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ドラッグ問題をどう教えるか
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年8月
- 書店発売日
- 2013年8月5日
- 登録日
- 2013年7月19日
- 最終更新日
- 2013年8月30日
紹介
脱法ハーブが大きな社会問題となっている今、その対応が急がれている。
薬物の流行は時代とともにあり、ストレスを抱えた子どもたちの自己処方として使用されてきた。
また、あらゆる立場の人が逮捕されている。
ダメ、ゼッタイと言われつづけ、多くのものを失うとわかっていてもである。
本書は、もう一歩踏み込んで、学校など子どもの薬物乱用防止教育に携わる大人、
主に中学、高校の教師に向けて企画。
養護教諭、保健師、看護師、精神科医、弁護士、薬物依存からの回復者など
多様な分野の執筆陣による理論編と具体的なQ&A、ワークシートで構成された実践的な入門書である。
目次
はじめに
第一部 ティーンエイジャーとドラッグ問題
1.ドラッグ問題とティーンエイジャー
・ 青少年の薬物乱用の現状
・ 青少年の薬物乱用増加の背景
・ 思春期のこころを理解する
・ 現代社会と思春期
・ 自尊感情の獲得と発達障害
・ 「Above the influence」と「ダメ。ゼッタイ。」
・ 青少年の薬物問題の難しさ
コラム①違法ドラッグ(脱法ハーブなど)の危険性
2.ドラッグ問題に気づく ~家族が気づかない薬物使用、家族が気づいた薬物使用~
・ 薬物を使い始めた子どもには変化が生じる
・ 本人が薬物を使用していることを家族が知ったきっかけ
・ 本人の薬物使用が発覚してから、以前からあったおかしな行動やサインについて家族が思い出したこと
1)身体的な変化(目つきに関する回答が多い)
2)言動の変化
3)金銭の要求
4)生活上の変化
・ 薬物の種類による表面化の特徴
1) 覚せい剤
2) 大麻
3) 処方薬
4) 脱法ハーブ
3.ドラッグ問題と薬物依存症 ~薬物依存症と治療~
・ 依存性薬物
・ 薬物依存は脳の病気です
・ 薬物依存症の診断基準
1) 薬物を使いたいという、強い欲望または強迫感がある
2) 薬物の使用をコントロールできない
3) 耐性が生じている
4) 離脱症状が出現する
5) 薬物へののめり込み
6) 明らかに有害な結果が起きているのに、薬物を使う
・ 依存症者の直面する問題
1)急性中毒
2)耐性と離脱症状
3)慢性中毒
4)感染症
5)精神障害の合併
6)人間関係や社会的問題
・ 依存症の治療と回復
・ 回復に踏み出す前に
・ 断薬(クリーン)の導入
・ 断薬(クリーン)の維持
1) 問題となる薬物をやめるだけではなく、比較的安全と思われる薬物も完全にやめること
2) 薬物を使うことに関係していた場所や時間、人、活動(やること)、などをできるだけ避けて行動すること
3) 薬物を使っている人と付き合うのをやめること
4) しばらくの間、退屈かもしれないけど、あまり起伏のない平穏な生活を続けるほうがよい
5) 自分の回復を支えてくれるネットワークを広げる
・ 長期の回復
4.ドラッグと地域保健 ~保健師の取り組み~
・ 保健所の薬物問題への取り組み
・ 保健師の薬物問題への視点と取り組み
1) 地域保健の視点
2) 地域の専門職や住民との取り組み
3) 未成年の健康問題を踏まえた取り組み
4) 学校との連携
・ A市立中学校と地域保健の連携事例
1) 調査結果
2) 調査結果の反響
・ 地域保健の薬物問題の取り組み目標
コラム②学校メンタルヘルスと「自己治療仮説」
5.ドラッグと貧困 ~福祉事務所での実践から~
・ 増加する子どもの貧困と虐待・薬物乱用の連環
・ 薬物依存~「支援が困難」の理由
・ 整備されていない医療・福祉サービス
・ 福祉事務所での実践と留意点
1) 利用できる機関や自助グループの情報を得ること
2) 「否認」への対処と動機付
・ 事例 ~処方薬依存でネグレクトにいたった母子世帯
1)事例概要 ネグレクトの発生
2)問題の発見 処方薬依存
3)断薬
・ 薬物問題をもつ貧困家庭に対しての支援
6.ドラッグと司法 ~薬物犯罪と更生の現状~
・ 「犯罪者」とは何か
・ 刑事手続の流れ
・ 薬物事犯の現状 ―治療とは全く無縁の刑事手続―
・ 社会的排除による社会復帰資源の不足 ―更生保護の現状―
コラム③違法ドラッグ(脱法ドラッグ、脱法ハーブなど)に対する法規制
7.ドラッグとセックス
・ 誘惑から身を守るために『禁止』は役に立たない?
・ ことわりたいときにはことわることができる関係性のために
・ セックスをどういう順序で学ぶのか
・ ギャップと折り合い
・ 性的な折り合いの各段階
・ 修復が可能な環境を
8.ドラッグ問題への取り組みと感情
・ 医療の場での対応困難な薬物乱用者
・ 薬物乱用者とのかかわりにおける感情の問題
1) 感情労働と対人関係職
2) 薬物乱用者とのかかわりにおける援助者の感情
3) かかわりを避けるか、バーンアウトするか、かかわる力をつけるか
・ 疲れをためこまないように
1) 素直に自分の感情を感じる
2) 薬物をやめさせようと闘わない
3) かかえこまない
9.ドラッグを使う・やめる 体験談
コラム④「ダルク」とは
コラム⑤「NA」とは
・ 体験談1 たけし
コラム⑥グループミーティング
・ 体験談2 ゆたか
コラム⑦「Just for today」
・ 体験談3 裕
・ 体験談4 浩
・ 体験談5 アキラ
コラム⑧「12のステップ」
第二部 教師が知りたいドラッグ問題Q&A
1.薬物乱用を防止するために
2.学校における薬物乱用防止活動の見取り図
・ 何のための薬物乱用防止か?
・ リスク因子と防御因子
・ 実は役に立っていないかもしれない薬物乱用防止教育
・ 有効な薬物乱用防止教育の条件
・ Q&Aについて
3.ドラッグ問題Q&A
1)対応総論
・ Q1 薬物を使用している子どもが求めている「助け」は、どのようなものでしょうか?
・ Q2 まだ使っていないが機会があれば使いそうな子どもたちが薬物を使わない有効な薬物乱用防止教育はあるのでしょうか?
・ Q3 薬物依存になりやすい傾向というものはあるのでしょうか?
2)対応実践
・ Q4 子どもが薬物を使っていることがわかったとき、どうすればよいでしょうか?
・ Q5 子どもから「ドラッグをやっている」と打ち明けられた場合、具体的なかかわりのポイントは何でしょうか?
・ Q6 薬物を使ったときはどんな変化が出ますか? 学校や家庭での早期発見のためのポイントを教えてください
・ Q7 グレーゾーンの子どもへの有効な薬物乱用防止対策は?
・ Q8 グレーゾーンの仲間集団にどう対処すればいいですか?
・ Q9 卒業した子どもが薬物をやめられなくなったと言ってきた場合、どうすればいいでしょうか?
・ Q10 子どもから「大麻を吸ったことがある」と言われた場合、初期の対応はどうしたらいいでしょうか?
・ Q11 「合法ハーブ」などとして販売されているドラッグとは、どんなものですか?
・ Q12 保護者に対する対応で、気をつけることがありますか
3)周辺問題
・ Q13 オーバードーズと薬物依存の関係について、どう考えればいいのでしょうか?
・ Q14 リストカットと薬物依存の関係について、どう考えればいいのでしょうか?
・ Q15 多くの問題を抱えた薬物問題をもつ人の家族をどのように支援すればよいのでしょうか
4)法律編
・ Q16 薬物問題にかかわるときに必要な法律について教えてください。
・ Q17 もし、中高生が薬物事件で逮捕されたら、どうなるのでしょう?
5)教育実践編
・ Q18 「薬物乱用防止教育」をやってくださいと教育委員会や管理職に言われますが、自信がありません。どうやればいいのでしょうか?
第三部 ワークシート
ワークシートを活用するために
ワークシート1 あやしい薬をすすめられたら、あなたはどうしますか?
ワークシート2 あやしい薬をすすめられたら、あなたはどうしますか?
ワークシート3 友だちから薬をやってると聞かされたら、あなたはどうしますか?
ワークシート4 薬物をすすめられたとき、あなたならどうやってことわりますか?
ワークシート5 薬物乱用と健康
ワークシート6 ドラッグに関する意識調査
主な相談機関
あとがき
前書きなど
はじめに
疲労の防止と回復に、最新除倦覚醒剤、「ヒロポン錠」。
このような宣伝文句で、覚せい剤(メタンフェタミン)が市販されていた時代がありました。
覚せい剤の乱用が大きな社会問題となり、1951年に「覚せい剤取締法」が施行されました。
そして、罰則や規制が強化され、当時の覚せい剤の問題は終息して行きました。
また、ヘロイン(麻薬)乱用者が増加したり、青少年の間でシンナーなどの有機溶剤の乱用が流行したりしたこともありました。
その都度、問題となっている薬物の使用や所持についての罰則や取締が強化され、その時々の問題は軽減していきました。
近年では、1900年代末に覚せい剤の問題がピークとなり未だ終息しておらず、2009年には大麻事犯での検挙者数がピークとなりました。
青少年の大麻乱用者が目立ったことより、大学や高校で、薬物の危険性や違法性についての啓蒙教育が強化されました。
そして、大麻事犯での検挙者は、2009年に3,087人だったのが、2011年には1,759人に減少し、そのうちの20歳代及び未成年者の割合は、61.0%から52.6%に減少しました(厚生労働省、平成24年10月「薬物乱用の現状と対策」より)。
ところが、2012年現在においては、別の薬物の問題がクローズアップされています。
ハーブやアロマ等として販売され、現在の法律での規制が難しく、「脱法ドラッグ」「合法ドラッグ」と称して流通している薬物です。
この薬物に対しても、これまでの薬物乱用対策同様に、罰則や取り締まりの強化がはかられ、それらの薬物の違法性や危険性についての啓蒙活動がすすめられているところです。
日本において、薬物の違法性や危険性を伝え罰則や取り締まりを強化し、「薬物は、ダメ、ゼッタイ」とする予防策は、問題となっている薬物の乱用を抑止する力として効果を発揮しています。
一方で、違法性を理解しているはずの警察や司法関係者、薬物の危険性を理解しているはずの医療関係者が、薬物事犯で逮捕されているのも事実です。
逮捕者の中には、教師、公務員、僧侶、タクシーの運転手、主婦、など様々な立場の人たちがいます。
薬物の危険性を伝えられても、法に触れても、職を失うことになっても、家庭を失うことになっても、使ってしまう人がいるのです。
学校においても、教員が生徒にいくら違法性や危険性を教えたとしても、薬物を乱用してしまう生徒たちがいるのではないでしょうか。
(以下略)
上記内容は本書刊行時のものです。