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体育・スポーツ史にみる戦前と戦後
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年6月
- 書店発売日
- 2013年6月25日
- 登録日
- 2013年4月2日
- 最終更新日
- 2013年7月9日
紹介
19名の体育・スポーツ史の研究者が、長年にわたり関心を抱き、研究を蓄積してきたテーマについて書き下ろした現時点での学術研究の成果。
日本体育・スポーツ史を中核に据えながら、アジアやヨーロッパの体育・スポーツ史研究の内容へと架橋。また、スポーツ産業史や社会におけるスポーツの位置づけから体育史への学術的貢献を意図した論考や、人物史研究、地方史研究、伝統スポーツに着目した研究も含まれている。
目次
第1章日本体育・スポーツ史―第二次大戦前後の日本―
嘉納治五郎による関東大震災(1923年)後のスポーツによる復興の試み
戦時下における腹と腰
日本におけるソフトテニス競技の全国統括組織の形成と確立
日本厚生協会のドーポ・ラヴォーロへの眼差し
『うるま新報』にみる戦後沖縄の体育・スポーツ関連記事について
第2章日本体育・スポーツ史―日本とアジア,地方と伝統スポーツ―
朝鮮末期から日本植民地下における弓術の変容
わが国におけるニルス・ブック基本体操の評価と批判に関わる一考察
騎馬打毬の伝統性と文化的意義
ハワイ日系移民のスポーツ活動に関する研究
第3章スポーツ産業史とスポーツ政策史
日本のスキー誕生・普及期におけるスキー用具製造販売業
スポーツ産業史研究の分析枠組み
ドイツ社会国家における余暇・スポーツ政策
東ドイツスポーツ史の再構成
第4章欧米の体育・スポーツ史
20世紀初頭のイギリスにおける身体教育と学校衛生
1914年以前のイングランドにおける全国的統括組織非加盟ホッケークラブの活動について
ブラジルにおけるサッカーの伝播・受容
アメリカにおける第11回オリンピック・ベルリン大会参加問題
特別寄稿
戦時下における日本の厚生運動
体操伝習所旧蔵書文献目録に関する調査研究
前書きなど
本書は、『体育・スポーツ史における戦前と戦後』と題する研究論文集である。この企画は、これまで筑波大学の体育史研究室にて研究協力や研究交流にかかわっている研究者の論文や、私の学部学生・大学院生の教育研究指導を通してなされた研究を寄せ合い、現時点での学術研究の成果を公刊したものである。個別の論文集の体裁となっているが、その編集意図は、私の研究テリトリーとしての日本体育・スポーツ史を中核に据えながら、アジアやヨーロッパの体育・スポーツ史研究の内容へと架橋している。また、スポーツ産業史や社会におけるスポーツの位置づけから体育史への学術的貢献を意図した論考も含まれている。さらに、体育・スポーツの人物史研究、地方史研究など多様な研究が出現し、伝統スポーツに着目した研究も含まれている。
このように本書は、19名の体育・スポーツ史の研究者が、長年にわたり関心を抱き、研究を蓄積してきたテーマについて書き下ろした玉稿ともいえる内容である。目次を見通せば今日の体育史研究のテーマが実に細分化し、その研究の内容が緻密になってきていることを如実に示している。
私の思い描くこれからの体育史研究のあり方と今後の研究着想を本書の前書きを執筆するにあたって、少し述べておこう。それは大きく2つある。1つは比較研究の視座である。つまり、個別論文を積み上げる段階から一歩研究を進めるには、比較検討するような視座をもちたいと常々考えている。一国史的な体育・スポーツ史のみならず、異なる国々やそれぞれの地方の状況と比較していく視座である。
もう1つは、体育・スポーツをめぐるヨーロッパ中心の歴史観の見直しである。我々にとっての日本やアジアを中核に据えるとともに、今後は、体育・スポーツの世界史を再構築する必要があると考えている。近代スポーツは確かにイギリスで発祥し、アメリカで合理的に再編され、今やビジネスと深く結びつき発展を遂げてきている。しかしながら、古代ギリシャとローマの歴史的事象がヨーロッパに伝播するとともにアジアとの交流も盛んになって今日の世界史が叙述されている。世界史の教科書でも「緊密化する世界」であるとか、「世界の一体化」が叫ばれ、歴史観が大きく変化している。我々体育・スポーツ史の研究も、ヨーロッパ中心史観を克服しなければならない。そのためには、中央アジアやユーラシア大陸各地が古代のギリシャ・ローマの体育・スポーツから受け継いだ内容や事柄がいかにヨーロッパや、東アジアに伝播し影響を与えたかを吟味しなければならないだろう。
上記内容は本書刊行時のものです。