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靖国神社と歴史教育
靖国・遊就館フィールドノート
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年8月
- 書店発売日
- 2013年8月15日
- 登録日
- 2013年8月5日
- 最終更新日
- 2014年6月10日
紹介
閣僚が参拝するたびに韓国・中国など近隣アジアとの摩擦をうむ靖国神社とは。「軍都・東京」の視点による靖国神社を中心にしたフィールドワーク。「国民」を戦争に動員するための装置としての靖国や軍人会館(九段会館)の役割を明らかにする「アンチ」ガイド。
目次
はじめに
Ⅰ 東京の戦争遺跡の検証――巣鴨プリズン跡・北の丸公園・靖国神社[案内人:又吉盛清 記録・編集:黒尾和久]
【フィールドワークの視点~歴史の「現場」で語る】
【現場Ⅰ 巣鴨プリズン跡】
【現場Ⅱ 北の丸公園】
【現場Ⅲ 靖国神社】
【おわりに~遊就館の前にて】
Ⅱ 靖国教育の検証
在満少国民と靖国[吉岡数子]
近代教科書の中の靖国――教科書総合研究所の資料から[北島順子]
教育と戦争――教育目的・教育課程・教科書・教育評価・学校儀式[大森直樹]
Ⅲ 東アジアの靖国問題
琉球・沖縄から見た「靖国問題」[又吉盛清]
韓国から見た靖国問題[朴晋雨]
中国から見た靖国問題[王智新]
近代日本の戦争・植民地記憶をめぐる管理と再編成[君塚仁彦]
前書きなど
はじめに
いま東アジアには二つの動きがある。ひとつは、過去の歴史事実の検証を怠ることによって、戦争と差別のない未来の実現を損なう動きだ。だが、それだけではない。過去の歴史事実の検証を重ねることによって、戦争と差別のない未来を実現する動きも、人々の手でつくりだされてきている。
(…中略…)
本書は、二〇〇五年から二〇一三年の時期に、右の課題について、わたしたちが東アジア教育文化学会の活動としてとりくんできた内容を、三本の柱でまとめたものである。そのことを通じて、東京の戦争遺跡の検証を多くの人々の手で進めていくための手がかりを、可能な限り具体的に示したいと考えて本書の内容を構成した。
まず「Ⅰ 東京の戦争遺跡の検証─巣鴨プリズン跡・北の丸公園・靖国神社─」は、本学会が又吉盛清を案内人として二〇〇六年一〇月七日におこなったフィールドワーク「東京の戦争遺跡」について、その詳細な記録を黒尾和久と君塚仁彦による追加調査を得てまとめたものだ。この間、東アジアの多くの人々によって、靖国神社の訪問と学習が重ねられてきたが、歴史事実の現場に立つことによって、人々が何を感じたのか。その生きた言葉を記録に残し、国境と民族を超えて共有することができれば、靖国問題についての認識を、前よりも深めることができる。本書の冒頭に、フィールドワーク「東京の戦争遺跡」の記録を七九点の図版とあわせて掲げたのは、そうした国境と民族を超えたとりくみを進めるための叩き台のひとつとするためだ。
「Ⅱ 靖国教育の検証」は、二〇〇八年に、一部の国会議員と政府と教育委員会の連携によって、靖国神社を利用した教育(靖国教育)を復活させる動きが着手されている事実について、その認識を深めるために三本の論考をまとめたものだ。この問題の大きさを明らかにするためには、まず戦前の靖国教育について、事実が明らかにされる必要がある。かつて、日本植民地「満洲国」下で少国民に仕立てられた経験をもち、教科書研究を通じて、その自己検証をライフワークにしてきた吉岡数子の「在満少国民と靖国」は、類書にはない論考だ。北島順子の「近代教科書の中の靖国─教科書総合研究所の資料から─」と併せて、かつての靖国教育が、狭義の歴史教育の枠にとどまるものではなく、「諸教科に君臨するいわば『帝王』のごとき位置を占めていた」(海老原治善『復刻 国定教科書 解説』ほるぷ出版、一九八二年、七五頁)とされる修身(道徳)を筆頭教科として、歴史・国語・算数・音楽・図画等多教科の教科書によって、総合的に進められていた事実を知ることができる。吉岡・北島の両稿には、靖国教育の実相を伝える二四点の教科書資料も掲載している。
(……)
「Ⅲ 東アジアの靖国問題」は、靖国問題を東アジアにおける各地の視点から検証するために四本の論考を収録したものだ。又吉盛清「琉球・沖縄から見た「靖国問題」」は、日本の侵略戦争と植民地支配に動員された沖縄人が、命を失い、靖国神社に合祀され、次の戦争を準備するために利用されてきた歴史事実を、「沖縄人の「靖国化」」という概念によって分析している。この歴史事実をふまえ、現代沖縄の「靖国化」に警鐘を鳴らし、靖国神社が、人間の尊厳と相容れないものであることを、沖縄戦の実相からも明確にしている。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。