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家族の命運 レオノーア・ダヴィドフ(著) - 名古屋大学出版会
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家族の命運 (カゾクノメイウン) イングランド中産階級の男と女 1780~1850 (イングランドチュウサンカイキュウノオトコトオンナ)
原書: Family Fortunes: Men and Women of the English Middle Class 1780-1850

歴史・地理
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A5判
重さ 848g
520ページ
上製
価格 7,200円+税
ISBN
978-4-8158-0955-3   COPY
ISBN 13
9784815809553   COPY
ISBN 10h
4-8158-0955-0   COPY
ISBN 10
4815809550   COPY
出版者記号
8158   COPY
Cコード
C3022  
3:専門 0:単行本 22:外国歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年8月10日
書店発売日
登録日
2019年6月27日
最終更新日
2019年7月31日
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書評掲載情報

2019-12-08 読売新聞  朝刊
評者: 藤原辰史(京都大学准教授、農業史研究者)
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紹介

現在、没落を言われる「中間層」は、どのように形成されたのか。――経済・政治・社会が急激に変動する産業革命の中心国を舞台に、家族とジェンダーに注目し、そのイデオロギー・制度・実践を、さまざまな男女の生き様を通して、鮮やかに描き出した名著、待望の邦訳。

目次

謝 辞
凡 例

プロローグ
イングランドの中産階級とは何であったのか
概念と方法

場面設定
場所
登場人物

第I部 宗教とイデオロギー

第1章 「必要なただひとつのこと」
 ―宗教と中産階級―
国教会と非国教会の活動
福音主義的な信仰復興運動と敬虔なキリスト教仰
宗教的な共同体

第2章 「あなたがたは皆、キリスト・イエスにあって一つだからである」
 ―男性、女性、宗教―
男性性に関する教義
女性性に関する教義
聖職
牧師夫人
ジョン・エンジェル・ジェイムズ
教会組織
男女の平信徒

第3章 「徳を養う場所」
 ─家庭重視イデオロギーと中産階級―
キャロライン王妃事件
中産階級の読み手と書き手
ウィリアム・クーパーとハナ・モア
領域の分離について論じた地方の著述家たち
一八三〇年代から四〇年代にかけての家庭重視イデオロギー

第II部 経済構造と経済機会

第4章 「中庸なる資産」
 ―男性、女性、財産―
企業組織
土地と資本
企業の資金調達
家族の扶養
経営体、家族、友人の相互依存
企業における婚姻の役割
企業経営のための訓練
企業からの引退

第5章 「男なら行動しなければ」
 ―男性と企業―
中産階級男性と職業
「健全な商業教育」の探求
商取引
銀行と銀行業
製造業
農業経営
専門職
給与職

第6章 「隠れた投資」
 ―女性と企業―
女性と財産
家族経営体への女性の貢献
女性の教育とその効果
教師としての女性
宿屋経営者としての女性
商売をする女性
女性が置かれていた経済的な周縁の場
女性、男性、職業アイデンティティ
どうやって女性たちは生き延びたのか

第III部 日常生活――作動するジェンダー

第7章 「わが家族は小世界」
 ―家族の構造と関係―
家族形成における婚姻の役割
父親であること
母親であること
子どもたち
兄弟姉妹
親族の役割

第8章 「わが炉辺」
 ―中産階級の家庭の創造―
家庭とは何だったのか
仕事からの家庭の分離
庭園の意味
家の間取り
家の切り盛り
使用人の問題

第9章 「そびえたつ松と絡みつくブドウの木」
 ―中産階級のなかでジェンダーを受け入れる―
作法と上品さ
性的欲望にたいする態度の変化
移動の自由とジェンダー
ジェンダーと社交の催し
外見としてのジェンダー

第10章 「向上のとき」
 ―男性、女性、公共圏―
自発的結社
慈善団体
余暇と娯楽
男性、女性、市民権

エピローグ

原著第二版に寄せて
原著第三版に寄せて
附 録1
附 録2
訳者あとがき

主要参考文献
図表一覧
事項索引
人名索引

前書きなど

『家族の命運』は、一八世紀末から一九世紀中葉にかけてのイングランドの中産階級のイデオロギー、制度、実践に関する書物である。本書の関心は男女双方に向けられており、急激に経済、政治、社会が変動する時代の家族の位置づけとジェンダーの違いの線引きを検討している。主たる議論の前提に置かれているのは、ジェンダーと階級とはつねに連動して機能する、つまり階級意識はつねにジェンダー化された形態をとるという想定である。もちろん、階級とジェンダーの接合は、決して完全に調和したものにはならない。実際、階級的な志向性と女性のアイデンティティとのあいだの緊張関係は、一九世紀中葉のフェミニズムを発展させた強固な推進力のひとつであった。

私たちは、中産階級の人びとが世界を公的領域と私的領域に分割したことにとりわけ注意を払っている。本来これは国家と私的利害との対立についての政治論争ではなく、道徳や情動の領域と、とりわけ市場の力として認識される合理的活動の領域とのあいだの常識的な区分のことである。私たちがこうした公私の分断を超えて試みるのは、「ひとかどの人物」となる、つまり富や権力や影響力を根拠に独立した個人として認められようとした中産階級の男性が、現実にはいかに立身出世を支える家族や女性による支援のネットワークのなかに組み込まれていたのかを示すことにある。

中産階級の形成に関する多くの側面を探究するとはいえ、本書は中産階級とほかの階級との関係についての研究ではない。それは重要であるが、また別の物語となる。本書は雇用主としての中産階級の男性や、労働現場における諸関係、労働過程の組織についてはほとんど語ることはない。むしろ、資本主義的企業の発展にとって、家族内部の性別分業がその中心的位置を占めていたことを論じる。本書はまた、性差に関する新たな概念がどのように既存の伝統のうえに構築されたかを突きとめ、そうした考え方の社会的および制度的な影響を詳細に描きだすものでもある。……

[「プロローグ」冒頭より/注は省略]

著者プロフィール

レオノーア・ダヴィドフ  (レオノーア ダヴィドフ)  (

(Leonore Davidoff, 1932-2014)
エセックス大学社会学名誉教授(故人)。著書にWorlds Between: Historical Perspectives on Gender and Class (1995), Thicker than Water: Siblings and Their Relations, 1780-1920 (2012) など。1989年にはGender and History誌を創刊するなど、長年にわたってイギリスの女性史、家族史、ジェンダー史研究をリードし、「ジェンダー史発展の母」と称えられた。

キャサリン・ホール  (キャサリン ホール)  (

(Catherine Hall, 1946-)
ロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジ歴史学名誉教授。著書にWhite, Male and Middle-Class: Explorations in Feminism and History (1992), Civilising Subjects: Metropole and Colony in the English Imagination, 1830-1867 (2002) など。19世紀から20世紀にかけてのイギリスを帝国、ジェンダー、階級を基軸として捉えなおす研究で知られる。

山口 みどり  (ヤマグチ ミドリ)  (

大東文化大学教授。

梅垣 千尋  (ウメガキ チヒロ)  (

青山学院女子短期大学准教授。

長谷川 貴彦  (ハセガワ タカヒコ)  (

北海道大学大学院教授。

上記内容は本書刊行時のものです。