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わたしがいる あなたがいる なんとかなる
「希望のまち」のつくりかた
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2025年8月7日
- 書店発売日
- 2025年8月9日
- 登録日
- 2025年6月19日
- 最終更新日
- 2025年9月26日
重版情報
| 2刷 | 出来予定日: 2025-10-01 |
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紹介
生きる意味のない“いのち”なんて、あってたまるもんか
困窮者支援のその先へ、誰もが「助けて」と言い合える居場所、
「希望のまち」が誕生する
北九州市で生活困窮者を支援するNPO 法人抱樸(ほうぼく)。1988年12月から路上で暮らすホームレスに弁当を配ることからスタートし、現在は居住や就労、子ども・家庭、障害福祉支援など29 の事業を展開する。
著者は抱樸理事長で牧師の奥田知志氏。奥田氏と同法人の職員が出会った路上に生きる人や生きづらさに苦しむ人とのエピソード、新型コロナを経て現場で感じる社会の変化を綴る。単身世帯が増え、孤立が深まる中で自己責任論が蔓延、誰もが苦難に陥る可能性が高まっている。
こんな状況の中、2026 年秋、三十数年の活動の集大成ともいえる「希望のまち」が完成する。この“まち” はどんな人も一人にしない“なんちゃって家族” になれる場所。分断と格差が広がり、偏見と差別が交じり合う社会に一石を投じる試みが始まるのだ。抱樸が理想とする「希望のまち」が生まれるまでの歩みと、未来への提言が満載。北九州の武内市長と小説家の町田そのこさんとの鼎談も収録。
帯コメントは思想家の内田樹さん、作家の永井玲衣さん。
目次
2P はじめに
8P きぼうのまち 寺尾紗穂
17P 第一章 わたしがいる あなたがいる―支え合う現場から
69P 第二章 現実を見つめ、希望を見い出す
123P 第三章 多くの人との関わりがあったからこそ
171P 第四章 なんとかなる―「希望のまち」のつくりかた
268P 鼎談 北九州が「なんちゃって家族」になるために
北九州市長 武内和久氏×小説家 町田そのこ氏×NPO法人抱樸理事長 奥田知志
286P おわりに
290P 主な参考文献
前書きなど
18歳、1982年春、大学生になった僕は、先輩に連れられ大阪にある日雇い労働者のまち「釜ヶ崎」(寄せ場)と出会う。サラリーマン家庭で苦労もなく育った僕は、「社会は安全で公平、そして豊かだ」と疑ってもいなかったので、この出会いは衝撃だった。「何も知らなかった」という自責の念もあったが、それ以上に人情にあふれ、苦労の中で生き抜く人の姿は僕に勇気を与えてくれた。路上で亡くなる人に思いを馳せる一方、「なぜ、こんなことが」という怒りを含む「問い」を持つようにもなったのもこの頃である。
25歳、1990年春、北九州市に住むようになり、路上生活者への支援活動に参加した。当時はホームレスに関する法律も制度もなく、手探りの活動。「この人には何が必要か」と共に「この人には誰が必要か」。やはり「問い」が道を拓いてくれた。当初は、侃々諤々、行政ともずいぶんやり合った。
35歳、2000年暮れにNPO法人化した時、僕は「一日も早い解散を目指す」と宣言。最終的に「このような活動が不要な社会を創る」ことが目標だったからだ。しかし、リーマンショックで明らかになった新自由主義の凶暴さなど、現実を見るにつけ、容易に解散できないことも知った。自己責任が必要以上に強調され、「助けて」と言えない人が増えている。勇気を出して「助けて」と言えたとしても「他人に迷惑をかけてはいけない」と突き放されてしまう。「自分だけ良ければいい」という思いが世界中に広がる時代に、誰も取り残されない、ありのまま受け入れ合う、弱さを大切にする。そんな社会を創ろうと長年取り組んでいる。
僕は東八幡キリスト教会の牧師でもある。長らくキリスト教は「クリスチャンにならないと救われない」ことを前提に伝道をしてきた。「それは差別だよね」と教会メンバーと話し合い、「すべての人は神の家族。すべての人は既に愛されている」と宣言。ホームレス経験者、苦しい子ども時代を生き抜いた若者、刑余者など、生きづらさを抱える人々が支え合い生きていく姿に僕は感動している。ここではさまざまな講師を迎える「荒生田塾」や時々「語り場Bar」という催しなども行い、地域に開かれた教会として運営している。
現在、抱樸は子ども・世帯支援、居住支援、就労支援、更生支援、各種福祉事業など多岐に渡る活動をしている。自立支援の現場では社会復帰が課題となるが、はたして「復帰したい社会なのか」との「問い」が常に僕の中にくすぶり続けていた。
56歳、2019年秋、暴力団本部事務所が解体撤去されることを知った。この「問い」への応答としてここに新しいまちを創ろう! というプロジェクトがスタートした。人の生きづらさや社会の矛盾を顕在化してきた、この場所を「希望のまち」に変えるのだ。
61歳、2025年新春、予定より二年以上遅れたが、多くの人々の支援と参加をいただき、ついに着工することができた。心から感謝申し上げる。
62歳、2025年夏、本書刊行。これは僕が日々の「問い」の中で考えたこと、生きづらさや苦難を抱える人々との出会い、その中で与えられた言葉をまとめたものである。さらに、「希望のまち」とは何かについても触れている。先行き不透明な時代を生きる人々が「なんとかなる」と呼応し合うまちを創り、どんな人も取り残すことのない地域共生社会を実現する第一歩にしたいと思っている。本書が、その一助になれば幸いだ。
なお、この本の収益は「希望のまち」のために使わせていただく。
上記内容は本書刊行時のものです。



