサンケイ児童出版文化賞、星雲賞などを受賞。日本におけるファンタジー研究の第一人者。おもな著書に『魔法のほうき ファンタジーの癒し』(廣済堂ライブラリー)、『ファンタジー万華鏡』(研究社)など。また訳書も多数。最近の訳書に、K・ヴァレンテ『孤児の物語』1、2巻(東京創元社)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。