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海よ里よ、いつの日に還る 寺島 英弥(著) - 明石書店
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海よ里よ、いつの日に還る 東日本大震災3年目の記録

発行:明石書店
四六判
312ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-7503-3968-9
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2014年2月
書店発売日
登録日
2014年2月26日
最終更新日
2014年2月26日
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書評掲載情報

2014-12-21 読売新聞
評者: 濱田武士(漁業経済学者、東京海洋大学准教授)
2014-12-14 毎日新聞
評者: 小俣一平(東京都市大学教授)
2014-04-13 読売新聞
評者: 濱田武士(漁業経済学者、東京海洋大学准教授)

紹介

被災地の現状を丹念に追いかけ、伝えつづける河北新報編集委員の震災後3年目の報告。厳しい現状と向き合いながら地道に生活の再建と希望を見い出す糸口を見つけだそうとする人ひとの歩みを共感をもって描き出す。

目次

 はじめに

第1章 ふるさとは近く遠し
 眠れる石仏の守り手
 ふた巡りの春彼岸、それから
 離れても、浪江を忘れず
 焼そばがつなぐもの

第2章 立ち上がれども、復興はいずこ
 小さき浜の誇り
 神と共に生きる浜
 市場原理の風に吹かれ
 保育園建設の苦闘
 作り手の消えた田んぼ

第3章 奪われたもの、取り戻すべきもの
 福島の浜、新たな試練
 「なりわいの社会」をかけて
 風評に立ち向かう
 再起の思いを一つに
 サケが上る川、再び

第4章 未来図を探す人びと
 長泥から問う
 楽園を守る人
 耐えて花を待つ
 除染土に埋もるるまじ
 天明の末裔として

終章 同胞をつなぐ、はるか京都の地で

 おわりに――震災4年目への伝言

前書きなど

はじめに

 2011年3月11日、大津波が東北の太平洋岸をのみこみ、福島第1原子力発電所の壊滅的な事故と放射能汚染が数百万人の暮らしを巻き込んでから、3年がたちました。「復興」という言葉が数え切れぬほど語られましたが、被災地となった古里の姿、汚染や風評という消えぬ痛み、失われた家族や隣人との暮らし、何よりも傷ついた人の心の取り返しのつかなさを、誰もが胸に思っています。3年という時間は何も解決せず、何も癒さず、新たな問題を生み出しては山積させ、この瞬間にも、厳しい選択を迫っています。待つか、踏み出すか、とどまるか、離れるか、帰るか、帰らぬか、ふんばるか、もうふんばれぬか──。
 1年前の3月11日、荒れ野のままの石巻市門脇町の寺で3度目になった鎮魂の祈りを取材し、翌日、名古屋の経済界関係者の催しを訪ね、被災地の現状に耳を傾けてもらいました。そして、同じ会場で大手不動産会社トップを招いたセッションの盛況を目の当たりにし、参加者たちがアベノミクスと景気回復への期待を口々に語るのを聞きながら、招いてくれた主催者への感謝とともに、異邦人の孤独のような複雑な思いに襲われました。
 それから巨額の復興事業が被災地にバブルを生じさせ、建築建設の資材、人件費の高騰と相次ぐ入札不調、働き手の流出をも招き、「復興の足を引っ張っている」という嘆きを石巻で聴きました。「(福島第1原発の汚染水の)状況は完全にコントロールされている」という安倍晋三首相のブエノスアイレスでの発言が福島の浜の人々を怒らせ、テレビの向こうの虚構のように映った2020年東京オリンピック熱に、新たな危惧を覚えました。高度経済成長期の東京五輪の建設ラッシュに吸い込まれた東北の出稼ぎ者の歴史もよみがえるのではないか、古里を再生しようとする自助、自立の芽まで空洞化にのまれないか、と。
 この本は、11年3月から書き続ける被災地取材記のブログ『余震の中で新聞を作る』の90~109回(13年2月~14年1月)を、「震災3年目の記録」として加筆、再構成しました。河北新報の震災報道の一環として、苦境の古里を人々はどう生きるのか──を社会面連載「ふんばる」などで報じ、ノートに記した当事者の声、ありのままの事実を余すところなくブログに書きとどめる。それを3年間、自分なりの仕事としてきました。当事者が語り、目にした事実、においや暑さ寒さのどんな一片も、伝えるべき、記録すべき、共有されるべきもの、と考えるからです。情報だけで震災の実相は分かりません。地方紙の領域を超え、当事者の声を被災地の外へつなぐのがブログ。読む人が石巻の浜や相馬の海、飯舘村の里へ思いを飛ばし、「奪われたもの、取り戻すべきものが、いつの日に還るのか」という語り合いに耳を傾け、起きている現実を追体験できるように、と願っています。
 地方紙記者の取材は、1本の記事を書いて終わりではなく、そこからが始まりです。縁ができた人を何度も訪ね、「遠くの他者」であることの壁を乗り越えて、初めて、発せられる言葉の意味、根っこにある事実、見えなかった状況や前史も見えてきます。通うことで知る変化や驚きが、続報になります。「忘却と風化、風評」の壁を超え、続報を伝えることが、震災4年目も変わらぬ、われわれの役目です。そうした日々の事実を掘り起こしてきた河北新報の同僚たちの記事も、本文で紹介しています。

 (…後略…)

著者プロフィール

寺島 英弥  (テラシマ ヒデヤ)  (

河北新報社編集局編集委員
1957年、福島県相馬市生まれ。早稲田大学法学部卒。論説委員、編集局次長兼生活文化部長を経て2010年から現職。02~03年にフルブライト留学で渡米。東北の暮らし、農漁業、歴史などの連載企画を長く担当し、11年3月から震災取材に携わる。ブログ「余震の中で新聞を作る」。
著書に『シビック・ジャーナリズムの挑戦――コミュニティとつながる米国の地方紙』(日本評論社)、『東日本大震災 希望の種をまく人びと』(明石書店)、『悲から生をつむぐ――「河北新報」編集委員の震災記録300日』(講談社)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。