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復興は教育からはじまる
子どもたちの心のケアと共生社会に向けた取り組み
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2014年5月
- 書店発売日
- 2014年5月20日
- 登録日
- 2014年5月16日
- 最終更新日
- 2014年9月29日
紹介
東日本大震災をきっかけにこれまで出会うはずのなかった人々が福島浜通りに集結した。立場や専門を超え、医療・看護から子どもの心のケア、学校の復興にと尽力していく。本気で問題に取り組む大人たちを見て、相双地区の子どもたちはどう変わっていったのか。
目次
序 どうして子どもたちのケアが必要だったか[宮澤保夫]
はじめに[上昌広]
第1章 震災後の子どもたちと学校――地域に生きる養護教諭としての関わり[井戸川あけみ]
1 避難所としての学校
2 区域外就学へ
3 学校再開
4 先生との別れ
5 仮設校舎への移転と子ども
6 スタートラインへ
7 変わらない現実
8 子どもの心の変化
9 蝕まれていく心と体
10 仮設住居の中で
11 3年目の仮設校舎
12 保健室で
13 子どもの心の変化を知る
14 丁寧に関わる
第2章 揺れる子どもたちの心[安部雅昭]
1 学校の再開
2 カウンセリングの実施
3 ストレスアンケートと心理教育
4 被災地へ向かう
5 子どもの心の支援へ
6 専門性の活用と連携
7 家族との関係
8 子ども同士の関係
9 3年目を迎えての学校の評価とニーズ
10 これからの課題
スペシャルレポート1 高校教師から見た子どもたち[高村泰広]
第3章 浜通りで心のケアをすること[西永堅]
1 不安
2 復興ではなく成長を支援する
3 相双地区へ向かった動機
4 認知発達という視点
第4章 解決志向の被災地支援――相馬フォロアーチームの活動を通して[吉田克彦]
1 はじめに
2 被災地心理支援の問題点
3 相馬フォロアーチームのスタンス
4 相馬フォロアーチームの活動
5 さいごに
スペシャルレポート2 養護教諭として、どう子どもの未来を守るか[前嶋明美]
第5章 震災後の変化の中で――心のケアと学習サポート[三森睦子]
1 復興が見えてこない不安の中からのスタート
2 生徒たちをめぐる生活環境――「仮設」のままでの3年間
3 「群青」の子ら
4 心のケア――カウンセリングと相談
5 生徒であふれていた保健室
6 未来につながる学習サポート
第6章 小学校・中学校訪問を通した関わり
Ⅰ 個別面談からみる様子[今中紀子]
1 2012年度の小学校の概要
2 2013年度の小学校の概要
3 個別面談からみる子どもの様子
4 個別面談からみる大人の様子
Ⅱ 関わり合いを通して個別面談につなげる[中澤敏朗]
1 年間の取り組み(概要)
2 信頼関係の構築から個別面談につなげる
3 年間活動を振りかえって
Ⅲ 個性と特性――ある中学校の取り組み[福井美奈子]
1 南相馬への派遣
2 中学校の取り組み
3 WISC-Ⅲの実施
4 個性と特性
スペシャルレポート3 予備校教師としての関わり[藤井健志]
第7章 子どもを守る親が動く[細田満和子]
1 原発30キロ圏内への差別
2 福島の外には行けない
3 Mさんの投書
4 その後の思い
5 震災後の決意
6 地域の除染活動
7 食品の放射線測定器の開発
8 そうまサイエンスカフェ
9 子どもを守る親の思い
第8章 子どもを守る放射線教育[坪倉正治]
1 活動の経緯
2 内部被ばくについて
3 外部被ばくについて
4 放射線教育の重要性について
スペシャルレポート4 アスリートとしての関わり[長塚智広]
第9章 災害と教育[越智小枝]
1 災害の遺産
2 正解のない問題に対する決断と学び
3 個人の倫理と公共倫理
4 限られた資源の中での優先順位づけ
5 思考停止しない議論
6 教育への可能性
7 さいごに
第10章 本気で動く人たちが変えてゆく[上昌広]
1 浜通りへ
2 地震医療ネットワーク
3 ジャーナリストとの共同作業
4 ソーシャルメディアの活用
5 ボランティアの大学生たち
6 相馬市との出会い
7 ネットワークによる問題解決
8 災害時に行政に求められるのは「規制緩和」
9 坪倉正治 内科医・東京大学医科学研究所
10 星槎グループ
11 復興は現場から動き出す
スペシャルレポート5 ボストンからの訪問者が見た浜通りの今――志を同じくする者が集まったからできること[渡辺由佳里]
相双地区活動レポート
相双地区活動レポート1 東日本大震災直後の緊急支援[山越康彦]
相双地区活動レポート2 北の大地への送り出し[髙橋浩之/斉藤誉幸]
相双地区活動レポート3 北の大地に会いに行こう(芦別)[牧野秀昭]
相双地区活動レポート4 北の大地に会いに行こう(帯広)[森実さとみ]
相双地区活動レポート5 相馬でのサッカースクール[小柳浩二]
相双地区活動レポート6 浪江町での放射線測定[上泉義朗]
相双地区活動レポート7 東日本大震災から3年を振り返って[三橋國嶺]
相双地区活動レポート8 星槎寮における震災支援活動の後方支援[尾﨑達也]
おわりに――共生:関わり合いの中で見えてきたもの[細田満和子]
前書きなど
はじめに
東日本大震災から3年が経とうとしている。私は縁あって、福島県浜通りの北部地域の支援を続けている。ちょうど、原発事故で汚染された地域である。
この地域の別名を「相馬地方」という。鎌倉時代から幕末まで相馬家が治めたからだ。現在も相馬家は健在で、この地方の歴史的文化遺産である相馬野馬追いでは、相馬家の当主が「総大将」を務めることが多い。
(…中略…)
現在、相馬地方には、全国から教育の専門家が訪れ、地元の関係者と協働作業を続けている。この中には、我々のような医師もいれば、臨床心理士、予備校講師、五輪メダリスト、発達障がい教育の専門家など、多彩なバックグラウンドを持つ専門家が含まれる。
相馬地方は、かれらを温かく受け入れ、自らのペースに落とし込み、着実に成果を上げつつある。本文中でも紹介されているが、地元の進学校である福島県立相馬高校は、震災以降、名門大学への合格者数が飛躍的に増え、2013年春には13年ぶりに東京大学への合格者も出した。成果は進学だけに限らない。放射線対策、心のケアなどの成果も注目されている。
本著は、相馬地方を舞台に地元の人々と全国からの支援者が、協力しながら独自に進めている復興の記録である。第1章から第10章では、相馬地方の学校や教育の現場を中心に、地元の学校教諭、教育・心理・医療などを専門とする支援者たち、そして保護者による、子どもたちの心の揺れとそれに対するケアの状況について書かれている。スペシャルレポート1~5では、国内外から相馬地方に向かった様々な立場の支援者による地域の人々や子どもたちとの関わりの様子が綴られている。相双地区活動レポート1~8では、震災直後から相馬市内に事務所と宿泊所を構え、継続的な支援を実施している星槎グループによる活動の概要が記されている。
我が国は資源に乏しい小国だ。そして、日本全国、いつどこで大災害が起こってもおかしくない。財産は人材だけだ。東日本大震災以降の地元の人々と支援者の奮闘は人ごとではない。この試行錯誤を学ぶことは、多くの読者にとって貴重な経験になるだろう。是非、じっくりとお読みいただければ幸いである。
執筆者を代表して 上昌広
上記内容は本書刊行時のものです。