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ロック天狗連
東京大学ブリティッシュロック研究会と七〇年代ロックの展開について知っている二、三の事柄
- 出版社在庫情報
- 在庫僅少
- 初版年月日
- 2011年6月
- 書店発売日
- 2011年6月20日
- 登録日
- 2010年11月18日
- 最終更新日
- 2020年4月2日
紹介
ポスト学園紛争の東大キャンパスで「ブリティッシュロック研究会」を創設した林浩平。本書は大学の先輩・後輩による「日本におけるロック受容論概説」。さらには、NHKの大型ドキュメンタリー番組のプロデューサーで、ローカルロックに詳しい角氏には、東大外部からのサポート参加を願い、内容を厚くした!
目次
パートⅠ 「ブリティッシュロック研究会」創世記
ロックとはなにか――七〇年代ロックが担った力をめぐる私論(林浩平)7
東大ロックサークル「BR研」の誕生をめぐって(林浩平・野崎歓)53
「情念の異立化」――キング・クリムゾン論[再録](林浩平)81
パートⅡ さまざまなるロック
ロックドラム魂――Let there be drums(野崎歓)89
極私的エフェクター私論(大嶋良明)121
日本のロック、ローカルロック(角英夫)159
七〇年代私的心象記A-Z(星埜守之)201
あとがき(林浩平)225
▼バックステージ
わがロックアルバム、ベストテン
前書きなど
あとがき
本書のタイトルの「天狗連」とは、アマチュア芸人たちを指す言葉である。落語や浪曲、阿波踊りなどの世界ではお馴染みだが、一般にはあまり知られていないようだ。アマチュアなのだから、あくまで趣味や道楽の領分での活動だが、時には本業そっちのけで全身全霊を傾けて打ちこむ者も出てくるだろう。
一九七〇年代、ロックミュージックがまさに燎原の火のように燃え拡がり世界中の人々を熱狂させたとき、この国でもロックサウンドを身に浴びた大勢の若者たちが、自分たちも仲間とバンドを組んでロックの演奏に熱中したのだった。そんなロック経験を主題とする本書のタイトルに、この言葉はぴったり来るのではないか。編集部からこんな提案を受けて、本書のタイトルは決められた。七〇年代、大きな情熱をかけて「ロックな」青春を送った五人が、「わがロック」を語るのが本書である。
本書の軸となるのは、一九七三年に東京大学・駒場キャンパスに誕生したロックの同好会「ブリティッシュロック研究会」(BR研)をめぐる諸々のエピソードだ。林は友人たちと一緒にこの同好会を創立してバンド活動を始めた。正真正銘の「ロック天狗連」だった当時を回顧して綴ったのが拙稿である。野崎歓は、林の大学卒業に入れ替わる具合でBR研に入会しドラマーとしていくつかのバンドに参加した。ネルヴァルを専攻する仏文学者であり、翻訳家・エッセイスト・映画評論家として知られる野崎が、破天荒なキャラクターで有名なザ・フーのドラマー、キース・ムーンを敬愛するとは意外に思われる読者も多いだろう。野崎もまた熱狂的な「天狗連」だった。そのロックドラム論で確認頂きたい。
ブルトンを専攻する仏文学者の星埜守之は、中学時代からギターの演奏に手を染めたという。東大に入学した星埜は、楽器初心者の多いBR研と縁はなかったが、その周辺のロックサークルでバンド活動を続けた。野崎と同期でBR研に入会した大嶋良明はベースを演奏したが、そのいっぽうで電気楽器には不可欠ともいえる様々なアタッチメントの研究開発者の顔も持つ。理系出身のロックミュージシャンにはクィーンのブライアン・メイのように自家製のギターを愛用するものもいるが、大嶋はこれまでにたくさんのアタッチメントを作ってきた。本書ではその薀蓄が披露される。角英夫は現在、NHKスペシャルなどの大型ドキュメンタリー番組を担当するテレビプロデューサーである。東京外大時代にはやはりアマチュアのロックバンドで活動した。ロックバンド「めんたんぴん」と同じ小松の出身である角は、同郷のよしみから「めんたんぴん」のメンバーと交流があり、その縁で日本のロックシーンとのつながりも深い。プロの道を選んだ「天狗連」たちの歩みを詳しくレポートする。
本書の誕生に際して、ひとりの編集者の名前を記しておきたい。青土社で多くの書籍を手がけた津田新吾である。全身編集者とでもいうべき津田氏は、つねに新しい思潮や時代の感受性をとらえ続けて若い書き手を送り出してきた。野崎歓の著作も手がけていた。その津田氏は、昨年の七月、残念なことに若くしてその生涯を閉じられた。七月三十日に通夜があり、私もお別れに行った。その後に設けられた故人を偲ぶ宴席で、私は偶然、初対面だった野崎の席の前に座ることになる。悲しみの場ではあったが、野崎と言葉を交わすうちに、互いにBR研に在籍したことを知って、大きな昂揚感を味わった。それが本書誕生の契機である。本書の編集を担当する河野和憲氏は、津田氏が以前に在籍した水声社時代の後輩にあたる。また本書の装丁を願ったデザイナーの中山銀士氏は、津田氏と何度も一緒に仕事をしたという。それを思えば、故津田新吾氏の本作りにかける情熱が、本書の誕生をなにほどか後押してくれたのかもしれない。学生時代にはやはりパンクロックが好きだったという津田新吾氏の霊魂に、本書を捧げたいと思う。
著者を代表して
林 浩平
二〇一〇年十二月
版元から一言
[メンバー紹介]
林浩平(恵泉女学園大学特任准教授)、野崎歓(東大准教授)、星埜守之(東大准教授)、大嶋良明(法政大学教授)、角英夫(NHKエグゼクティブ・プロデューサー)、中山銀士(ブルースハープ、装丁)、南葵亭樂鈷(サックス、編集)
(社)日本図書館協会 選定図書
上記内容は本書刊行時のものです。