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言語と格差 杉野 俊子(編著) - 明石書店
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言語と格差 差別・偏見と向き合う世界の言語的マイノリティ

発行:明石書店
A5判
240ページ
上製
定価 4,200円+税
ISBN
978-4-7503-4133-0
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2015年1月
書店発売日
登録日
2015年1月23日
最終更新日
2015年1月23日
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紹介

多民族国家はもちろんのこと、普段あまり意識されないが日本国内にも言語的弱者が存在し様々な問題を抱えている。グローバル化に伴い頻繁に人びとが移動する現在、異なる言語話者を社会はどのように受け入れていけばよいかを、世界各国の事例から考える。

目次

 まえがき


第1部 日本のなかの「言語と格差」

第1章 手話と格差―現状と今後にむけて

 コラム1 琉球側の視点から視る「琉球諸語」と「琉球の歴史」
 コラム2 樺太アイヌ語の場合――絶滅言語研究者の立場から

第2章 日系ブラジル人――時空を超えた言語・教育と格差の中で

 コラム3 中国から来日した女性たちの生活と言語の格差

第3章 外国人高齢者への言語サービス

 コラム4 「英語格差(イングリッシュ・デバイド)」現象をめぐって
 コラム5 今、帰国生に求められるもの


第2部 世界における「言語と格差」

第4章 教育改革と言語的弱者――コモンコア(全米共通学力基準)・アメリカ教育改革の現状

第5章 アメリカにおける言語格差と双方向バイリンガル教育

第6章 ニュージーランドのマオリ語教育に関する考察――バイリンガル教育における文化的格差

第7章 カナダの少数派――フランス語系カナダ人と移民

 コラム6 西欧語によって結ばれるアフリカ・分断されるアフリカ

第8章 アラブ首長国連邦(UAE)ドバイにおける英語と経済―UAEナショナル/エミラティの女子大学生の意識調査に基づく報告

 コラム7 多言語国家パプアニューギニア独立国

第9章 インドにおける言語と学校教育――社会流動性と格差の再生産

 コラム8 タイにおける少数派グループの教育と社会階層
 コラム9 ベトナムの少数民族の教育と言語問題

第10章 香港とマカオにおける言語教育―――旧宗主国の違いは言語格差をもたらすのか


 あとがき

前書きなど

まえがき

 (…前略…)

 本書は先に著した『言語と貧困――負の連鎖の中で生きる世界の言語的マイノリティ』松原好次・山本忠行編(明石書店2012年)の続編である。『言語と貧困』は「グルーバル化が進む世界で、実は我々の言語もマイノリティだ。英語など優性言語とどう対峙するかは長年の議論があり、今後より顕在化するだろう。さらにアイヌ語、琉球語など内なる少数派を思い起こすなら、本書で描かれる世界的ジレンマは、まさに我々自身のものである」という書評を得た(川端裕人 2012)。
 本書の第1部はまさに内なる少数派である「日本の中の言語と格差」に目を向けていく。第1章(佐々木倫子)では、手話全般と日本語との格差、ならびに、手話内の格差がその使い手たちにどのような格差をもたらしているかという現状とそれを招いた要因を整理し、今後の方向を提示している。コラム1(比嘉光龍)では、琉球諸島の6つの言語、「琉球言語」の復活活動に携わった経験から、琉球諸語と琉球の歴史を琉球人の視点から視ている。コラム2(村崎恭子)は、樺太アイヌ語を絶滅言語研究者の立場から「言語と格差」について述べた後で、差別と偏見から未来へとこれから私たちができることすべきことを示唆している。第2章(杉野俊子)は、「グローバルに拡散する日本人・日系人を論じる時に、歴史的観点に欠け、通時的考察が欠けている論者が多い」という指摘から、ブラジル性の構築を含めて日系ブラジル人の「言語と教育」と「社会的格差」の関係を歴史的・包括的に見ていき、問題点の他に示唆も羅列している。コラム3(近藤功)は、日本国内に住む中国出身の女性たちの言語と生活の格差を聞き取り調査から浮き彫りにしている。第3章(河原俊昭)では、日本在住の外国人たち、特に高齢化へと進むニューカマーが、多文化多言語共生時代を日本人と外国人が格差なく生きていく支援方法と条件を考察している。コラム4(岡戸浩子)は、グローバルな展開に伴い、近年の日本企業は英語に堪能な人材を求める傾向が認められ、英語偏重主義が日本社会にもたらしている格差について問題提起している。コラム5(井上恵子)は、最近では西洋とアジアからの帰国生ではそれぞれ英語に対する捉え方に相違点があり、これからの帰国生に求められるのは英語習得という表面的利点だけではないことを指摘している。
 第2部は、世界における「言語と格差」という枠組みで、米国・カナダなどの英語圏と、アジア各国における言語・教育政策がもたらす格差について論じていく。第4章(波多野一真)では、アメリカ教育改革の現状として、グローバリゼーションを背景とした利を追求する視点と、言語的弱者のための善の視点がアンバランスに交差する状況を考察し、格差拡大を引き起こす可能性とそのメカニズムを論じている。第5章(カレイラ松崎順子)は、「アメリカにおける言語格差と双方向バイリンガル教育」の中で、バイリンガル教育の現状を詳述した後、社会的弱者である移民にとって、双方向バイリンガル教育が一番望ましいプログラムであると示唆している。第6章(蒲原順子)では、ニュージーランドのマオリ族の言語政策として、母語継承のためのバイリンガル・イマージョン教育と、白人対マオリという構図から見える言語と文化の格差の問題からその根本的な原因であるグローバリゼーションの問題も浮き彫りにしている。第7章(長谷川瑞穂)は、カナダの少数派であるフランス語系カナダ人と移民に焦点を当て、英語が主流のカナダ社会での彼らの言語問題などを考察している。
 コラム6(山本忠行)は、アフリカ諸国において、西欧語によって民族間の対立を防ぎ、平和と繁栄を目指すという独立時の目標とは裏腹に、西欧語使用が国民の間に格差を生み、階層を分断している実態を明らかにしている。第8章(田中富士美)はアラブ首長国連邦のドバイにおいて、英語がどのような役割を果たしているのかについて、女性の社会的向上意識と女子学生の英語に対する意識調査の結果を述べている。コラム7(薬師京子)では、世界の言語の15%にあたる850もの言語が存在するパプアニューギニア独立国の多言語事情、教育制度の課題と展望を含めて紹介している。第9章(野沢恵美子)は、インドの学校教育における言語習得機会を通して、多言語社会インドで言語がどのように社会経済的、文化的な階層化と結びついているか、農村における女性にも焦点を当てながら考察している。コラム8(ラサミ・チャイクル)、コラム9(ホ・グウェン・ヴァン・アン)では、前者はタイ王国、後者はベトナム社会主義共和国における言語少数派に対する言語・教育問題について取り上げている。最終章・第10章(原隆幸)は中国に返還され、一国二制度のもと国家を形成している香港とマカオにおける言語教育と就職の関係を比較、考察している。両国の言語教育は現在、旧宗主国と中国の影響を大きく受けており、その要因を明らかにする。また、旧宗主国がもたらした言語格差に関しても考察している。言語と社会的格差の問題は、経済情勢やグローバル化の影響で変化している。格差は経済的なところに一番表れやすいが、その経済格差は多数派によって恣意的に行われた言語政策や教育政策が原因になっている場合が多々あり、それによって不利益を被るのは少数(言語)派であるということを、本書を通じて読者の皆様と共有できたら幸いである。

著者プロフィール

杉野 俊子  (スギノ トシコ)  (編著

工学院大学 基礎・教養教育部門外国語科教授、前職は防衛大学校教授。JACET言語政策研究会代表、日本言語政策学会理事、JALT日本語編集長。ボール州立大学数学科卒業、アリゾナ州立大学大学院英語教授法専攻修士修了、テンプル大学大学院教育学部CITE学科博士課程修了、博士(教育)
専攻:英語教育学、社会言語学
主な著書・論文:『言語と貧困』第9章「故郷に錦が貧困に変わった時――在日ブラジル人の場合」、コラム3(共著、明石書店、2012年)、『アメリカ人の言語観を知るための10章――先住民・黒人・ヒスパニック・日系の事例から』(大学教育出版、2012年)、『英語教育政策――世界の言語教育政策論をめぐって』(JACET50周年記念刊行・英語教育学体系第2巻)(共著、大修館書店、2011年)、Nikkei Brazilians at a Brazilian School in Japan: Factors Affecting Language Decisions and Education(慶應義塾大学出版会、2008年)

原 隆幸  (ハラ タカユキ)  (編著

鹿児島大学教育センター特任准教授、JACET言語政策研究会副代表、JACET九州・沖縄支部事務局幹事。杏林大学大学院国際協力研究科博士前期課程修了、明海大学大学院応用言語学研究科博士後期課程修了、博士(応用言語学)
専攻:応用言語学、言語政策、言語教育
主な著書・論文:「グローバル時代に求められる日本の英語教育――スキル重視から言語文化教育へ」(『鹿児島大学言語文化論集VERBA』No.38、2014年)、「大学生の学力変化と共に多様化する大学英語教材の役割」(『異文化の諸相』No.31、2011年)、「「両文三語」は香港にとって真の豊かさへの道か」『言語と貧困』(共著、明石書店、2012年)、「香港―教員養成とその評価試験」『小学生に英語を教えるとは?――アジアと日本の教育現場から』(共著、株式会社めこん、2008年)

上記内容は本書刊行時のものです。