書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
『のだめカンタービレ』の人間像―<音楽の愉しみ>と「調和」
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 書店発売日
- 2015年1月9日
- 登録日
- 2014年12月18日
- 最終更新日
- 2014年12月19日
紹介
『のだめカンタービレ』には、のだめと千秋という主人公のカップルのクラシック音楽を学んで成長していく姿が、ラブストーリーとともに描かれている。その恋愛物語は、ふたりが同じく音楽の専門家になることを目指すという形で音楽に関わるということによって生じている。
千秋が専門分野としての音楽に取り組んでいるのに対して、のだめの関心事は「自由に楽しく」ピアノを弾くことだ。のだめは、このことで専門分野としての音楽に対して、〈音楽の楽しみ〉とは何か、という問題を提起している。
千秋は、「2台のピアノのためのソナタ」のレッスンで、飛んだり跳ねたりするのだめの演奏ぶりにダメを出したり、のだめの演奏に合わせられるのは「オレ様ぐらいだ!」と彼女に自信満々に接したりする。しかし本当は、のだめの演奏に魅せられており、そのことによって〈音楽の楽しみ〉にひたり、音楽にあらためて感動する。
二人のラブストーリーの背景には、音楽の歴史的蓄積としての「調和」の理念がある。『のだめカンタービレ』で見られるのは、この理念を音楽の本質とし、クラシック音楽確立の時代の音楽観を乗り越えて、ふたたび古代(ピュタゴラス派)以来の伝統的音楽観へとかえる、音楽観の先祖がえりである。
現代日本社会における「調和」の理念の実現を音楽によって具体的に示すものとして「のだめ音楽会」の例がある。『のだめカンタービレ』をきっかけに、一般人にとってクラシック音楽の本質についての認識は〈音楽の楽しみ〉における「調和」を経験することによって変化した。
以上の考察に加え、巻末には、文献資料として、ピュタゴラス派の音楽観およびクラシック音楽確立の時代におけるピュタゴラス派の音楽観についての解釈(ヘーゲル)を付けて読者の参考になるようにした。
目次
第1章 本書の問い
第2章 近代日本の西洋文化受容におけるクラシック音楽の在り方
第3章 クラシック音楽の本質についての認識
第4章 音楽の歴史的蓄積としての「調和」の理念
第5章 「調和」をめぐる音楽観の先祖がえり
第6章 千秋の音楽活動
第7章 のだめの音楽活動
第8章 物語の到達点
第9章 「調和」の理念の実現
第10章 本書の問いへの答え
上記内容は本書刊行時のものです。