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子どもたちを放射能から守るために
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2011年6月
- 書店発売日
- 2011年6月1日
- 登録日
- 2011年5月19日
- 最終更新日
- 2023年3月15日
紹介
水道のお水は飲ませてもいいのですか?
野菜や魚は安全ですか?
放射能を浴びたら、どんな健康被害がでるのですか?
日本で起きてしまったレベル7の原発事故を前に、親たちの心配は限りがありません。大切な子どもたちを放射能から守るために、何をしたらいいのか。
チェルノブイリ原発事故の医療支援をした医師であり、現松本市長が、「放射能を正しく知り、放射能から正しく身を守る」方法を語ります。
目次
はじめに 6
1章放射能を浴びたら、どんな被害がでるのですか?
放射能には、どんな危険性があるのですか? 12
「ベクレル」と「シーベルト」の違いを教えてください 17
「内部被ばく」と「外部被ばく」は、どんな違いがあるのですか? 20
チェルノブイリでいちばん被害が大きかった病気はなんですか? 24
妊娠している女性はなにに気をつければいいですか? 27
ヨウ素以外の放射性物質は、体内に入るとどうなるのですか? 30
甲状腺がんは、死亡率の低いがんと聞きましたが本当ですか? 32
「内部被ばく」をしないために、どうすればいいですか? 34
放射線から身を守る方法を教えてください 37
ヨウ素剤を飲めば、放射能被害を防げるのですか? 41
2章水や野菜や魚、普通に摂ってもだいじょうぶですか?
残留放射能濃度はどうなっているのでしょう 46
どんな食べものに気をつけたらいいですか? 49
魚は安全ですか? 52
子どもたちを公園や砂場で遊ばせてだいじょうぶですか? 54
「安全」という政府の言葉を信じてよいでしょうか? 56
これから、国にできることはなんですか? 60
福島の人とどのようにつきあえばいい? 64
これから福島はどうなるのでしょうか? 66
3章 25年目のチェルノブイリ
今、チェルノブイリ被災地では…… 70
高汚染の「埋葬の村」で 74
悲しみを繰りかえさないために 78
手をつなぎ、前へ進もう 80
前書きなど
はじめに――
東日本をおそった、千年に一度という未曾有の大震災。地震と津波の影響で、福島第一原子力発電所では4つの原子炉が大きな事故を起こしました。それによって、福島に暮らす人はもちろんのこと、日本中がかつて経験したことのない不安に覆われ、その状況は今なお続いています。
事故の第一報を聞いたとき、私の頭にすぐさま思い浮かんだのは、チェルノブイリ原発事故と、その被災地のことでした。
旧ソ連邦ウクライナ共和国にある、チェルノブイリ原子力発電所で爆発炎上事故が起きたのは、1986年4月26日。今から25年前のことです。この爆発では、チェルノブイリ原発の4号炉を覆っていた約千トンのコンクリートの壁が吹き飛びました。そして、原子炉の中にあった膨大な放射性物質が舞い上がり、ヨーロッパを中心に全世界へと広がってしまったのです。人類史上最悪と言われる「レベル7」の核災害でした。
事故から10年がたった、96年から2001年までの約5年半、私はチェルノブイリ事故によって高度に汚染されたベラルーシ共和国に暮らしました。そのころ現地では、子どもの甲状腺がんが多発していました。甲状腺専門の外科医として、自分の持っている知識と技術を差し出したいと思ったのです。
この医療活動で私は、汚染された土地に生きる人たちの悲しみや苦しみに直面しました。それは、原発で事故が起きたらどうなるかという現実を、いやおうなく突きつけられる日々でもありました。
日本に戻ってからは、「今後は原発とはちがう、再生可能なエネルギーの開発にもっとお金をかけてもよいのではないか。これほど電気を無駄にしている日本人の生活様式も変えなければいけないのではないか」と、書いたり話したりしてきました。ただ、正直なことを言えば、チェルノブイリと同じような事故が、日本で起きるとは思ってもみなかったのです。
しかし思ってもみなかったことは、実際に起きてしまいました。
福島原発の事故は、チェルノブイリと同じ「レベル7」に認定されました。ところがチェルノブイリでの教訓はまったく生かされず、政府の対応は後手後手にまわっているようにみえます。いかに原発に対する危機管理ができていないかを、世界中に露呈してしまったのです。
核の災害は、自然災害とはまったく違います。最悪の事態を予測して、先へ先へと手を打っていくことが大切です。最終的に予測より悪くならなければ、「ごめんなさい、でもよかったね」と、喜び合えばよいのです。
研究者の中には「チェルノブイリ事故と福島の事故は、規模も内容もまったく違う」という人もいます。ですが医師の立場でいえば、いったん放射性物質が体内に取り込まれれば、少量であろうが影響を与えることに変わりはありません。
しかも福島では、まだ放射性物質の放出が止まっていません。決して恐怖をあおるわけではありませんが、甘く見てはいけないのです。
チェルノブイリでの経験から、私は何よりまず、子どもたちを守りたいと考えています。子どもは放射性物質に対する感受性が、大人よりもずっと強いからです。
数日前、「母乳の放射能測定をしてほしい」と、声を上げているお母さんたちがいることを知りました。自分のお乳さえ安心して子どもに飲ませることができなくなっています。どれほど不安をつのらせていることでしょう。そしてまた思います。お母さんたちの思いは、チェルノブイリでも福島でもまったく変わらないのだ、と。
チェルノブイリ事故の被災地で、人びとの体に健康被害が現れてきたのは、5年後のことでした。これから日本で起きてくるであろうさまざまな問題を最小限にくいとめるためにも、一人ひとりが放射能の正しい知識を得て、正しい判断をできるようになってほしいと願います。
これまでチェルノブイリは遠い場所であり、遠い事故であったけれど、とても身近になりました。私たちは、チェルノブイリから学んでいくしかありません。
菅谷昭
版元から一言
チェルノブイリ原発事故の被災地に赴き、外科医として医療支援を5年間にわたって続け、その後も多くの支援をしている菅谷昭・現松本市長の提言を1冊にまとめました。放射能の基本的な知識と、親たちがなにをどんなふうに気をつけたらいいのかを、コンパクトにまとめました。いつも手元において、何度も読み返していただきたいです。
上記内容は本書刊行時のものです。