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本を読むってけっこういいかも 香山 リカ(著) - 七つ森書館
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本を読むってけっこういいかも (ホンヲヨムッテケッコウイイカモ)

文芸
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発行:七つ森書館
四六判
192ページ
並製
定価 1,300円+税
ISBN
978-4-8228-1021-4   COPY
ISBN 13
9784822810214   COPY
ISBN 10h
4-8228-1021-6   COPY
ISBN 10
4822810216   COPY
出版者記号
8228   COPY
Cコード
C0095  
0:一般 0:単行本 95:日本文学、評論、随筆、その他
出版社在庫情報
不明
初版年月日
2010年10月
書店発売日
登録日
2010年9月27日
最終更新日
2013年2月22日
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紹介

現代人の心を読み解かせたら右に出る者のいない香山リカさんが勧める心を解放する読書術。「目の前のこの世界だけが、唯一無二の現実じゃないんだ。どこかに別の人生、別の世界があるかもしれない」「日常を離れよ、本を読もう」と、スパイスのきいた書評とエッセイで呼びかける。

目次

日常を離れよ、本を読もう

第1章  うつ化社会の処方箋

1 からめとられる性(ジェンダー)と家族
   傷ついたってヘコんだって、誇りだけは失わないもんね
   オンナがひとりで家を建てて何が悪い?
   男のからだを持つあなたは、本当に「男」ですか?
   性愛ゆえに人は頑張り、バカになる!?
   「女の幸せ」を舐めているオメデタイ男たちに
   女性のための性の奉仕隊出動!
   母と娘は対等ではない 一卵性母娘に潜むワナ
   “私がいなきゃ夫はダメなの”を疑ってみる
   暴走妻に引きこもり妻 それは明日の私
   クラゲ家族に土台大家族 おたくはどちら?
   デジタルキッズを襲う心の混乱
   滑稽でちょっぴり哀しい女40代後半胸のウチ
   「老後、怖いよー」なんて、もう言わない

2 心と脳の微妙な関係
   そうだ! 島を買おう 私は王になるのだ
   むき出しの自我を書き尽くす
   あなたが人形に愛されているのかもしれない
   それぞれの場所で見つけるそれぞれのほどよさ
   あなたが見ている赤と私の目に映ってる赤は同じ?
   人が脳を自在に使える日は来るのか?
   あたりまえのココロを認めてあげたい
   ねぇねぇ知ってる? ここだけの秘密なんだけどさ
   男は女より頭がよい? それってホント?
   私もあなたもブッダになれる
   理解不能のモンスターと切り捨てる前に
   天敵はコンプレックスむき出しで八つ当たりする女医!?
   「感動した!」で1票ゲット!? 恐るべし選挙演説のマジック
   消えようとするときにしか存在しない生
   人はなぜ生まれ、どこへいくのか

3 くらべない生き方
   “不思議ちゃん”に自分の夢を仮託する
   大人になりたい、けど、なりたくない
   大物女優のさらりとした手ざわりの日常
   ストーカーと呼ばないで あなたが好きなだけ
   「変態だもの。」カギは開き直ること
   日本よ オレの国よ オレにはお前が見えない
   今日を生き延びる現代の若者のリアル
   殺されていい命なんてあるわけない
   もっとマンガを読もう セコイ大人にだけはなりたくない
   どこか気恥ずかしく避けていたあの時代
   演劇の神が遣わした両性具有の天使
   悪役銀髪レスラー 和服美人にひとめぼれ
   バカげたムダも、ここまでいけば力に
   脳が老化すると、自意識も下がりラクになる
   勝ち負けだけじゃない たまにはリングアウト
   哀しいまでの人間の恐ろしさ
   取るに足らない日常に幸せを見つけた

第2章 生きづらさを感じた時の読書術
     愛すべき等身大の障害者群像
     恐怖や謎や哀切を生む「人の心のあり方」
     団塊世代よ、どこへいった?
     民話の中の“お気に入りのクマ”たち
     「あなた」がいるから「私」は成立する

あとがき

前書きなど

 ……私の通っていた北海道・小樽市の小学校は、図書館が独立した建物で、教室などのある校舎とは渡り廊下でつながっていた。今はすっかり立て替えられてしまったのだが、当時は校舎も図書館も木造で、渡り廊下もそれに続く図書館も、いつも薄暗く湿った空気がこもっていた。子どもたちの中には、「あそこにはオバケが出る」と恐れて図書館には行こうとしない子も多かった。
 私は、本というよりその図書館の雰囲気が好きで、時間ができるとひとりでよく出かけていた。なるべく隅の席に座り、古い木や紙のにおいの混じった湿った空気を吸い込むと、なんだかほっとした。
 そこで読んだ本のことは残念ながらあまりくわしくは覚えていないが、山中恒などの児童文学や創作民話、それからSFの古典が多かった。とにかく、1ページ目から最後まできちんと読み通さなければならないような物語が好きだったのだ。
 物語の場合、最初のページを開いた瞬間から、すぐに別の世界に旅立つことができる。目の前に行ったこともない国や時代の風景が広がる。会ったこともない人や自分とまったく年齢も立場も違う人に自分を重ね、冒険をしたりつらい目にあったり。ときには怒ったり泣いたりもする。
 そして、物語には必ず結末があるので、どんなに気持ちが揺れ動いたり考えがグルグルまわったりしても、ちゃんとどこかに落ち着くことになる。もちろん、その落ち着き先は自分の期待とは違う場合もあったが、それでも「なるほど。そうだったのか」とゴールにたどり着いた満足感、達成感は得られる。
 このように、一冊を時間をかけて読み通さなければ得られないものこそが、読書の本来の醍醐味だと私は思うのだ。
 図書館の席に座ったまま、どこかに連れて行かれて、さまざまな旅を経験して、また元の場所に戻ってくる。その中では、いつもの日々ではできないような感情の上がり下がり、爆発なども味わう。ふだんは眠っている正義感や勇気などが、心の奥底からムクムクとわき上がってくることもあるだろう。
 いや、肯定的な感情ばかりではない。ときには、憎悪、殺意、攻撃衝動や反社会的な欲望などが、読書の最中に目を覚ますこともある。とはいえ、それは本の中の誰かが肩代わりして実行してくれるので、読者はそれに自分を重ねて、追体験すればよいだけだ。現実の誰かに迷惑をかけたり、自分がとがめられたりすることもない。
 このようにして、腰をすえて一冊の本を読む、という読書体験は、私の心をさまざまなところに誘いながら、そこにたまっているストレスや欲求不満などを解放し、硬くなっている部分をやわらかくほぐしてくれる。日常に退屈していたりつらい日々に絶望しそうになったりしていても、私たちは読書を通して自分にこう言い聞かせることができるのだ。
 「目の前のこの世界だけが、唯一無二の現実じゃないんだ。どこかに別の人生、別の世界があるかもしれないじゃないか」
 そんな体験をさせてくれるのは、何も立派な文学作品やノンフィクションだけではない。
 私も大好きなSFやミステリーなどの娯楽作品、自分じゃない誰かが日々の生活や思いをつづったエッセイ、それから子どものころに好きだったキャラクターや動物などが出てくる絵本や児童文学なども十分、おとなの心にうるおいを与えてくれる。
 とくに過去に読んだことのある子どもや少年少女向けの作品を、おとなになってから読み返すことには、大きな意義があると思う。そこで何の屈託もなかった時代にひととき戻り、「そうだ、あれから私はいろいろな経験を経て、そしておとなになることができたのだ」とその先に豊かな未来がつながっていた時代の記憶を取り戻すことで、「だから、これからもさらに歩んで行く力があるはず」と自信を回復させ、心にエネルギーをチャージすることができるからだ。

……本の効用は決して、その内容だけによって与えられるものではない。
 物質としての本、紙としての本、あの重さと厚さを持った本、という要素が、私たちの心とからだを安心させ、ストレスの解消を促進する。それを忘れるべきではない。
 本の歴史は長いが、本のサイズや厚さはだいたい一定だ。四六判とか新書サイズといった言葉を、出版業界以外の人も聞いたことがあるだろう。本のサイズが一定しているのは、おそらく長い歴史の中で、そのサイズのある一定の厚さ、重さを持った紙の束が、私たちの手やからだ全体にとっていちばんしっくり来るものであり、それを手にしたときの心がいちばん落ち着く、ということを、私たちが経験的に知ったからなのだと思う。もちろん、紙を一定のリズムで1ページ、1ページめくる、指先の感触も、私たちの心や脳に対してのポジティブな刺激になっているに違いない。

……「最初のページから最後のページまでを読み通さないと意味のない本」や紙の本は、決してなくならない。もっと言えば、それらがもう一度、見直される日は必ずやって来る、と私は思うのだ。
 それは、読書によるストレス解消や癒し効果を信じる精神科医としても、そしてあの湿っぽい木造の図書館にこもることで心が救われるのを感じていた、元・読書好きの少女としてもである。「書を捨てよ、街に出よう」という本を出した戯曲家がいたが、今こそ私たちはこうつぶやいてみるべきではないだろうか。
 「日常を離れよ、本を読もう」

(「日常を離れよ、本を読もう」より)

著者プロフィール

香山 リカ  (カヤマ リカ)  (

精神科医・立教大学現代心理学部映像身体学科教授。1960年7月1日北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒。学生時代より雑誌等に寄稿。その後も臨床経験を生かして、各メディアで社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍し、現代人の“心の病”について洞察を続けている。専門は精神病理学だが、テレビゲームなどのサブカルチャーにも関心を持つ。連載に、北海道新聞(香山リカのひとつ言わせて)、中日新聞(香山リカのハート・ナビ)、毎日新聞・東京(ココロの万華鏡)、山陽新聞(時評)、創(「こころの時代」解体新書)、Educo(いまどきコドモ事情)、Magazine ALC(香山リカの通信講座の心理学)、月刊日本語(ブックレビュー)など。著書に、『人生の法則』(KKベストセラーズ新書)『しがみつかない生き方』(幻冬舎新書)『チルドレンな日本』(佐高信との共著)『対論 生き抜くこと』(雨宮処凛との共著、共に、七つ森書館)『ぷちナショナリズム症候群』(中公新書ラクレ)『〈私〉の愛国心』(ちくま新書)他多数。

上記内容は本書刊行時のものです。