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誰が星の王子さまを殺したのか 安冨 歩(著) - 明石書店
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誰が星の王子さまを殺したのか (ダレガホシノオウジサマヲコロシタノカ) モラル・ハラスメントの罠 (モラルハラスメントノワナ)

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発行:明石書店
四六判
256ページ
上製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-7503-4045-6   COPY
ISBN 13
9784750340456   COPY
ISBN 10h
4-7503-4045-6   COPY
ISBN 10
4750340456   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年8月
書店発売日
登録日
2014年8月22日
最終更新日
2014年9月22日
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紹介

星の王子さまとバラとのこじれた恋愛関係に焦点をあて、ハラスメントの物語として読み直した、これまでにない視点の『星の王子さま』論。なぜ王子はバラの棘の話で怒りをあらわにしたのか、なぜキツネは王子に「飼いならして」と言ったのか。物語の謎が解き明かされる。

目次

 まえがき

1 物語の構造

2 バラのモラル・ハラスメント

3 キツネのセカンド・ハラスメント

4 「飼いならす」とは何か

5 ボアの正体

6 X将軍への手紙

7 おとなの人・バオバブ・羊

 あとがき
 文献

 解題[藤田義孝]

前書きなど

まえがき

 『星の王子さま』は美しく、悲しい物語である。それは読む者の心に迫る力を持っている。それと同時にこの本は、謎に満ちた物語でもある。
  多くの読者は、この謎を、謎のままに残しておきたいと思っているのではないだろうか。確かにこの謎めいた雰囲気が、同書の魅力となっているのは事実である。
 しかし私は、この謎の一つひとつを、深く考えてみたいと思う。というのも、この本は、著者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの残した、貴重なメッセージであり、その深い意味を、恐れずに真剣に受け止めることが、同書を愛する者として、避けては通れないことのように感じるからである。またそれは、最後に毒蛇に自らをませて砂の上に倒れるに至った王子が、必死で残したメッセージでもある。
 もちろん、この本の持つ魅力を失わせるような形で物事を暴き立てることはしたくない。そうではなく、言葉の意味を、一つひとつ丁寧に、読者のみなさんと一緒に、受け止めていきたいと思う。それがこの本の魅力と価値とをさらに高めてくれるものと信じる。
 『星の王子さま』が描き出しているものは何か。それは人間というコミュニケーションなしでは生きられない生き物が取り交わす、そのコミュニケーションそのものに潜んで人間を苦しめる「悪魔」の真相だと私は考えている。サン=テグジュペリは、この悪魔に取りつかれ、悶え苦しみながら生き抜いて戦い続け、そして死んでいった。『星の王子さま』はその悪魔についての命がけの報告書なのである。
 なお、私はこの本に取り組むまでフランス語を勉強したことがなく、まったくの付け焼き刃で挑むことになった。そこで本書では、『星の王子さま』のテクスト解釈については、

加藤晴久『自分で訳す星の王子さま』三修社、二〇〇六年
加藤晴久『憂い顔の『星の王子さま』――続出誤訳のケーススタディと翻訳者のメチエ』書肆心水、二〇〇七年

に主として従い、

The Little Prince, translated by Richard Howard, Mariner Books; 2000

を参考にした。もちろん、フランス語に堪能な方々の助力を受けて、私の解釈が成り立つかどうかチェックしていただいた。
 このように解読したテクストを、マリー=フランス・イルゴイエンヌが「モラル・ハラスメント」という概念を提唱した名著、

Marie-France Hirigoyen, Le Harcelement moral: La Violence perverse au quotidien, Presse Pocket, 2011(初版は La Dcouverte et Syros, Paris, 1998)

に主として基づいて解読する。というのも、私は彼女の提案した概念こそが、コミュニケーションに潜む悪魔の正体を明らかにしている、と考えるからである。
 この解読によって浮かび上がる『星の王子さま』の像は、この作品の魅力を、より深い次元で明らかにしていると私は信じている。そしてこの像は、全人類の直面する巨大な困難に対する、重要な回答を示唆しているとさえ考えている。

著者プロフィール

安冨 歩  (ヤストミ アユム)  (

1963年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。京都大学人文科学研究所助手、ロンドン大学政治経済学校(LSE)滞在研究員、名古屋大学情報文化学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科・情報学環助教授を経て、東京大学東洋文化研究所准教授、2009年より同教授。博士(経済学)。主な著書に、『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』『親鸞ルネサンス』〈共著〉『原発ゼロをあきらめない』〈共著〉『ジャパン・イズ・バック』(以上、明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』『学歴エリートは暴走する』(以上、講談社α新書)、『生きる技法』『合理的な神秘主義』(以上、青灯社)、『今を生きる親鸞』(共著、樹心社)、『ドラッカーと論語』(東洋経済新報社)、『生きるための論語』(ちくま新書)、『超訳 論語』(ディスカバー21)、『経済学の船出』(NTT出版)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『複雑さを生きる』(岩波書店)、『「満洲国」の金融』『貨幣の複雑性』(以上、創文社)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。