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「ホームレス」襲撃事件と子どもたち
いじめの連鎖を断つために
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2009年7月
- 書店発売日
- 2009年7月13日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2021年9月4日
紹介
「道頓堀事件」から14年。子どもたちによる「ホームレス」襲撃はやまない。ときに命さえ奪う弱者嫌悪の根源に迫り続けたルポ。川崎の教育現場での取り組みを第 II 部に、この10年の事件と新たな取り組みを第 III 部に。前著に大幅加筆した完全保存版。
目次
はじめに
■第 I 部 〈ゼロ〉
──大阪「道頓堀川ホームレス殺人」事件 1995─1997
プロローグ
i“事件”の原風景
被災地・神戸の金髪少年
道頓堀の“橋の子”たち
「人間」の街・釜ケ崎
路上に生きた命
ii“弱者いじめ”の連鎖
“いじめ連鎖”という地獄
奪われた自尊感情
拘置所から届いた手紙
いじめる側の真意
強者からの断罪
いのちへの謝罪
■第 II 部 野宿者と子どもたち
──川崎の取りくみ 1995─1997
路上から教室へ
大人たちの自問
子どもたちの本音
共生の場
■第 III 部 いじめの連鎖を断つために
──いま、なにができるか 1997─2009
二〇〇九年、冬
暴発する怒り
殺したものと殺されたもの
自尊感情の回復
いま、私たちにできること
■エピローグ 大切なただ一人のきみへ
あとがき
巻末資料──野宿者襲撃事件・略年表
前書きなど
はじめに
「ホームレス」と「子ども」。そこには、どんな接点があるのでしょう。
「ホームレス襲撃」は、子どもたちが加害者となる、「路上のいじめ」です。
たとえいま、ホームレス問題に関心がないという人でも、子どもを育てている親や教師、子どもたちを加害者にも被害者にもしたくないと願うすべての人に、ぜひこの本をとおして、「ホームレス」と「子ども」をめぐる現状を、他人事ではない問題として、ともに見つめ、いっしょに考えていただけたら幸いです。
本書は、1997年10月に刊行された前著『大阪・道頓堀川「ホームレス」襲撃事件──“弱者いじめ”の連鎖を断つ』(太郎次郎社)に、大幅な書き下ろしを加えた、大増補新版となります。
第Ⅰ部“〈ゼロ〉──大阪「道頓堀川ホームレス殺人」事件”では、前著の内容に一部加筆し( 65~71ページ、238ページ)、あとは、ほぼそのまま前著を再録しました。
第Ⅱ部“野宿者と子どもたち──川崎の取りくみ”は、97年前著の刊行につづく「第2弾」として単行本化する予定だった内容を、いまここに収録することができました。
全国初のその川崎市の教育の取りくみは、十数年たっても、いまだ類をみない、画期的で貴重なものだと痛感しています。「派遣切り」や貧困問題への関心とともに、ホームレス問題が注目されるようになったいま、さらに子どもたちの「ホームレス襲撃」問題がより深刻化するなか、ぜひとも、この〈川崎の取りくみ〉の実践記録を、全国の学校・教育現場で、生かしていただきたいと強く願っています。
第Ⅲ部“いじめの連鎖を断つために──いま、なにができるか”は、2009年時点で、新たに書き下ろしたものです。この14年間の襲撃事件だけでなく、86年、中2少年の「葬式ごっこ・いじめ自殺」の取
材から、子どもたちの現場を歩くようになった私が、「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」を立ちあげるにいたった現在までの、23年間の軌跡をあらためてたどり、総括するものになりました。
こうして、三冊分の内容を一冊にもりこんだ、厚い本になりました。長い旅になりますが、ご同伴いただけたら幸いです。
なお、「ホームレス」という用語についてですが、これは本来、居住権が保障された「安心できる適切な住環境にない」という“状態”をさす言葉であり、これまで差別的に使われてきた「浮浪者」「ルンペン」などのように“人”をさす言葉では、ありません。しかし日本では、「ホームレス」もまた特定の人びとへの蔑称として使われていたり、ホームレス問題が、社会の問題としてではなく、個人の「人間性・自己責任」の問題として切りすてられている現状があります。
本書では、基本的に、いま野宿生活(ホームレス)状態にある人として、野宿(生活)者、野宿の人(仲間)などと表現し、それ以外で、状態ではなく人をさす用い方の場合は「ホームレス」として括弧書きで表
記しました。また、文中の年齢・肩書き、および用語表記などは、取材当時のものです。
この本を手にしてくださったあなたが、ホームレスな人たち、子どもたちと、ともに幸せに生きる仲間として、いまここから出会っていただけたなら、それ以上の喜びはありません。
上記内容は本書刊行時のものです。