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最終推理 狭山事件 甲斐 仁志(著) - 明石書店
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最終推理 狭山事件 (サイシュウスイリサヤマジケン) 浮かびあがる真犯人 (ウカビアガルシンハンニン)

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発行:明石書店
四六判
300ページ
並製
定価 2,400円+税
ISBN
978-4-7503-4075-3   COPY
ISBN 13
9784750340753   COPY
ISBN 10h
4-7503-4075-8   COPY
ISBN 10
4750340758   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年9月
書店発売日
登録日
2014年9月19日
最終更新日
2014年9月22日
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紹介

1963年に起きた狭山事件は、被差別部落出身の石川一雄さんに対する差別的なえん罪事件として、半世紀を経た今なお裁判が続いている。本書は、真相究明に長く関わってきた著者が、脅迫状を読み解き、死体の声を聞いて、真犯人像に肉迫したもの。

目次

 はじめに──市民の経験則による評決を


第一部 狭山事件の構図

 第一章 事件のあらまし
 第二章 捜査地図
 第三章 営利誘拐事件と誘拐推理小説・映画
 第四章 吉展ちゃん事件の真似?
 第五章 誕生祝いの最終食事
 第六章 下校時刻
 第七章 最終目撃者
 第八章 犯行現場はどこか
 第九章 犯行時刻を推理する


第二部 奇妙な脅迫状

 第十章 書き換えられた脅迫状・封筒
 第十一章 狭山湖四人組強盗犯の犯行か?
 第十二章 犯人は詩歌俳人
 第十三章 「かい人21面相」を超える犯人
 第十四章 脅迫状の一二の偽装工作
 第十五章 脅迫状の言葉遊び──「通夜・溺死なしへ」


第三部 死体は語る

 第十六章 強姦か、合意の性交か
 第十七章 背後からの腕締め
 第十八章 自己主張する善枝さん
 第十九章 「捜索後発見七物証」の仕掛人
 第二十章 死体埋没の謎


第四部 真犯人は別にいる

 第二十一章 多重偽装・狭山事件
 第二十二章 最終推理
 第二十三章 五つの犯人・犯行仮説の検証
 第二十四章 石川一雄さんは無実


 おわりに──冤罪を生まない捜査・裁判と弁護へ

  あとがき
  参考文献

前書きなど

はじめに──市民の経験則による評決を

 一九六三年の狭山事件発生から半世紀、五一年が経過し、『狭山事件を推理する』(三一書房:一九八八年)を書いてから二六年がたった。そのあらすじは本書冒頭に記すが、狭山事件は被差別部落出身の石川一雄さんに対する差別的な冤罪事件として注目を浴びてきた。
 前著では、東京高等裁判所寺尾正二裁判長らの「女子高校生誘拐・強姦殺人事件」の無期懲役判決と、支援者の『週刊埼玉』社長の亀井トム氏らの「女子高校生誘拐・身代金奪取偽装の四人共犯による強姦殺人事件」という二つの事件像に対し、狭山事件は「部落民なりすまし犯」による「幼児誘拐・女子高校生誘拐・強姦・身代金奪取の四重偽装殺人事件」という新たな事件像を提起した。
 当時、「犯行現場」隣の畑での農作業者や万年筆でっち上げに関わる刑事の証言など、弁護団は数々の新証拠を提出しており、私は再審が開始されて無罪判決が下されるものと確信していたが、その考えは甘かった。再審は棄却され、一九九四年に仮出所した石川一雄さん(73歳、事件当時24歳)は現在、第三次再審を請求し、東京高裁前で無実を訴え続けている。
 私の提案した事件像・犯人像は、裁判にも亀井説に影響された支援運動や弁護団活動にもインパクトを与えるだけの力を持っていなかった。その後、元朝日新聞記者の殿岡駿氏とルポライターの伊吹隼人氏が、私の説とは異なる真犯人像の著書を書かれていることからみても、私の前著は力不足であった。
 この二六年間は狭山事件からは離れ、ひたすら仕事に没頭してきたが、やっと自由になった。再度、事件の真相解明の作業を開始し、ホームページ「新推理・狭山事件」を書き続け、「最終推理」に到達することができた。

 第一は、善枝さんの最終目撃者と最終目撃地点、最終食事を確定できたことである。「幼児誘拐犯が、たまたま通りかかった善枝さんを捕まえた」という犯行像は根底から崩れ、「幼児誘拐偽装事件」「女子高校生誘拐偽装事件」であることが証明できた。再審裁判の上では決定的な「アリバイ証明」になる。
 第二は、善枝さんの死体にきちんと向き合い、その最後の声を聞くことができたことである。すべての小さな傷を見逃さず、後背位による性交と、裸絞と軟性物による止めの絞殺を明らかにすることができた。この事件が「強姦偽装事件」であることは、再審裁判では「犯行動機の否定」になる。
 第三は、脅迫状の分析から、犯人は高度な詩的表現能力と言葉遊びの経験を持つ詩歌俳人であることを突き止めたことである。再審裁判の上では「犯行不能証明」であり、指紋やDNA鑑定に匹敵する重要な証明である。
 第四は、脅迫状を中心に、犯人の偽装工作の全体を明らかにできたことである。再審裁判の上では、「捜査の誤りと不正」を証明できた。

 この二六年間で時代は大きく変わりつつある。それは、裁判員制度の開始である。この裁判員制度は、アメリカの陪審制度と較べて中途半端と言わざるをえないが、大きな一歩前進である。
 市民の多様な経験に基づく判断が事実認定の基準になることが公認されたからであり、有罪無罪の判断基準を「市民の経験則(市民常識)」に置くという大原則が確立されたことは大きい。
 さらに、「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の利益に」「合理的疑いを残さない有罪証明」などのわかりにくい原則ではなく、アメリカのように「他に犯人がいる可能性が残れば無罪」という、市民にとっては単純明快な原則が認められたことである。
 私は、この狭山事件において、「他に犯人がいる可能性」を「市民の経験則(市民常識)」に基づいて示したい。
 裁判の誤りを問う再審裁判員制度はまだ実現できていないが、読者の多様な人生・職業経験に基づく「推理(合理的・論理的な推測)」によって、皆さんが狭山事件にどのような評決を下されるか、ご判断を仰ぎたい。

著者プロフィール

甲斐 仁志  (カイ ヒトシ)  (

1946年兵庫県生まれ。京都大学工学部大学院・離籍。まちづくり計画の会社経営をへて、現在は古代史研究と社会活動。友人の誘いで狭山事件分析に入り、88年に『狭山事件を推理する――Vの悲劇』(三一書房)を出版。いつまでたっても再審開始にならないことに不満で、2010年よりホームページ「新推理・狭山事件」で未解明の謎の分析を再開、本書はその成果である。

上記内容は本書刊行時のものです。