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不滅の名作ミステリへの招待
- 初版年月日
- 2013年4月
- 書店発売日
- 2013年3月25日
- 登録日
- 2013年2月21日
- 最終更新日
- 2013年3月29日
紹介
ミステリ史上に輝く名作を、この一冊に凝縮!
エドガー・アラン・ポーやコナン・ドイルから、トマス・ハリスまで――170年におよぶミステリの歴史から、選び抜かれた42作品。
ミステリタッチのドキュメンタリーや評伝で知られる評論家の中川右介が、密室殺人の部屋の見取り図や、関係する人物の相関図、アリバイ崩しのための時刻推移表などを駆使して、作品の真の読みどころを徹底的に解説した、ヴィジュアル版ミステリ・ガイドブック。
巻末には、江戸川乱歩の「黄金時代のベストテン」から、最近の文藝春秋や「ミステリ・マガジン」のベストテンまで、主要ミステリ・ランキングを付す。
目次
Part1 ミステリ史上に輝く不朽の名作10
「赤毛のレドメイン家」イーデン・フィルポッツ
「黄色い部屋の謎」ガストン・ルルー
「僧正殺人事件」ヴァン・ダイン
「Yの悲劇」エラリイ・クイーン
「トレント最後の事件」E・C・ベントリー
「アクロイド殺し」アガサ・クリスティー
「帽子収集狂事件」ディクスン・カー
「赤い館の秘密」A・A・ミルン
「樽」F・W・クロフツ
「ナイン・テイラーズ」ドロシー・L・セイヤーズ
※ミステリのヒーロー① アルセーヌ・ルパン
Part2 名探偵の活躍する名作
「モルグ街の殺人事件」エドガー・アラン・ポー
「バスカヴィル家の犬」コナン・ドイル
「ブラウン神父の童心」G・K・チェスタトン
「グリーン家殺人事件」ヴァン・ダイン
「ABC殺人事件」アガサ・クリスティー
「エジプト十字架の謎」エラリイ・クイーン
「ユダの窓」カーター・ディクスン
「D坂の殺人事件/心理試験」江戸川乱歩
「獄門島」横溝正史
「刺青殺人事件」高木彬光
※ミステリのヒーロー② ペリイ・メイスン
Part3 ミステリ通を唸らせる名作
「幻の女」ウィリアム・アイリッシュ
「長いお別れ」レイモンド・チャンドラー
「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティー
「死の接吻」アイラ・レヴィン
「火刑法廷」ジョン・ディクスン・カー
「さむけ」ロス・マクドナルド
「深夜プラス1」ギャビン・ライアル
「虚無への供物」中井英夫
「点と線」松本清張
「陰獣」江戸川乱歩
「不連続殺人事件」坂口安吾
「黒いトランク」鮎川哲也
※ミステリのヒーロー③ ジェームズ・ボンド
Part4 映画も楽しめる名作
「マルタの鷹」ダシール・ハメット
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」ジェイムズ・M・ケイン
「ナイルに死す」アガサ・クリスティー
「裏窓」ウィリアム・アイリッシュ
「犬神家の一族」横溝正史
「太陽がいっぱい」パトリシア・ハイスミス
「キングの身代金」エド・マクベイン
「砂の器」松本清張
「ジャッカルの日」フレデリック・フォーサイス
「羊たちの沈黙」トマス・ハリス
主要ミステリ・ランキング
前書きなど
はじめに
本書は膨大な数のミステリから、「古典」を選び、紹介するものだ。
「古典」というと、古臭いもの、つまらないもの、退屈なもの、偉そうなもの、難しいもの、というイメージがあるかもしれない。たしかに、「古典文学」のなかには、読んでも面白くない作品もあるだろう。だが、ミステリというものは、もともと娯楽小説として書かれているものなので、そのなかの「古典」だから、「面白い小説」であることが大前提となっている。
ミステリの特色に、「ベストテン」選びがある。いまや毎年、雑誌やムックでその年に刊行された新作ミステリのベストテンが選ばれているが、それとは別に、それまでに書かれたミステリすべてのなかでのベストテン選びもある。この本は、そうしたいくつかのベストテンでのランキングをもとにして、作品を選び、紹介した。つまり、ベスト・オブ・ベスト・ミステリを選んだものだ。
このように「ベストテン」が選べるのは、ミステリが「閉ざされた文学ジャンル」だからだ。これが「源氏物語以後の日本の全小説から選んだベストテン」とか、「フランス文学ベストテン」となると、分母となる作品数が際限ないので、選ぶのは不可能だ。ミステリは1841年以降の歴史しかないので―そうはいっても、長い歴史で膨大な数の作品があるのだが――全体像の把握が可能だ。
さらに、ミステリはひとつの「様式」を持つジャンルなので、評価の基準が明確となる。そんなこともあって、これまでに何度もいろいろな媒体や人物が「ベストテン」選びをし、その結果、何が名作なのかの共通認識も持たれている。
逆にいうと、誰もが認める「古典」とは、「それを読んでいなければミステリは語れない作品」なのである。
本書は、そういう古典の中の古典についてのガイドブックだ。
一般にガイドブックとは、「これから読む人」のためのものだ。もちろん、本書も「これから古典ミステリを読みたい人」にとって役立つように作ったつもりだが、「古典ミステリをかつて読んだ人」が「古典再読」をするためのガイドとしても楽しめるように作られている。
ミステリ・ファンの中には「ここに登場するミステリなんて、中学時代にほとんど読んだ」という方も多いと思う。かくいう私もそうなのだが、今回、この本を書くに当たり、ここに収録したものはすべて、採用されなかったものも含めれば百冊近くを短期間に集中して読み返したのだが、犯人や結末をしっかり覚えているものは半分くらいだった。ためしに、どの頁でもいいので開いてみて、そこにある登場人物の関係図を眺め、その作品の犯人が誰かを当ててみてほしい。意外と忘れているものだと思う――そんなものを覚えていても、人生で得することは殆ど無いのだから、忘れていて当然だ。もし「読んだはずなのに、犯人を忘れている」作品があったら、ぜひ読み直してみてほしい。数十年ぶりに読む「古典」は、最近のミステリとはまた別の新鮮な楽しみを与えてくれるはずだ。
作品選考は私ひとりで行なったので、当然「なぜあの作品が入っていないんだ」という作品も多いと思う。しかし、少なくとも、本書にある作品が「古典の名に値する名作・傑作ばかりで必読書である」ことに異論を唱える方はいないと信じている。
上記内容は本書刊行時のものです。