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懺悔録
我は如何にしてマゾヒストとなりし乎
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2009年5月
- 書店発売日
- 2009年5月23日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2024年2月19日
書評掲載情報
2009-10-30 |
週刊金曜日
773号 評者: 陣野俊史 |
2009-10-10 |
ZUBA ! (ズバ)
2009年10月号 評者: 陣野俊史 |
2009-07-02 |
週刊文春
7月2日号 評者: 酒井順子 |
2009-06-21 | 神奈川新聞 |
2009-06-07 | 信濃毎日新聞 |
2009-06-07 | 京都新聞 |
2009-05-27 | マニア倶楽部 2009年7月号 |
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紹介
戦後最大の奇書『家畜人ヤプー』の著者・沼正三、ついに逝く─
●沼正三がその死の直前までSM専門誌「S&Mスナイパー」(ワイレア出版、現在は休刊)に書き続けた実体験エッセイ、「ある異常者の体当たり随想録」から選集。
●未完の短編小説「化粧台の秘密」、2006年に受けた生前のインタビューを特別収録!!
目次
はじめに●マゾヒズムの星 志賀信夫
●沼正三、マゾヒズムを語る
イントロダクション◎沼正三の歩んだ道
インタビュー◎「私は、女性のマゾヒズムは信じられない」
●懺悔録
◎ただ、いちずにMのために
◎燃えたぎる奉仕精神
◎〝まごころあんま〟顚末
◎谷崎潤一郎の足崇拝について
◎屑屋商売のころ
◎私は、もう四十一歳にもなっていた
◎醒めるために飲む酒
◎五時からマゾヒスト
◎バア『幸』にて
◎ママと私だけの秘密
◎マゾヒストの異常な恋
◎森本佳子の秘めたサジズム
◎兄へ宛てられた手紙
◎真理は常に光栄ある孤立の側にある
◎垢と埃と汗の混じったビール
◎マゾヒストに自信と勇気を
◎私を深く埋めてもらいたい
◎「ツバちょうだい」
◎回想・汲み取り式便所
◎マゾヒスト仲間を求めて
◎百万人もの女性のエキス
◎死を命じるマゾヒズム
◎使用人であることの至福
◎コプロ趣味について
◎やりばのない自問自答
◎異常性欲者の孤独
◎箕輪祥子という女性
◎兄としての私、弟としての私
●未完小説「化粧台の秘密」
版元から一言
「S&Mスナイパー」というSM雑誌の編集をやっていました。昨年で同誌は休刊してしまったのですが、最終号が発行された翌々日、沼正三さんが亡くなったことを知りました。
「ある異常者の体当たり随想録」というエッセイを、20年間連載(本名の天野哲夫名義で)していただいていました。毎月、A4サイズの素っ気ない茶封筒が編集長宛に送られてきます。新潮社の原稿用紙に、線の細い、綺麗な文字がいっぱいに書かれていました。
内容は、女の足を舐めたい、とか、女性の吐いたツバを味わいたい、とか、お尻の下で窒息したい、とかです。伝説の奇書「家畜人ヤプー」がマゾヒスティックな妄想世界を描いているのに対し、このエッセイでは徹底的に自らの実体験を描いています。
連載は06年に終了しました。その間、沼さんは己の恥部をさらけ出し続けました。印象的な一文を引用します。
「吸ってあげるね」
そういって、唇を当てた。佳子は後ろ手に手をついたまま両足を持ち上げていた。私はしたたるビールの雫をハンケチの代わりに唇と舌で吸い取った。足の裏の皮膚は堅くて頑丈で、足指にタコができていた。そこを噛むとビールの雫の味がした。その味に、垢と埃と汗の臭いがまじっていた。
上目遣いに見上げると、彼女は無表情だった。しかし、注意を一点に凝らすように、このさもしい動物のような一人の男の行為を、好奇心を交えて熟視していることがよく分かった。
(「垢と埃と汗の混じったビール」より)
マゾヒストって、きついなあ、寂しいなあ、と思います。好きな人にも、軽蔑されなくてはならないのです。それが悦びだから。
このエッセイ集は、そんな矛盾に、沼さんが最後まで、もがき、苦しみながら書き続けた、マゾヒストの執念がこもっています。
軽い気持ちで「私Mだから」とか言ってるうら若き女性に、是非とも読んでいただきたく存じます。
(担当編集者●高橋大輔)
上記内容は本書刊行時のものです。