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子どもに「ホームレス」をどう伝えるか 生田 武志(著) - 一般社団法人ホームレス問題の授業づくり全国ネット
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子どもに「ホームレス」をどう伝えるか いじめ・襲撃をなくすために

四六判
縦210mm 横148mm 厚さ12mm
重さ 281g
216ページ
並製
定価 1,200円+税
ISBN
978-4-8118-4071-0
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年7月
書店発売日
登録日
2013年6月28日
最終更新日
2014年8月27日
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紹介

『どうしてあんなところに人が寝ているの?』子どもの疑問になんと答えますか。大人から植えつけられた偏見によって起こる「ホームレス」襲撃。大人は「ホームレス」とどのように向きあい、子どもたちに伝えればいいのか。問題を丁寧に解きほぐし、捉えなおす実践の記録。中高生や教員向けに行なわれた講演3本を収録し、「すぐに使える発問例集」や資料も充実。

目次

はじめに

高校生へ 「貧困」と「野宿」の社会的背景…………………… 生田武志
教職員へ 「ホームレス」襲撃は路上の「いじめ」………………… 北村年子
中学生へ 生きててくれてありがとう──襲撃・いじめをなくすために……北村年子

授業で使える 資料集

前書きなど

「どうしてあんなところに人が寝ているの?」
 駅や地下の通路、公園や河原で、ホームレス状態の人の姿を見た子どもが、聞いてきた
ら、なんと答えますか?
 多くの子どもたちが、身近な大人からこんなふうに教えられています。
「がんばるのがイヤな、なまけ者なんだよ」「こわい人。あぶないから近よっちゃだめよ」 
「働きたくなくて、好きであんな暮らしをしているのさ」
 そして、毎日のように子どもたちが、ホームレス状態の人に石を投げ、花火を打ちこみ、暴行する事件が、日本中のいたるところで起こりつづけています。
 巻末の「野宿者襲撃事件・略年表」を見ていただければ、一目瞭然です。これは、じっさいに起こっている事件の、ほんの一部です。1983年、10代少年たちによる「横浜浮浪者殺傷事件」から30年、野宿の人びとは、ただ「ホームレス」だという理由だけで、子どもたちに襲われ、殺されつづけているのです。「ホームレスは社会のクズ、役立たず」
「きたないゴミをそうじしただけ」「大人はしからないと思った」と、子どもたちは語っています。それは、わたしたち大人・社会、とりわけ教育の責任ではないでしょうか。
 「人権」問題は数あれど、教育現場でここまで放置され、無視されつづけてきた被差別の問題は、ほかにありません。たとえば「障がい者」とは目をあわせるな、近づくな、と教えたらどうなるでしょう。「外国人」だからといって、いきなりエアガンで打ち、火を放つ事件が起こりつづけたら、大問題でしょう。野宿者の小屋や段ボールハウスは、しょっちゅう、子どもたちに放火されています。殺人未遂となる大事件でも、警察も、学校も、家庭も、地域も、政治も、マスコミも、本気で向きあい解決しようとはしてきませんでした。
 だれが「ホームレス」を排除し、差別しているのでしょうか。いまなお、くりかえされる暴行を止めようとせず、無視し、スルーしているのは、だれでしょう。無関心こそ暴力です。
「ホームレス襲撃」は、子どもたちによる路上の「いじめ」です。それを見て見ぬふりしている大人たちは、「いじめの傍観者」と同じです。
 この本は、「ホームレス」について、正しく理解し、子どもたちに伝えようとする人、教師、親・保護者、子どもに関わるすべての大人たちのために、つくりました。そして、中高生世代の子どもたち、若い人たちにも、ぜひ読んでもらえるよう、ふりがなもつけました。
 まず、大人にも子どもにも、知っておいてほしいこと。
 「ホームレス」とは「人」を表わす言葉ではありません。
 生まれつき「ホームレス」という人種や人格があるわけでもありません。もともとの英語の「homeless」は、「状態」を表わす言葉であり、「安全に住めるところがない状態」のことをいいます。ですから、ネットカフェなどで寝泊りしている状態も、震災や原発事故で避難生活を強いられている状態も、住みこみ労働や会社の寮で暮らしている状態も「安心できる住環境にない状態」として、「homeless」と呼ばれます。
 つまり、あなたにも、わたしにも、家族にも、友人にも、だれにでも、いつ起こるかもしれない問題であり、けっして他人事ではないテーマなのです。
 子どもたちの野宿者襲撃をなくすために、という目的はもちろん、「ホームレス問題の授業」に取りくむ意義は、たくさんあります。
①「ホームレス」についての無知と偏見を解消することで、ホームレス状態にある人びとへの差別・攻撃・排除を、理解・支援・共生の意識へと転換していく。
②「路上のいじめ」とともに「教室のいじめ」の解消をめざし、あらゆる暴力を防止する。
③子どもたちが、暴力の加害者にも被害者にも傍観者にもならない、安全で安心な教室(ホーム・ルーム)づくりをめざす。
④学校、家庭、地域のなかで、居場所のない「ホーム」レス状態にある子どもに、関心をむけ、孤立させず、見て見ぬふりしないで、それぞれに何ができるか考えあう。
⑤特定の子どもを「困った子」としてみなし、排除するのではなく、助けが必要な「困っている子」としてとらえ、「困っている状態」を改善・解決する道をいっしょに模索する。
⑥「ホームレス」の人びとと子どもたちが、人と人として出会い、肯定的な交流を体験することで、おたがいの存在を認めあい、エンパワーされ、共感性と自尊感情を高めあう。
⑦教師・大人も、自分の「困っている状態」を「自己責任」として抱えこまず、「助けて」がいいあえる人間関係の構築をめざし、「関係の貧困」から脱却する。
⑧ 不況、天災、人災、さまざまな社会の変動、予期せぬ人生の不運のなかで、将来もし自分がホームレス状態になったとしても、生きぬくための知恵や知識、私的・公的セーフティネットについてなど、人生に役立つ情報を学ぶ絶好の機会とする。
⑨教師・大人自身が、ホームレス問題の授業を実践する過程で、学校・社会にまだまだ根強い「努力主義」「自己責任論」の壁に気づき、内なる固定観念を問いなおされ、成長し、人間の幅が広がり、(たぶん)人生がいろいろおもしろくなっていく。
 などなど。そんなおもしろさに、ハマってしまった、全国各地の教師、支援者、仲間たちがつながりあって、生まれたのが「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」です。
 この本を手にしてくださったあなたも、ぜひ、仲間になっていただけたらうれしいです。
 ようこそ、「ホームレス問題の授業づくり」へ。
 さあ、最初の一歩を踏みだし、ここからいっしょに、階段をのぼっていきましょう。

      ホームレス問題の授業づくり全国ネット代表理事 北村年子

著者プロフィール

生田 武志  (イクタ タケシ)  (

一般社団法人ホームレス問題の授業づくり全国ネット代表理事。『フリーターズフリー』編集発行人。野宿者ネットワーク代表。大学在学中から釜ヶ崎の日雇い労働者・野宿者支援活動にかかわる。2000年、群像新人文学賞評論部門優秀賞受賞。2001年から各地の小中学・高校などで「野宿問題の授業」を行なう。著書『<野宿者襲撃>論』(人文書院)、『ルポ 最底辺 不安定就労と野宿』(ちくま新書)、『貧困を考えよう』(岩波ジュニア新書)、『おっちゃん、なんで外で寝なあかんの? こども夜回りと「ホームレス」の人たち』(あかね書房)など。

北村 年子  (キタムラ トシコ)  (

一般社団法人ホームレス問題の授業づくり全国ネット代表理事。ノンフィクション作家。自己尊重トレーニングトレーナー。子どものいじめ・自死をなくしたいと十代200人を取材したデビュー作『少女宣言』が話題をよぶ。1990年、釜ヶ崎「こどもの里」に出会い野宿者支援にかかわる。2010年、女性人権活動奨励賞・やよりジャーナリスト賞受賞。著書『「ホームレス」襲撃事件と子どもたち いじめの連鎖を断つために』(太郎次郎社エディタス)、『ま、いっかと力をぬいて 幸せなママになるレッスン』(赤ちゃんとママ社)など。

一般社団法人ホームレス問題の授業づくり全国ネット  (ホームレスノジュギョウヅクリゼンコクネット)  (

一般社団法人ホームレス問題の授業づくり全国ネット(略称:HCネット)は、子どもや若者たちによる「ホームレス」襲撃を防ぐために、支援者・教員・ジャーナリストなどによって2008年4月に結成された団体です。「襲撃・いじめ」といった、子どもたちとホームレスの人々の「最悪の出会い」を、希望ある「人と人としての出会い」へと転換していくために、襲撃・いじめ問題を解決するための取りくみや、学校での「ホームレス問題」の授業・教育活動の実施、教材作成などに取りくんでいます。
http://class-homeless.sakura.ne.jp/

理事 飯田 基晴( ドキュメンタリー映画監督)
稲葉 剛 (NPO法人自立生活サポートセンター・もやい)
小野 祥子(中学校・高校・大学講師)
荘保 共子(こどもの里館長)
鈴木 隆弘(高千穂大学人間科学部准教授)
林 真未(ファミリーエデュケーター、公立小学校教員)
吉岡 政子(ふるさとの家)
事務局 安田 和人(キリスト教会牧師)
監事 松井 克行(西九州大学子ども学部准教授)

上記内容は本書刊行時のものです。