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精神の非植民地化 グギ・ワ・ジオンゴ(著) - 第三書館
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精神の非植民地化 (ゾウホシンパンセイシンノヒショクミンチカ) 増補新版 アフリカ文学における言語の政治学 (アフリカブンガクニオケルゲンゴノセイジガク)
原書: Decolonising The Mind

社会一般
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発行:第三書館
四六判
320ページ
上製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-8074-1015-6   COPY
ISBN 13
9784807410156   COPY
ISBN 10h
4-8074-1015-6   COPY
ISBN 10
4807410156   COPY
出版者記号
8074   COPY
Cコード
C0097  
0:一般 0:単行本 97:外国文学小説
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2010年6月
書店発売日
登録日
2010年6月1日
最終更新日
2010年10月21日
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紹介

86年度ノーベル文学賞を最後まで争ったケニアのグギが描くアフリカ文学の惨憺たる現状。アフリカ人がアフリカ人の言語で文学を綴ることを阻む厚い「言語帝国主義」の壁の批判と克服の道を説く。「アフリカ文学の言語」「アフリカ演劇の言語」「アフリカ小説の言語」ほか。

目次

献辞 11
感謝のことば 12
はしがき 14
声明 21
新版のための二つの補論
① 沈められた言語、沈められた民族 24
② 危機の文化―創造力の問題 29
序論 たたかいの普遍言語のために
  「部族」の概念 41
  たたかいの場としてのアフリカ 42
  帝国主義はスローガンではない 43
  文化の爆弾の効果 44
  世界を変革する夢 45
第一章 アフリカ文学の言語
1 帝国主義と言語問題 49
  ベルリン会議とアフリカの「言語分割」 50
2 英語で書くアフリカ人作家会議 51
  アフリカ文学とは何か 53
  外国語に「黒い血」を注入する試み 56
  戦場の暴力と教室の暴力 59
3 私の生いたち―民族語の生活 61
  教育の言語と文化の言語の乖離 63
  英語が王国への切符となる 65
  英語の文学教育 66
4 言語の二重の性格 67
  コミュニケーションとしての言語 68
  経験と文化―言語の意味 69
5 植民地支配の目的 73
  言語の支配ということ 74
  外側から自己をながめる 75
  人種差別のイメージ 77
  支配体制の決定的勝利 78
6 民族ブルジョアジーと文学の役割 81
  ヨーロッパの言語による文学の限界 83
  アイデンティティの危機 84
7 農民と労働者の文化伝統 86
  オビ・ワリとデイビッド・ディオプの挑戦 89
8 なぜ農民の言語では書けないのか 92
  アフロ・ヨーロッパ文学から真のアフリカ文学へ 93
9 なぜアフリカの民族語で書くのか 95
  言語的多様性の中に統一をかちとる方法 99
第二章 アフリカ演劇の言語
1 農民の文化運動の中へ 111
2 カミリズ村の人々 112
  文化プログラムの設計 113
3 演劇の起源 115
  民衆の「空間」 116
4 植民地支配と民衆「空間」の破壊 117
  六〇年代以後のケニア演劇 120
  ケニア国立劇場の性格 122
  盛り上がる演劇運動 123
  ケニア演劇の弱点 125
5 カミリズ―民衆が演劇をつくる 126
  カミリズ村の「空間」 126
  演劇と言語の問題 127
  民衆演劇は何を描くのか 129
  アフリカ演劇の形式 132
  『したい時に結婚するわ』の手法と効果 133
  マイム・歌・踊り・言語 150
  歴史をどう表現し、意識化するか 151
  演劇から神秘性をはぎとる必要 155
  オーディション・リハーサル・公演 157
  上演禁止と政治拘禁 158
  もう一つの実験―『母よ、我がために歌え』 159
  カミリズ「空間」の破壊 160
  「被抑圧者の演劇」の与えた影響 161
  余波 163
第三章 アフリカ小説の言語
1 私の「一人だけの部屋」 171
2 民族語小説を書く決意 173
3 小説の起源と社会的背景 174
  ヨーロッパの暴力とアフリカ 175
  アフリカ語の表記と出版 177
  「小説」をどう利用するのか 179
4 アフリカ小説の発展とアフロ・ヨーロッパ文学 182
  私の選択 185
5 ルーツへの復帰―文化的再生の唯一の方法 186
6 アフリカ語の正書法 191
  アフリカ小説の言語はどうあるべきか 193
  アフロ・ヨーロッパ小説と私の手法 194
  アフリカ小説の方法 197
  作家の世界観 199
7 新植民地の現実 201
8 農民伝承と口承文学のイメージ 204
  『十字架の上の悪魔』のテーマ 206
9 『十字架の上の悪魔』の読まれ方 208
  翻訳の重要性 211
10 アフリカ小説の未来 212
第四章 関連性の探求
1 文学とわれわれの距離 219
  自己と他者の位置 221
2 英文科の改革―単一文化の歴史的連続性ということ 223
3 「イギリス文学の偉大なる伝統」 225
  ヨーロッパの三つの文学伝統 227
  文化の支配ということ 230
4 新しい文学研究の組織原則 232
  口承文学の重要性 234
5 アフリカ文学の教育―具体的プランの場合 236
  パン・アフリカニズムの強調 238
  第三世界文学との関連 241
  スワヒリ語の重要性 242
  イデオロギー装置としての文学 243
6 二つの路線―帝国主義の遺産と抵抗の伝統 248
7 民族的・民主的な階級的基盤 251
8 アフリカ知識人に対する挑戦 253
9 たたかいが歴史をつくる 256
【付録】
アフリカ文学の概観  宮本正興 262
旧版訳者あとがき 293
新版訳者あとがき 298

前書きなど

 本訳書の原著 Decolonising the Mind, The Politics of Language in African Literature の初版は1986年の刊行である。この度、日本語の新版を刊行するにあたり、ジェームズ・カリー社から最も新しい版が一部送られてきたが、それによると初版以来、2006年までに12回の版を重ねているようである。地味な分野であるとはいえ、本書が、関心のある向きにどれほどの衝撃を及ぼすものであったかがうかがわれよう。
 今日に至るまで、本書は、本来のアフリカ文学の次元をはるかに超えて、広く言語と文化創成、民族と国家、植民地問題、さらには社会言語学上の実に多様な問題に関心を寄せる人々にとっての必読書になってきた。少なくとも、およそアフリカの言語問題を論じる際に、本書に言及しないものはないと言ってよいだろう。
 かつて、ナイジェリアの作家・批評家コーレ・オモトショは、1980年代を総括する文章で、本書をアフリカ人による著作の中で、その10年を代表する、最も重要な作品だと評価したことがある(ロンドンから出ている『ウエスト・アフリカ』誌、West Africa, 1989.12.25~1990.1.7, No.3776)。

版元から一言

 ロンドンでアフリカ研究に携わった日本人の研究者に言われたことがあります。「英国で『精神の非植民地化』を読んでいないアフリカ研究者がいないことに驚いたけれど、同時に、日本で『精神の非植民地化』を読んでいるアフリカ研究者がいないことにも驚かされた」と。
 1980年代で最も重要な一冊にも数えられた”マイル・ストーン”の邦訳が、品切れになっていたところ、訳者から「増補新版を出したい」とのお申し出があり、渡りに船として刊行しました。
 日本語版によって、アフリカ研究者だけでなく、アフリカに関心のあるすべての日本人に読んでもらえればと願っています。

著者プロフィール

グギ・ワ・ジオンゴ  (グギ,T.(ジオンゴ))  (

1938年、植民地下ケニアの農村に生まれる。少年期にマウマウ反英独立戦争を経験。マケレレ大学(在ウガンダ)時代から書き始め、自伝的小説『泣くな、わが子よ』(1964)は東アフリカ最初の英語小説。ほかに小説『一粒の麦』(1967)、『血の花弁』(1977)、戯曲『デダン・キマジの裁判』(1976)など。77年末から約1年間政治拘禁を受けるまではナイロビ大学文学科主任。釈放後、民族語(ギクユ語)作家に転身し、小説『十字架の上の悪魔』(1980)、『戦場の生存者』(1986)、『カラスの妖術師』(2006)、戯曲『したい時に結婚するわ』(1980)などを発表。その他『ホームカミング』(1972)、『政治の中の作家たち』(1981)、『中心を動かす』(1993)、『ペンポインツ・ガンポインツ・ドリームズ』(1998)など文学・文化・政治等に関する評論書多数。バイロイト大学、エール大学、ニューヨーク大学などを経て、現在カリフォルニア大学アーヴァイン校終身教授。

宮本正興  (ミヤモト マサオキ)  (

1941年兵庫県生まれ。現在、中部大学国際関係学部国際文化学科教授。大阪外国語大学名誉教授。専門は、アフリカ地域研究(言語・文学・歴史)。著書に、『文学から見たアフリカ―アフリカ人の精神史を読む』『文化の解放と対話―アフリカ地域研究への言語文化論的アプローチ』『スワヒリ文学の風土―東アフリカ海岸地方の言語文化誌』(以上、第三書館)など。訳書に、グギ・ワ・ジオンゴ『泣くな、わが子よ』(第三書館)など。アフリカ関連の編・著・訳書多数。

楠瀬佳子  (クスノセ ケイコ)  (

1945年高知県生まれ。現在、京都精華大学人文学部教授。専門は、アフリカ文学、女性学。著書に、『ベッシー・ヘッド―拒絶と受容の文学』『南アフリカを読む―文学・女性・社会』(増補新版)、『わたしの南アフリカ―ケープタウン生活日誌から』(以上、第三書館)など。訳書に、ベッシー・ヘッド『マル―愛と友情の物語』(学芸書林)、『女が集まる―南アフリカに生きる』(現代企画室)、ファティマ・ミーア『ネルソン・マンデラ伝』(明石書店)など。アフリカ、女性学関連の編・著・訳書多数。

上記内容は本書刊行時のものです。