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連帯の政治社会学
3.11後の反原発運動と市民社会
原書: Fukushima and Civil Society: The Japanese Anti-Nuclear Movement from a Socio-Political Perspective
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2024年5月10日
- 書店発売日
- 2024年5月16日
- 登録日
- 2024年4月18日
- 最終更新日
- 2024年6月25日
書評掲載情報
2024-09-14 |
朝日新聞
朝刊 評者: 隠岐さや香(東京大学教授・科学史) |
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紹介
原発事故から2012年にピークをみせた反原発運動。組織に属さない「普通の人々」が参与した戦後最大規模の社会運動は、日本政治や市民社会にどのような影響を与えたのか。広範なフィールドワークをもとに社会学、政治学の視角から反原発運動の包括的分析を試みた一冊。
目次
日本語版謝辞
市民社会と政治的機会構造――ベアタ・ボホロディッチ『連帯の政治社会学』解説[小熊英二]
序章
第1章 本書の分析枠組み
第2章 政治的機会と反原発運動
第3章 福島原発事故以前の反原発運動
第4章 福島原発事故後の反原発運動の展開
第5章 直接行動の団体
第6章 調査と啓発の団体
第7章 政策提言団体
第8章 支援団体
第9章 監視団体
第10章 法律関係活動
第11章 その他の団体
第12章 国家と市民社会の関係
結論
春の記憶――訳者覚え書き[木下ちがや]
前書きなど
序章
二〇一一年三月に発生した東日本大震災とそれにつづく津波、そして福島第一原子力発電所の事故という三重の災害は、日本のみならず世界各国の生活、社会、政治、経済、文化、文学、芸術にわたる多くの局面に強い衝撃を与えた。
日本において震災が直接もたらしたのは、全国五四基の原子炉すべてが停止したことと、民主党政権が二〇三〇年までの原発廃止を想定した新しいエネルギー計画を採択したことである。大規模な危機的状況、事故それ自体、そしてさらに重要なのは、その後の原発再稼働の試みが強力な反原発デモの台頭につながり、それが二〇一二年七月にピークに達したことである。二〇一二年一二月の総選挙では、原発推進派の自民党と、連立政権を組む公明党が勝利した。第二次安倍政権は、主要な電力源のひとつとして原発に回帰する「逆コース」を示唆するエネルギー計画を採択した。このような流れのなかで、かかる決定に国民の支持が得られるかが問われたのである。そして二〇一二年六月には東京都心部の首相官邸前や国会議事堂前に二〇万人もの参加者が集まる原発反対デモがあった。そこでは、誰が、どのような理由で、どのような方法で抗議したのだろうか? これらの抗議はどのような影響を及ぼしたのだろうか? これらは、反核・反原発運動の起源と発展、役割と目標、構造とメンバー、動員戦略、ネットワークの様式、さらにつきつめると運動によってもたらされた社会的、政治的な変化とは何かという問いにまで至る。
本書の目的は、こうした問いに答えるとともに、福島原発事故が日本の市民社会に与えた影響、市民社会の展開、そして、そこでなされた活動のかたちを広く捉えて検証することである。この分析は、つきつめていくと市民団体が国のエネルギー政策、あるいはより広範な意思決定プロセスに与える影響について考察することを意図している。これらの課題についての分析は、以下の節と章で詳しく論じるように、英語圏では反原発運動(anti-nuclear movement)、本研究では反原発エコシステム(anti-nuclear ecostystem)と呼ばれる、社会の諸アクターによるこれまでの営為の文脈で論じられる。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。