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バイオマスエネルギー・ビジネス
- 初版年月日
- 2013年10月
- 書店発売日
- 2013年10月21日
- 登録日
- 2013年9月22日
- 最終更新日
- 2013年11月14日
書評掲載情報
| 2013-12-15 | 日本経済新聞 |
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紹介
バイオマスエネルギーは、設備の設置・維持管理・燃料製造・運搬・販売など多くの雇用を生む。疲弊する地域経済にとって、持続的な恩恵をもたらす効果がある。
目次
まえがき──浦上健司
第1章 太陽の缶詰・バイオマス
お爺さんは山へ柴刈りに
バイオマスエネルギーとは何か
多彩な木質バイオマス
使い勝手のよいバイオガス
第2章 どこまで使えるバイオマスエネルギー
バイオマスは代替エネルギーになるか
「廃棄物処理」から脱却できない日本のバイオマス利用
バイオ燃料はほんとうにエコか?
「バイオマス・ニッポン」はほとんどが効果なし
バイオマス利用の原則
太陽熱利用と相性のよいバイオマス
バイオマス地域熱供給システムのメリット
第3章 拡大するEUの木質バイオマス利用
8割を熱として利用するEU
ドイツにおける『再生可能熱法』の存在
スウェーデンのバイオマスコジェネプラント
ヤナギのエネルギー栽培
オーストリアの小規模地域熱供給システム
日本での展開可能性
第4章 日本国内の取り組み
1 太陽熱とのハイブリッドで給湯と床暖房──屋外設置型ペレット給湯暖房システム
2 間伐材の端材利用木質チップを熱源として活用──和歌山県田辺市龍神村「季楽里龍神」
3 太陽熱と木質チップのハイブリッドシステム──宮城県白石市仙南サナトリウム
4 日本初の木質バイオマス暖房マンション──北海道美唄市のウェストヒルズ
5 日帰り温泉施設に薪ボイラーを導入、燃料には間伐材を活用──東京都檜原村「数馬の湯」
6 “葉っぱビジネス”だけではないユニークな取り組み──超高齢化自治体・徳島県上勝町の挑戦
7 国内初、戸建て住宅団地の木質バイオマス地域冷・温水供給
8 豊富な木質バイオマス資源のフル活用でまち興し──山形県最上町のミニ地域冷暖房
9 札幌中心地の地域熱供給用燃料に木質バイオマス──北海道熱供給公社中央エネルギーセンター
10 国産高効率薪ボイラーの開発で地産地“焼”システムづくり──先進技術に独自色加えて国産化した薪ボイラー
11 合言葉は「ペレットのある生活を文化に!」──北海道十勝地方のユニークなペレット事業
12 バイオマスエネルギーを里山復活のカギに
13 薪、チップ、ペレット、もみがら固形燃料と多様──山形県小国町のバイオマス熱利用
14 過疎地から森林未来都市へ──森林資源を使い尽くす北海道下川町
15 東日本大震災を乗り越え完成した日本最大級のバイオガス施設──仙台市泉区の新興バイオアーク
第5章 バイオマスエネルギー導入成功のカギ
需要と供給の問題
チップは大口熱需要施設を狙え
ボイラーの導入検討時期
ボイラーの選定
チップボイラー導入の地域経済効果──福島県飯舘村
共有林を活用したコミュニティペレット工場──山形県飯豊町
発電は熱需要と組み合わせてコージェネに
燃料供給システムの構築
日本型ペレットボイラーシステムの提案
集合住宅・地域での熱供給システム
小規模熱ビジネスの可能性
少子高齢化・人口縮小時代とバイオマス
あとがき──小澤祥司
前書きなど
あとがき──小澤祥司
幼いころ、家の台所にはかまどがあり、風呂も薪で沸かしていた。かまどはほどなくLPガスのコンロに変わったが、風呂は小学校高学年のころまで薪風呂のままで、とくに農繁期ともなると忙しい家族に代わって風呂を沸かしておくのが仕事だった。新聞紙に火をつけてまず小枝を燃やし、さらに太い薪に火を移して、短時間で風呂を焚き上げていくのはそれなりに技術を要した。冬になれば火鉢と炭の掘りごたつで暖を取った。昭和30年代半ばまでは、田舎はもちろん、都市部でもまだ七輪を使う家庭があったのではなかろうか。
日本は国土の3分の2が森林で覆われる、世界でもまれな森林国だ。これを上回るのはフィンランドとスウェーデンくらいしかない。しかし、人口が多いため国民1人当たりの森林面積はわずか0.2haにとどまる。しかも森林の多くは急峻な山地にある。だから、必ずしも森林資源に恵まれた土地とは言えないのかもしれない。太平洋戦争終結後しばらくは、全国に「はげ山」が広がっていたことは今では想像もできないが、燃料だけでなく建築に船に、さまざまな道具に、そして枝条は肥料にも使われる木材は、実に貴重な資源だったのである。
だから日本では、木を燃料として使う技術、さまざまな道具も発達したのだと思う。その日本が、戦後になって自国内ではほとんどとれない化石燃料にエネルギー源を大きく依存するようになり、身近な資源とのつきあいかたを忘れてしまったように見える。その挙げ句森林は放置され、その弊害が目立つようになった。かつては薪や炭を都市に供給することで収入を得ていた農山村でも、化石燃料に依存し、さらには「オール電化」の家までが建てられるに至ったのは象徴的である。
一方、北欧やアルプス周辺の国々では、この間木質バイオマスをエネルギーとして利用する技術を洗練させてきた。本文中にも書いたが、近年ヨーロッパ製の木質燃料ストーブやボイラーのエネルギー効率はきわめて高く、デザインの優れたものが送り出されている。地域熱供給システムやコジェネレーションのような効率的なエネルギー利用システムも普及が著しい。
しかし、日本では近年になってようやく木質バイオマスの利活用がうたわれながらも、バイオ燃料だの、新素材だの、いろいろ手をかけようとし、その末に研究開発はほとんど成果を上げられず、実証事業もやりっ放しという例が後を絶たない。
日本のバイオマス利用はどうも「ハイテク」に目を奪われすぎではないか。電気にするのもムダが大きすぎる。化石エネルギーに比べるとエネルギー密度が低いバイオマスは、広範囲から集めて、加工を繰り返せば繰り返すほど、エネルギー利得率、すなわち歩留まりが低下していく。まずはその地域で最も効果的な用途=直接燃焼による低温の熱用途に使うことが理に適っている。そして小さいところから始め、身の丈にあったシステムを導入したところが、実際うまくいっている。各地の取り組みを見てそんな思いを強くした。
本書をまとめるにあたり共著者の浦上氏と議論したこともその点であり、ここにあらためて、そのことを強調しておきたい。
本書に紹介した内外の事例の多くは、『季刊ソーラーシステム』(ソーラーシステム研究所)誌上に掲載したものが元になっている。同誌は太陽エネルギーばかりでなく、バイオマスを含む自然エネルギー全般について、研究開発から導入事例にいたるまでを幅広く紹介してきた。残念ながら2012年をもって35年に及ぶ歴史の幕を閉じたが、ここにあらためて同誌の蒲谷昌生編集主幹に感謝する次第である。
おわりに、本書の出版にあたってお世話になった七つ森書館のスタッフの皆さんに厚く御礼を申し上げる。
上記内容は本書刊行時のものです。
