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音の大地を歩く
民族音楽学者のフィールドノート
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2012年9月
- 書店発売日
- 2012年9月19日
- 登録日
- 2012年8月27日
- 最終更新日
- 2019年12月3日
紹介
アラブ音楽研究の第一人者である著者が、世界の音を語るエッセイ集。『地球音楽出会い旅』『中東・北アフリカの音を聴く』に続く、地球音楽出会い旅シリーズ第3弾。
まずは、日本各地にゆたかに伝わる伝統的な音楽から文章ははじまる。沖縄県、八重山に伝わるその地域ならではの音楽。そして、大阪府、四天王寺の雅楽。山形県の黒川能。徳島県に伝わり上演される人形浄瑠璃(文楽)。島根県に残る糸あやつり人形。福岡県に伝わる幸若舞と、日本各地のさまざまな音の文化が綴られる。海外では、中国に残るイスラム寺院と現地の音楽、フランスに残る人形劇など多彩な音やそれをとりまく人について述べる。そして、中東の音風景からはキリスト教音楽の源流を探り、イスラーム世界の音文化や宗教儀礼における声や音などについても詳しく語られる。さらに、クラシック音楽のソナタ形式と機能和声についても考えをめぐらせる。音とは何か。音楽とは何か。その持つ力とはなにかを考えさせてくれるエッセイ集。古今東西のさまざまな音を意識し、研究し続けた、民族音楽学者の名文がここにつまっている。
目次
1:日本の音─民俗と伝統
・沖縄・八重山の旅
・南座詣で
・雅楽春秋
・黒川能探訪記
・ハーンの聴いた明治の音
・暮らしの音/自然の音/祈りの音/楽器の音 芸能の音/
・人形浄瑠璃街道を歩く
・益田糸あやつり人形
・出石永楽館
・幸若舞
2:楽器音具そして音響
・鐘さまざま
・無響室を体験する
・縄文の石笛 後日談
・続・録音機今昔
・ブブゼラ騒動
3:海外へ 音楽の旅
・南京と蘇州
・泉州へ
・オランダ再訪
・ウズベキスタン
・ベルリンの印象
・ソウルの国立民俗博物館
・ロンドンからダブリンへ
・マヨルカ島旅行記
・ニューカレドニア
・西安&奈良
・フランスの人形劇─マリオネットとギニョル
4:中東 音の風景
・中東─文化変容とエスノポップス
・東方教会の音楽
・ユダヤ教の音楽─キリスト教音楽の源流を探る
1.ユダヤ音楽の独自のあゆみ/2.古代イスラエル(旧約時代)の音楽/3.うたわれる詩編/4.ユダヤ教の聖歌/5.民族音楽学的アプローチ/6.キリスト教音楽への流れ─その実証的研究
・エジプトで「音の風景」採集
・素朴な楽器と崇高さ/うなる水車、響く波/あふれるロバの「風鈴」/
・イスラーム世界の音文化
1.音と人間行動/2.音と風土/3.音の意味/4.音と言語/5.声/6.音文化のうけわたし/7.宗教とのかかわり/8.文化人類学的考察/9.歴史的考察/10.音から音楽へ/11.音楽のかたち/12.表演文化/13.「ミュージック・エスノグラフィー」/
・シナイ半島の楽師たち
音のアラベスク/大気をふるわすスィムスィミーヤ/詩の民の至福の瞬間/にわか楽師の運転手/宗教儀礼における声・音・表演─イスラームの事例を中心にはじめに/コーラン朗唱─「声の本」/朗読と歌のはざまで……/スーフィーの笛─音楽へ/ズィクルと旋舞─表演/むすび
5:クラシック音楽散歩
・ソナタ形式と機能和声─ハイドンとモーツァルトの場合
ソナタとソナタ形式/機能和声の成立/ソナタ形式とは?/音による建築物
・『名曲の旋律学』再版される
・歌劇《モーセとアロン》
・サル・プレイエル
・ソレム修道院
6:つれづれに
・高野山に鳴り響いたアザーン
・宝塚歌劇
・ピアノの思い出─わが音楽事始め
・フェルメールと音楽
・ユリノキに会いに
・ステッセルのピアノ
・高校校歌拝見
あとがき
前書きなど
この小著は私にとって、『地球音楽紀行 音の風景』(一九九八)、『風と音のかよう道 新・地球音楽紀行』(二〇〇五)、『地球音楽出会い旅』(二〇〇七)、『中東・北アフリカの音を聴く』(二〇〇八)につづく、都合五冊目の随筆集である。私はパティオはもとより、どこにいても、いつも音や音楽にとりかこまれてきた。本書の文は、そのいずれをとっても、そんな音模様にたいしてなにがしかの思考をめぐらした、いわばワンショット・エッセーである。
今回は、最近書きおろした稿ばかりでなく、一九七〇年代にまでさかのぼる比較的古い論考も、幾本か収めた。そのうえ本書には多くはないものの、私自身の「自分史」的な話題もちらほら顔をだすので、それらが鼻につく読者もいるかもしれない。が、そのへんはあまり気になさらずに、さらりと読みながしていただければ幸いである。
本書執筆のあいだも、私は気の合った研究仲間と国内や世界を旅しつづけた。本書には相当量の比率で、その見聞記が載せてある。文中にしばしば登場する「Nさん」とは、国立民族学博物館・西尾哲夫教授(現・副館長)のことである。彼もまた、科研の現地調査などを通じて、しばしば旅をともにしたひとりである。
版元から一言
世界中のさまざまな音の文化を、著者ならではの穏やかな視線でみつめ、熟考された文章を集めたエッセイ集です。
地域もさまざまです。まずは日本各地に残る、珍しい音楽に出会うために著者は現地を訪れます。沖縄県、京都府、大阪府、島根県、兵庫県、福岡県、特に山形県鶴岡市に残る黒川能には、本書を読むだけでも驚かされます。また、淡路島を経由して四国の徳島県に伝わった人形浄瑠璃。本書では徳島市八多町を訪れます。文楽とも言われるこの人形浄瑠璃全盛期の姿が、いまでも徳島には残っています。
中国、韓国をはじめヨーロッパ各地の音を求めて著者の旅は続きます。スペイン領マヨルカ島ではショパンとサンドが住んだ修道院も訪れます。著者が高校生時代によく弾いたショパンの前奏曲がここで作曲されたと伝えられている場所です。かと思うと、フランスがアラブの政治犯を流刑したという植民地、ニューカレドニアにも足を運びます。
著者の専門であるアラブの世界も訪れます。アラブのポップスの源流に触れ、民族と流入する音楽との試行錯誤の道のりについても触れ、さらに、キリスト教音楽の源流を知るために、ユダヤ教の音楽についても考察を深めます。そして、イスラーム世界の音文化についても触れられます。
このように、世界各地の音や音楽を、いまなお生き続け、変化し続けるものとして、幅広い視点で語ります。
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。