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平成の大虐殺 津崎 至(著) - 彩流社
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平成の大虐殺 (ヘイセイノダイギャクサツ) 在朝日本人謂われなき断罪

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発行:彩流社
四六判
286ページ
並製
定価 2,400円+税
ISBN
978-4-7791-1216-4   COPY
ISBN 13
9784779112164   COPY
ISBN 10h
4-7791-1216-8   COPY
ISBN 10
4779112168   COPY
出版者記号
7791   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
品切れ・重版未定
初版年月日
2006年11月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2019年5月31日
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紹介

岩波新書『植民地朝鮮の日本人――草の根の侵略』に“侵略の証拠”として無断引用された小学校同窓会誌の責任編者である著者が、在朝日本人として“朝鮮侵略”とは何か?、表現の自由と著作権をめぐって最高裁まで闘った自伝的記録。

目次

序1章 「表現の自由」とは?
1「お前たちは、侵略者だ!」―――― ● 8
2「岩波」創業の精神は謳う「驕慢なる思想の戒め……」と―――― ● 9
3その「岩波」が羊頭を掲げて狗肉を売る、か―――― ● 11
4真の《表現の自由》とは?―――― ● 12
5「東京裁判判決」を受容した「対日講和条約」は何を語る―――― ● 12

第1章 ヒマラヤ、アンナプルナⅠの麓に立つ――来し方
1白き神々のご神託は……―――― ● 16
2二つのネパール行動計画―――― ● 18
3「お前たちは侵略者だ」との吐かし―――― ● 20
4「平和憲法」は我ら大正世代の?血の贖い?―――― ● 22
5件の本は回収されて、店頭になかった―――― ● 24
6「衝上断層」の教えるもの―――― ● 25
7「草の根の侵略」とは? 糊と鋏の自虐史観―――― ● 27
8名もない庶民が「侵略者」?―――― ● 30
9「閣議決定」としてある「本邦人ヲ移植……」―――― ● 32
10「草の根……」の出典はアメリカの住民投票制度に拠る―――― ● 35
11われらが「著作」からも?摘み食い?―――― ● 36
12なぜ「詩人・村松武司」の名の登場か―――― ● 37
13背信の高崎は?先駆者・村松?の著作をどう引用したか―――― ● 40
14再版決定は「日本人拉致」問題の?相殺の理屈?絡み―――― ● 45
15聖寺・ムクティナートへ―――― ● 47
16兄・大四郎夫婦の?夢の知らせ?―――― ● 48
17敗戦・特別攻撃斬込隊・復員―――― ● 50
18兄夫婦の遺骨を求めて―――― ● 52
19ドンキーとの出会い、滑落、骨折……―――― ● 58

第2章 帰国・入院――ベッドの上の呻吟
1「本件著書」の執筆・刊行の目的は?―――― ● 62
2「闘い」の決意、老人の自立―――― ● 64
3著作権法との取り組み―――― ● 66
4「原告入り」拒否の山田卓良。著作権の訴えはどうなる?―――― ● 67
5死の訪れを見る……―――― ● 71
6人民裁判「シベリア二五年徒刑」は語る―――― ● 73
7「岩波」は、なぜ読者の一人を裏切ったか―――― ● 77
8『歴史とは何か』『歴史の作法』を読む―――― ● 79
9「日本は司法二〇%の国。負けるぞ」の声―――― ● 81
10「大島三兄弟」なる男のHP。著者の?DNA?を知る―――― ● 83
11『三坂小学校記念文集』の編集責任を託される―――― ● 84
12建学の精神はペスタロッチの教育理念―――― ● 87
13「編集著作権」行使の実際―――― ● 90
14〈断章取義〉著者・高崎の『三坂小学校記念文集』引用手口―――― ● 92
15ラジカルな要約・こじつけ引用―――― ● 96
16講談社と津本陽氏の「わび」は何を教えるか―――― ● 100

第3章 「訴えるべきか、否か」それが問題だ
1日本国憲法は示す、「犯すべからずの基本的人権」を……―――― ● 104
2公表(法三二条)の著作物とは? 〈非公表の同窓会誌〉をどう扱ったか―― ● 107
3「北方ジャーナル事件」の最高裁判例に学ぶ―――― ● 108
4自民党新憲法草案に見る「公共の福祉」論―――― ● 112
5『週刊文春』問題の発生。立花隆は吠えた―――― ● 115
6正野嘉人弁護士との出会い―――― ● 118
7母校「三坂小」人に訴える―――― ● 120
8「三坂っ子」の変質を探る―――― ● 122
9高崎宗司の身許調べに山梨県北杜市行き―――― ● 124
10高崎の著作に「柳宗悦、安倍能成は帝国主義の手先」と―――― ● 137

第4章 「この紋どころが目に入らぬか、頭が高い!」
1歴史学者は言う―――― ● 146
2“禁じ手”公権力・史料を肯定的引用の「反体制派」―――― ● 148

第5章 ひとり、七九歳の男の闘い
1岩波書店と高崎宗司(津田塾大教授)を訴える―――― ● 152
2同志二名の「原告」入り―――― ● 153
3作戦:似非歴史書としての暴き―――― ● 154
4「韓国併合計画の策定」に見る明治天皇の御裁可―――― ● 160
5「訴状」(著作権・編集著作権侵害、不法行為)の提起―――― ● 160

第6章 失われた人権を求めて……
1「和解」を強要する女性裁判長―――― ● 164
2真実・正義より?効率性?とは恐れ入った―――― ● 166
3被告側反論「お前に著作権はない」と。その「反論」―――― ● 168
4一枚の「領収証」が語る?地下茎?と詐欺・横領―――― ● 170
5無通告の「増刷」と「削り」の暴挙―――― ● 174
6“性転換”「歴史書に非ず。論評の書である」―――― ● 175
7弧爺の憤り「〈岩波〉ともあろうものが……」―――― ● 177
8なぜ、彼女は「和解」を強要するのか〈人心支配だ!〉―――― ● 182
9被告側「書き換え文」案を提示、全面降伏―――― ● 186
10《表現の自由》の線引きだ。「和解」を蹴飛ばす―――― ● 188
11「原告代理人」正野の?背信?と原告二人の?造反?―――― ● 191
12姑息な「岩波」・高崎の?全面降伏?ぶり―――― ● 193
13「原告代表は他の原告に無理心中させるのか!」―――― ● 195
14「原告の請求を棄却する」。喪服で拝聴―――― ● 198
15「もっぱら公益……」と。その《公益》とは?―――― ● 201
16「著作物の内容」を評価しない/できないアタマ―――― ● 204

第7章 裁判長、「公益」とは何ですか
1「公益」とは?―――― ● 208
2「名誉感情の侵害」をどうしてくれる―――― ● 211
3著作権法三二条「公表の著作物」には「公正に合致」とあるぞ―――― ● 215
4「執筆者名」の不表示は、著作権法一九条違反―――― ● 216
5「編集著作権」者・津崎には著作権法一七条《人格権》がある!―――― ● 217
6「編集」を知らない裁判長に「知財」が扱えるのか―――― ● 220
7「創作的関与の証拠はない」この暴言、許せぬ!―――― ● 222
8高部判決も「?性転換?論評の書」としての裁き―――― ● 224
9論評「在朝日本人は侵略者」となれば「脅迫」となる―――― ● 226
10《公共の福祉》とは国家の安全と社会秩序の維持のはずだが?―――― ● 228
11反体制派・高崎の親韓、「北」の自虐史観―――― ● 230
12「本件著書」は「北」による対日賠償金の引上げ工作―――― ● 233

第8章 不思議な気配、囁き……
1「東京裁判」の映像が教えたもの―――― ● 238
2「侵略」とは「国家犯罪」である―――― ● 240
3「在朝日本人七五万人」を虐殺した主犯三人―――― ● 244

第9章 「司法二〇%の日本国」はホントだった
1サンフランシスコ講和条約に明記の「侵略」の定義―――― ● 248
2無惨! 二審も敗訴「お前には編集著作権も著作権もないんだ」―――― ● 252
3一審判決と二審「一審……相当」判決にある論理矛盾―――― ● 256
4短絡、画一そしてリップ・サービスの判決―――― ● 258

終 章 「まだ、最高裁がある」と叫ぶ
1なぜか「東京裁判判決」引用を否定する原告代理人―――― ● 266
2「門前払い」の最高裁―――― ● 267
3一つの疑念〈東京裁判否定は暗黙裡の掟?〉が浮かぶ―――― ● 271
4憲法二一条《表現の自由》がヒト殺しの凶器に―――― ● 276

あとがき―――― ● 279

前書きなど

序章 「表現の自由」とは?

1――「お前たちは、侵略者だ!」

 読者の皆さん! 《主権在民》の一人、私コト津崎至の慟哭と憤怒の「訴え」をお聞きください。ある野郎どもと女性判事らに「お前たちは、侵略者だ!」と断罪されました。この謂れなき「汚名」を戴いたまま、死ぬわけには参りません。

 〈第二次大戦中、ドイツのナチス政権は、欧州各地から数百万人のユダヤ人を強制収容所に集めて殺した。中でも、ポーランド南部のアウシュビッツ収容所では、毒ガス、銃殺、飢えで一〇〇万人を超す人々を虫けらのように殺しました。彼らは自分たちの優位を誇って、他民族を蔑み、他人の人権など顧みない。それがファシズムだ。人のココロに潜む悪魔を呼び覚まし、行為の残忍さを忘れさせる魔力を持つ……二〇〇五年一月二八日「アウシュビッツ強制収容所解放六〇周年記念式典」が現地で執り行われた。?人間が人間に対して為した究極的なおぞましい所業を記憶し直す時?としている。民族差別、排外思想を抑え、人道主義を定着させる。(歴史に学ぶとともに)〉
(『朝日新聞』二〇〇五年一月二九日、社説の抜粋)

 一九九五年三月、オウム真理教(アーレフ)による地下鉄サリン事件が発生しました。一二人の死者と五〇〇〇人を超える負傷者を出しました。それから約一〇余年が経つ。この無差別テロに対し、日本社会はどう向き合ってきたか。オウムは、国の中に国を造ろうとした。標的は日本という国家であった。市民は、いわばその身代わりであった……。(一部『朝日』紙上より、引用)
 二〇〇二年六月、津田塾大学教授・高崎宗司は、史学者としての手に成る岩波新書『植民地朝鮮の日本人――草の根の侵略』によって、戦前、戦中、大日本帝国の植民地であった朝鮮在住の日本人七五万人、老人から女、子供までをも「侵略者」と断罪した。戦後、六〇年。ある日、突然の?テロ行為?である。「侵略」とは、他国に攻め入り、人を殺し、財貨を奪い、女を犯すなどの国家犯罪である。一九四八年一一月、市ケ谷台の「東京裁判」法廷で、検事キーナンは論告した「被告ら一八名は、平和・人道の罪による戦争犯罪人である。有罪」と。
 高崎宗司、「岩波」・山口昭男に問う。名もない、私どもを「侵略者・戦争犯罪人」と吐かすのか。これは平成の?大虐殺?である。七五万人を殺す。まともじゃない。〈命は誰のものか〉。日韓両国関係が成熟しつつあるも、なお、微妙な問題が横たわっている時、この低次元の「歴史書」の綴りは、何を意図するものであるか?

2――「岩波」創業の精神は謳う「驕慢なる思想の戒め……」と

 私は「植民地朝鮮の日本人」の、その一人である。「名もない一般庶民……」。?天下の岩波?が、創業のココロとして一番、重きを置いていた階層である。その一般庶民を《侵略者》に。なぜだ?
 岩波書店創業の人、岩波茂雄殿よ! 貴方が「岩波新書、創刊の精神」として、いまも残されている言葉を知る。あえて、ここに要約、記してみる。

 〈岩波新書は一九三八年一一月に創刊された。その前年、日本軍部は日中戦争の全面化を強行し、国際社会の指弾を招いた。しかし、アジアに覇を求めた日本は、言論統制を厳しくし、世界大戦への道を歩み始めていた。出版を通して学術と社会に貢献・尽力することを終始希いつづけた岩波書店創業者(岩波茂雄)は、この時流に抗して、岩波新書を創刊した〉
 〈創刊の辞は、道義の精神に則らない日本の行動を深憂し、権勢に媚び、偏狭に傾く風潮と他を排撃する驕慢な思想を戒め、批判的精神と良心的行動による文化日本の躍進を求めての出発であると謳っている。このような創刊の意は、戦時下においても時勢に迎合しない豊かな文化的教養の書を刊行し続けることによって、多数の読者に迎えられた〉
 このように「創刊の辞」は?偏狭に傾く……他を排撃する驕慢な思想を戒め?ている。
 〈戦争は惨澹たる内外の犠牲を伴って終わり、戦時下に一時休刊の止むなきにいたった岩波新書も、一九四九年……刊行を開始した。新しい社会を形成する気運の中で、自立的精神の糧を提供することを願っての再出発であった〉

 この輝かしい歴史と伝統を謳った「創刊の辞」のココロは?

3――その「岩波」が羊頭を掲げて狗肉を売る、か

 ただいま「岩波ジャーナリズム」は、強大なマスコミ者としてある。その「岩波書店」が「天皇制ファシズム」の圧制下に喘いでいた弱者・在朝日本人、無一物となって引き揚げ「引揚者」の蔑称を与えられた?名もない一般庶民?を、今度は日本人の?別人種?と差別、再び、打ちのめして「良し」としている。まさに弱い者いじめだ。あの誇り高き「岩波」よ! いつから、ヒト殺しに加担する側に立つメディアになってしまったのか。〈客観・公正は、幻想……〉その痛覚は鈍い。あの「岩波人」にあった葛藤、煩悶も失われ、ただ商業行為があるのか? まさに、羊頭を掲げて狗肉を売る図ではないか。
 いくら憲法に《表現の自由》があるとは申せ、著者である水戸生まれの御仁は、黄門サマまがいに?このイワナミの紋どころが目に入らぬか、頭が高い。控えおれ!?とばかりの、この無体。どう読んでみても「植民地朝鮮の日本人」を検証したとは申せない体たらくの起承転結である。歴史書を綴る……。その作法を心得ていない史学者である。後世に「岩波の愚書」と評価されることは明らかだ。そのお粗末な出版物を、ヌケヌケと六版も世に送り込んでいる。嗚呼!
 著者・高崎よ! 岩波新書編集長・坂巻克巳よ! どこの、ダレさまに身と心を売ったのか? 史学者として、ジャーナリストとしての?いろは?を、創業の人に学びたまえ。
 また、お墓の下にいらっしゃる岩波茂雄、吉野源三郎ご両人様にも、その胸の内を問いましょう! お二人の衣鉢を継ぐべき「岩波」人は、いまや?偏狭に傾き……驕慢な思想?の持ち主と相成り果てたのでありましょうか?

4――真の《表現の自由》とは?

 改めて〈命は誰のものか〉を太軸とした《表現の自由》のあり方を考えてみる。
 《表現の自由》の禁じ手には、幾つかある。まず「暴力」への頷き、呼びかけ。「人命」を蔑ろにする。「個人攻撃」を行う。これらを括って、法的には《公共の福祉》違反の言動とする。
 一応、これ以外は何でもあり、ということになるが、《表現の自由》の行使は、今回の「ムハンマド風刺画」問題でも分かるように「表現者」は、プライバシー、信仰心、個人の尊厳など、憲法一一条以降にある《人権条項》と緊張関係にあることを自覚しなければならない。?他者の痛み?の理解である。
 ?大日本帝国の天皇制ファシズムの圧制下に育った?私、八〇歳・男、その?痛み?を肌に覚えている。
 その昔「貝になりたい」というTVドラマがあったことを記憶していらっしゃる方も多いはず。戦勝国アメリカをはじめとする連合国は、B・C級戦争犯罪人裁判で「無実」の理髪師、元皇軍兵士を絞首刑にした。彼は「まだ、最高裁がある」と叫んでいたが……。私も叫ぶ「最高裁まで闘う」と。
 これからの記述は?名もない庶民?の一人である私が、ひとり闘う?叫び?である。

5――「東京裁判判決」を受容した「対日講和条約」は何を語る

 一九五一年九月、日本国は、極東国際軍事裁判(東京裁判)の判決を受け入れ、サンフランシスコにおける「対日講和条約」に調印した。「独立国日本」の成立である。戦後六〇余年「大東亜戦争、肯定。東京裁判史観の否定。日本精神、復興」の論駁があるが、首相吉田茂が、全権大使としてハンコを捺した事実は、好むと好まざるとにかかわらず、厳然と、同条約が日本国憲法の上位にあることを物語る。
 同「裁判」判決文では?日本国の侵略行為は、国家犯罪である。ただし、戦犯とされた者以外、個々の国民に「侵略・戦争犯罪」の責めの及ぶものではない?と明記されてある。
 また、明治四二年七月六日の閣議決定にある「韓国併合計画の策定」には「成ルベク多数ノ本邦人ヲ韓国内ニ移植シ……日韓間の経済関係を密接ナラシムル事」(日本外交文書)と謳われている。同日付けに、明治天皇の「御裁可」である。「国家事業」としての?植民?である。
 私は平成一六年六月、東京地裁に、高崎宗司、?岩波書店に対する「訴え」(著作権・編集著作権侵害、名誉毀損―不法行為)を起こした。
 裁判は《真実・正義》を発見する場である。前最高裁長官、矢口洪一氏の言葉を借りれば「裁判とは、病理現象の手当てだ、と言われているが……」とある。近代国家においては、そのための審理手段として?口頭主義?を原則としている。?書面主義?ではない。それは「分かりやすい」手段が《真実》に到達しやすい、との?経験値?からである。
 しかし、この裁きに、東京地裁、高部真規子裁判長は「準備書面と期日」なる?書面主義?の訴訟指揮の下、平成一七年七月「(侵略は、国家犯罪ではない)もっぱら公益を目的とした著作物」として、原告の請求をすべて棄却した。《公益》とは?公共の利益を追求する?行為である。二審、東京知財高裁、佐藤久夫裁判長もまた「一審判決……相当」として、同様、原告の請求を棄却した。
 折から、最高裁泉徳治裁判官は、高裁の「(一審判決の)引用手法」について〈つぎはぎ引用は、論理の構成、時系列に矛盾が生じる恐れがある。自己完結型の判決文とすべきだ〉と苦言を呈していた。
「知財高裁」の佐藤裁判長は、にもかかわらず?一審の引用事例、採用方の誤りと論理矛盾?を、そのまま引用しての「一審判決……相当の請求棄却」判決であった。高裁の上に、改めて「知財」が被されているのはなぜか? 知財の?重さ?ゆえであろう。その「知財」の幅の広さ、奥深さを学び取ることができていない一審の判決を?自己完結型の判決文?としないまま「……相当」とした体たらくである。
 この間「原告代理人」正野嘉人弁護士(東京弁護士会)は、「準備書面と期日」における?無言に近い対応?、あるいは、原告である私の主張・行動を制約「弁護士法一条」(基本的人権の擁護・社会正義の実現)違反の言動の放ちである。ある法曹人は言う。「弁護士、必ずしも、依頼人の味方ではないよ。あの?業界?にいるからには保身も考えないとネ」
 平成一八年二月九日、横浜地裁は「横浜事件免訴」の判決を下した。「法の正義の具現」はならなかった。いまや、司法の体質に「国家犯罪」という?歴史の暗部?を見詰める姿勢はない。法曹人の「使命・職責」感に危うさを覚ゆ。
 ちなみに、平成一三年六月一二日開催の「司法制度改革審議会」の意見書の申し状を告げる。?二一世紀の日本を支える司法制度?。これがテーマであった。次の、いい言葉の一つを噛みしめていただきたい「ただ一人の声であっても、真摯に語られる正義の言葉には、真剣に耳が傾けられなければならない。そのことは、われわれ国民一人ひとりにとって、かけがいのない人生を、懸命に生きる一個人としての尊厳と誇りに関わる問題であるという、憲法の最も基礎的な原理である……」と。
 やがての日、訪れる、憲法判断の位置にある「最高裁」の判決の行方は、果たして?


著者プロフィール

津崎 至  (ツザキ イタル)  (

1925年 京城(現・韓国ソウル)生まれ。
1946年 日本経済新聞社入社、社会部・文化部記者。
1984年 定年退職・フリーのライターとなる。
著書に『惨殺』(彩流社)、『屈辱』(サンケイ出版)
   『熟年事件記者のコロンビア』(彩流社)ほか

上記内容は本書刊行時のものです。