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人生の塩
豊かに味わい深く生きるために
原書: LE SEL DE LA VIE
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年11月
- 書店発売日
- 2013年11月30日
- 登録日
- 2013年11月18日
- 最終更新日
- 2013年11月18日
書評掲載情報
2013-12-22 | 日本経済新聞 |
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紹介
日々の些細な出来事も、とるにたりない思い出も、共感と好意のまなざしを注げば、人生に味わいを与える「塩」となり、人生はもっと豊かになる。レヴィ=ストロースに学び、フランスを代表する人類学者である著者が、人生に疲れたあなたに贈るサプリメント!
目次
日本の読者へ
人生の塩
まえがき
2011年8月13日/8月13日、数時間後/8月14日/8月15日、18時27分/2011年8月17日/8月18日/10時間後/8月21日/8月24日/9月2日/9月4日/9月6日/9月10日/9月15日/9月23日/10月10日
おわりに
いくつかの手がかり
訳注
訳者あとがき
前書きなど
訳者あとがき
本書は二〇一二年二月にオディル・ジャコブ社から出版された『人生の塩――ある友への手紙』の全訳である。なお、本書に掲載されている写真は、日本語版用に著者のご好意により提供いただいたものである。
著者のフランソワーズ・エリチエ(一九三三~)は構造主義の人類学者で、特に、長年にわたるブルキナファソでの現地調査に基づく親族関係や近親相姦の禁止に関する理論で新境地を開いた。一九八二年には、本文にも出てくるように、クロード・レヴィ=ストロースの後継者としてコレージュ・ド・フランスの教授に就任している。また、学識経験者として、エイズや生殖補助医療などの社会問題にも積極的に関与し、その発言は常に注目を集めている。
彼女のこうした経歴からは意外ともいえる、一種の散文詩のような本書がフランスでベストセラーになったのは、テキストの魅力は勿論であるが、そうした知名度とも無関係ではないだろう。しかし、日本ではまだ彼女の仕事は翻訳紹介されておらず、初めて名前を見た読者が大半ではないだろうか。では、何故あなたは本書を読んでみたいと思われたのだろうか。彼女がするように「本をまずは所々少しずつ嗅いでみてよさそうだから最後まで読んでみよう」と思われたのなら、あなたの嗅覚は確かである。
本書の魅力は、まさに五感で感じること、そして共感することの幸福感にある。それはエリチエの個性であると同時に、彼女が人類学者という職業をとおして獲得した物の見方、さらには彼女の研究対象である未開人の「野生の思考」にも通じるものではないだろうか。人類の祖先は、まず感覚によって周りのものを観察し、同じものと異なるものとに分類した。現在の私たちの思考方法にまでつながるこの二分法的思考の根源にある、私たちに共通した感覚する能力、それこそが人間の本質的な営みであり、人生に味を与えてくれる塩をつくるのである。
おそらくフランスの読者は、本書のなかに列挙されている「些細な何でもないもの」に自らの経験と重なるものを見出し、忘れていた思い出が喚起される喜びに満たされたことであろう。そうした意味では、文化の異なる私たちにはそのまま通用しない事柄も多いかもしれない。しかし、本書ではまた、現代社会に生きる人々が無意識のうちに求めているもの、経済的効率が優先される社会で忘れられ疎かにされがちな一見無意味に見えるような小さな出来事の一つひとつに言葉が与えられている。それらは、個々の文化や歴史を超えて、普遍的に人が人らしく生きるために必要なもの、それらに出会うことによって人生が豊かになるものである。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。