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「黄色いベスト」と底辺からの社会運動 尾上 修悟(著) - 明石書店
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「黄色いベスト」と底辺からの社会運動 (キイロイベストトテイヘンカラノシャカイウンドウ) フランス庶民の怒りはどこに向かっているのか (フランスショミンノイカリハドコニムカッテイルノカ)

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発行:明石書店
四六判
200ページ
上製
価格 2,300円+税
ISBN
978-4-7503-4951-0   COPY
ISBN 13
9784750349510   COPY
ISBN 10h
4-7503-4951-8   COPY
ISBN 10
4750349518   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2019年12月25日
書店発売日
登録日
2019年12月26日
最終更新日
2020年6月30日
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書評掲載情報

2020-02-09 東京新聞/中日新聞  朝刊
2020-01-19 読売新聞  朝刊
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紹介

燃料税引上げを契機としてフランスで激化した「黄色いベスト運動」は、組織や政党に頼らず、富と権力を集中させる政府への異議申し立てを行っている。格差と不平等が広がり「社会分裂」を招いている現代における新たな社会運動と民主主義のあり方を探る。

目次

序章 「黄色いベスト」運動で問われているもの

第Ⅰ部 抗議運動の展開

第一章 燃料税引上げに対する抗議運動
 一.燃料税引上げと環境政策の問題点
 二.抗議運動の勃発
 三.フランス政府の反応
 四.野党と労働組合の反応

第二章 抗議運動の激化と政府の譲歩
 一.大暴動の勃発
 二.フランス政府の譲歩
 三.抗議運動の継続とマクロンの譲歩

第Ⅱ部 モラル経済の破綻

第三章 経済的不平等の拡大
 一.経済のモラルの侵害
 二.所得格差の拡大
 三.購買力の不平等

第四章 租税システムの不公正
 一.マクロン政権下の予算案と租税対策
 二.富裕者と企業に有利な租税システム
  (一)富裕者に対する課税の減免
  (二)企業優遇の租税システム
 三.租税の不公正感の高まり
  (一)一般市民に対する課税の増大
  (二)租税のうんざり感

第Ⅲ部 社会モデルの崩壊

第五章 社会分裂の深化
 一.フランス国民の分裂
  (一)民衆の怒りの高まり
  (二)富裕者優遇政策の継続
  (三)階層対立の激化
 二.フランス地域の分裂
  (一)大都市周辺部の問題
  (二)フランス周辺部の問題

第六章 社会不安の拡大
 一.社会保障不安
  (一)失業不安
  (二)年金不安
 二.教育・文化不安
  (一)教育不安
  (二)文化不安
 三.マクロン政権の社会プロジェクト

第Ⅳ部 代表制民主主義の危機

第七章 寡頭政治体制の確立
 一.マクロンの基本的姿勢をめぐる問題点
 二.テクノクラート主導の寡頭政治体制
 三.マクロン政権の新たな対応
  (一)マクロンの新指令
  (二)暴動の鎮圧
  (三)野党の反応
 四.マクロンの国民への手紙と大討論会

第八章 市民主導の国民投票(RIC)
 一.市民主導の国民投票の提起
 二.大討論会と市民主導の国民投票
 三.代表制民主主義と寡頭支配

終章 「黄色いベスト」運動が意味するもの
 一.新時代の社会と市民運動
 二.不平等な社会と市民運動

 あとがき
 参考文献
 索引

前書きなど

序章 「黄色いベスト」運動で問われているもの

 (…前略…)

 黄色いベスト運動を論じることは、現代社会の抱える普遍的な問題を考えることにつうじる。それだけに、同運動に対する知的関心が知識人の間で非常に高まった。事実、同運動が勃発すると直ちに、その分析が大学人を中心にフランスで一挙に進められた。それは例えば二〇一九年一月に、前代未聞の反乱を理解するために刊行された一つの書物に典型的に示されている。そこでは、J・コンファヴリュー(Confavreux)の呼びかけの下で、総勢一六名の、哲学、歴史、政治、経済、社会の分野に及ぶ著名な研究者が論稿を寄せている。その中には、あのT・ピケティ(Piketty)も含まれている。もちろん、こればかりでない。同運動をめぐる書物は立て続けに刊行されたのである。このことからも、同運動が現代資本主義の世界を考える上で、いかに大きな問題を提起しているかがよくわかる。
 筆者は以上のような問題意識の下に、本書では黄色いベスト運動の詳細な経緯を辿りながら、同運動の引き起こされた経済的、社会的、並びに政治的な背景を検討することに努めた。これによって、同運動は何を意味しているか、また同運動から我々は何を学ぶべきかを考察すること、これが本書の目的である。その意味で本書は、先の拙著の続篇に当たると言ってよい。
 本書は、以上のことを論じるために、大きく四つの部から成り、序章と終章を除く八つの章で構成される。第Ⅰ部「抗議運動の展開」は、黄色いベスト運動による抗議がどのように進められたかを、年代記的に検討する。第一章では、同運動勃発の直接的契機となった燃料税引上げの問題が、また第二章では、抗議運動の過激化と、それに伴う政府の譲歩の過程が、各々論じられる。第Ⅱ部「モラル経済の破綻」は、同運動が勃発した経済的背景を分析する。第三章では、経済的不平等の拡大した姿が実証的に明らかにされ、第四章では、租税システムの不公正さが様々な税を例にしながら指摘される。第Ⅲ部「社会モデルの崩壊」は、社会の現状が抱える問題点を浮彫りにする。第五章では、社会分裂の深化した点が、国民的レベルと地域的レベルの双方から考察され、第六章では、人々の社会不安が、社会保障と教育・文化の側面から検討される。最後に第Ⅳ部「代表制民主主義の危機」は、政治体制の現状と課題を問題にする。第七章では、危機を引き起こした寡頭政治体制が、また第八章では、黄色いベスト運動の要求である「市民主導の国民投票(RIC)」が、各々論じられる。

著者プロフィール

尾上 修悟  (オノエ シュウゴ)  (

1949年生まれ。現在、西南学院大学経済学部教授。京都大学博士(経済学)。日本EU学会理事。2000年と2004年にパリ・シアンス・ポリティークにて客員研究員。主な著書は『イギリス資本輸出と帝国経済』(ミネルヴァ書房、1996年)、『フランスとEUの金融ガヴァナンス』(ミネルヴァ書房、2012年)、『欧州財政統合論』(ミネルヴァ書房、2014年)、『ギリシャ危機と揺らぐ欧州民主主義』(明石書店、2017年)、『BREXIT「民衆の反逆」から見る英国のEU離脱』(明石書店、2018年)、『「社会分裂」に向かうフランス』(明石書店、2018年)、A・アルティ『「連帯金融」の世界』(訳書、ミネルヴァ書房、2016年)、『国際金融論』(編著、ミネルヴァ書房、1993年)、『新版 国際金融論』(編著、ミネルヴァ書房、2003年)、『新版 世界経済』(共編著、ミネルヴァ書房、1998年)、『イギリス帝国経済の構造』(共著、新評論、1986年)、『国際経済論』(共著、ミネルヴァ書房、1987年)、『国際労働力移動』(共著、東京大学出版会、1987年)、『世界経済』(共著、ミネルヴァ書房、1989年)、『新国際金融論』(共著、有斐閣、1993年)、『世界経済論』(共著、ミネルヴァ書房、1995年)、『世界経済史』(共著、ミネルヴァ書房、1997年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。