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ワーキングプアの反撃
- 初版年月日
- 2007年6月
- 書店発売日
- 2007年6月27日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
家出とリストカットを繰り返し、若者の雇用や自殺について考える、元右翼にして作家の雨宮処凛に、常に弱き者に寄り添う弁護士・福島みずほが訊く、若者の「生きづらさ」と「ワーキングプア」を生み出す格差社会の構造。それは、かつての女性たちの置かれていた情況に重なる。
目次
まえがき 福島みずほ
1章 たまたま右翼に心を奪われて
元右翼と聞くとビックリしますが……
原体験としてのいじめ
世間には自民党支持の人もいるんだ!
「世の中おかしい」と思うあなたがおかしいといわれて
思想にしばられる窮屈さ
武装しなくては生きていけない
子どもには逃げ場がない
右左なく心のひだに可能性を広げる
ほんまもんの政治をやろう
表現の自由の圧殺は許さない
「希望は戦争」まで追いつめられて
女・子どもは黙っとれ
愛国は食えない、仕事をくれ
下へ下へと牙をむく
社会が自分に閉じている
2章 プレカリアートの逆襲
過労死させられそうになった弟
偽装請負を合法にしろってことですか?
女性はずっとワーキングプア
子どもを産みたくても産めない
都市をさまよう「ネットカフェ難民」
生け贄にされるフリーター
風俗ではじめて人間らしい生活が
つけこまれる働きがい
異なるいのちの値段
百二十年もまえの要求が、いま切実にほしい
未来がないまま働きつづけるほど辛いことはない
親の遺産を食いつぶす
最低賃金時給千円を保障せよ!
若者の雇用は世界の課題
フリーターはサマワへ行け!?
みんなつながれ! 「自由と生存のメーデー」
若者への勘違いバッシング
規制緩和が労働条件を悪くした
あきらめからのLOHAS
3章 生きてていいんだ
あなたのせいではない
自分も元気になって、人も応援したい
誰もがマイノリティー
生活レベルで憲法を考えてみる
戦争がはじまる
究極の不条理・戦争
元フリーター志願兵戦場へ行く
こちら新製品、インテリジェントで環境に優しく、
小型で有能な武器です。
アウシュヴィッツ化する日本
階級でわかれるゲーテッドシティー
「美しい国」に人はいない
いす取りゲームに負けないための教育
すりこまれたプライド
一度レールから外れると元に戻れない
いかに死なせないか
女は条件付でなければ生きていけない
こわれ者、集まれ!
とりあえず、足を運んでみる
国家になんか殺されない!
役立たずはのさばるぞ
自由と生存のメーデー07 プレカリアートの反攻
──メーデー宣言集会にて 菅本翔吾
あとがき 雨宮処凛
前書きなど
あとがき 雨宮処凛
対談を終えて、状況がまたひとつ、進んでいることに気づいた。
例えば、最近、フリーターユニオン福岡の集会とデモに参加してきた。彼らは労働組合でありながら、「生存組合」という言葉も使っている。生存のための組合。この国で不安定な若者が生きるためには、「悪いのは自分だけじゃない」と言い合う場、仲間こそが必要なのだ。その意味で、「生存組合」という言葉は生きづらい時代を象徴するかのようだ。
誰かとつながらず、自分ひとりで自らを責めてばかりいると、自分自身に殺されてしまう国。二〇〇二年から十代、二十代の死因のトップを独走するのは「自殺」だ。このことと、「失われた十年」は決して無関係ではないはずだ。誰も生まれてくる年を選べない。たまたま一九九〇年代前半以降に就業年齢を迎えたというだけで、なぜこれほどの辛酸を舐めなければならないのか、そんなケースを見すぎてきた。「働くこと」は「生きること」とあまりにも密接にかかわっている。その「働くこと」が崩壊した地平では、「生きること」そのものが破壊される。就職で百社落ちたという自己否定感、フリーターで将来が不安で生きていたくないという切実な声、そしてそんな中、「自己責任」を無理矢理とらされ自ら命を絶った若者たちを思い出すたびに、なぜ、彼らが死ななければならなかったのか、そればかりを考えてきた。
若者が求めているのは些細な、本当に、涙が出るほどささやかなものだ。例えば最低時給千円。これはそんなに法外な要求だろうか? 働いたら、せめて自立して生きていけるだけの賃金をくれ。有給休暇をくれ。過労死に怯えないで済む人間的な労働時間をくれ。安定した仕事をくれ。二十一世紀になって、なぜこんなささやかな要求を、声を大にして言わなければならないのか。
若者たちのあまりにもささやかな要求に比べて、安倍政権や財界の強欲ぶりには目を見張るばかりだ。至上最高の利益を連発する大企業の裏で、食べるにこと欠くような日々を強いられる人々。今年の三月、キャノンのある工場に派遣されている派遣労働者の時給は一斉に百円、下がった。多くの若者が肩を落とし、そして「今のままでも金銭的にやっていけないのに」と職場を去った。これが「景気回復」の実態だ。
「フリーター」という言葉を、この対談では多用した。しかし、それはいわゆるパート・アルバイトだけではない。今や、二十四歳以下のふたりにひとりが非正規雇用。全世代では三人にひとり。正社員だって成果主義の中、安穏としてはいられない。ノルマ未達成の懲罰として個人事業主に変更させられるケースもある。いきなり給料が完全歩合制となり、契約が取れなかったことから、毎日出勤しているのに給料が本当にゼロ円、という中年男性に最近、会った。つまり、全世代、全職種、全雇用形態が「フリーター化」しているのだ。だからこそ、フリーター問題は誰にとっても他人事ではない。しかし、フリーターバッシングはいまだある。たまにフリーターを馬鹿にする派遣社員などがいるが、内閣府の定義では、派遣社員も立派な「フリーター」だ。
フリーター的働き方をしいられる人々が多い今、私たちより上の世代に言いたいことは、どうか安易な「若者バッシング」にのらないでほしい、ということだ。「最近の若者は」という古代から言われてきたこの言葉がフリーター問題と絡めて語られる時、それは当事者を「自己責任」の中にがんじがらめにし、そうして若者の「モラルの低下」「公共心の欠如」という論調にのってしまった途端、「親父の勘違い」から始まる「憲法改正」への流れに絡め取られてしまう、という道筋が既に用意されている。そんな落とし穴が、いたるところに口を開けている。
数度の対談の途中、新宿で「自由と生存のメーデー」が行われた。ただ「マトモな働き方」「生きること」を求めたこのデモで、昨年、三人の逮捕者が出た。しかし、今年はひとりの逮捕者も出ず、大盛況でデモを終えることができた。その背景には、二時間にわたるデモを一緒に歩いてくれた福島みずほさんの存在がある。このことを、多くの参加者が知っている。
この機会を与えてくれた福島みずほさん、そしてこの本にかかわってくれたすべての方々に、最大級の感謝を込めて。
二〇〇七年六月五日
上記内容は本書刊行時のものです。
