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マリアナ先生の多文化共生レッスン
ブラジルで生まれ、日本で育った少女の物語
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2013年7月
- 書店発売日
- 2013年7月15日
- 登録日
- 2013年7月10日
- 最終更新日
- 2013年8月2日
紹介
ブラジルから日本にやってきた日系ブラジル人少女が孤独と無理解に悩み、苦しみながらも、心ある教師たちの手で支えられ、日本の小・中・高を卒業、大学入学を果たし、公務員として同じ境遇の外国出身の子どもたちの支援する仕事に就くまでをつづった記録。
目次
はじめに(仲尾宏)
Ⅰ章 家族でブラジルから日本へ
1 両親のこと
父のブラジル移民/渡航一カ月/母のこと、父との結婚/ブラジルでの生活
2 私たち兄弟姉妹のこと
父のお酒/食べていくだけで精一杯
3 父・兄・姉、日本へ
お酒におぼれる父/日本への出稼ぎ/三人の暮らし/ブラジルの学校生活/日本からの便り
4 兄の死
遺骨になって戻った兄/父の涙
5 一家で日本へ
久しぶりの学校/祖母の死/ファーストクラスの旅/戸惑いだらけの到着ロビー/会社の寮で仮住まい
Ⅱ章 担任との出会いに恵まれて――三年生で日本学校へ
1 日本での生活が始まる
初めての外出/小学校三年生へ転入/三年四組へ「Bem vinda」/給食が食べられない/チョコはだめ!/寮を出て社宅へ/「日本語わからない」/言葉だけの問題ではなかった/言葉が通じるということ/姉夫婦とのもめ事/言葉が理解できない辛さ・弟
2 小学校四年生――勉強についていく
周囲の眼/姉夫婦の帰国/春休み
3 五年生に進級と弟の入学
「知っているよ、大丈夫だからね」/日本語で初めて自分を表現できた/バイリンガルの子/他人との同居/「お前なんてとっととブラジルに帰れ!」/「学校に来れないかな?」/学校に戻る勇気/「国に帰れ」……相談員の体験から/楽しいことも、憂鬱なことも/子どもの居場所と「無意識の差別」/ロザナちゃんの居場所……相談員の体験から(1)
4 小学校六年生――また、楽しい一年が過ごせる
漢字は書けても意味がわからない/弟が母語を忘れる/家族間のコミュニケーション……相談員の体験から(2)/応援団長「ゴールにむかってつきすすめ」/母親代わりのカルロスくん……相談員の体験から(3)/卒業式・母の涙/日本語漬けの生活で笑顔も消えた……相談員の体験から(4)
Ⅲ章 バスケットボールに明け暮れた中学校
1 入学
ラッキーだった?――それは違う/入学式/アンジェロくんのお弁当……相談員の体験から(5)/本当についていけるのかなあ/ピアスにこめられた思い/ブラジルでも日本でも生きていけるように――父の願い/転入生・ダニエラ/今までにないダニエラ/私がやるしかなくてさ……相談員の体験から(6)/三者面談・とりあえず「普通」でいたかった/母親役とバイリンガル……相談員の体験から(7)/文化を伝える資格なんて……
2 中学二年生
「ボン・ジア」――清田先生との出会い/日本で暮らせなくなる?/りゅうくんの家――不法滞在そして強制送還……相談員の体験から(8)/ブラジル人であることを拒む自分/まさか……先輩も?/あの練習をこえる辛さはない――夏の部活
3 中学校三年生――部活、体育大会、文化祭、そして進路
ルーズソックス/とりあえず走ろう/もう一度バスケやってみないか/背番号「19」――悔いは消えた/忙しい中学生活/タクトを振れる/高校受験/外国人にとって高校進学とは……相談員の体験から(9)/ダニエラの進路/合格確率七割/日本人の気分と外国人の現実/合格発表
Ⅳ章 教師を目指して大学へ
1 清田先生の誘い
高校生集会/ふたたび名前のこと/母の解雇/アルバイト/私には乗り越えられる環境があった/仮面をかぶった自分/外国人と付き合うのはやめとけ/同情される、そんなのはもっと嫌/自分の名前を隠す/「国籍は変えたくない」/「ハーフやったんやね」
2 外国人支援の仕事
外国の子を教える仕事/仕事は相談員/仕事として接していてはダメだ……相談員の体験から(10)/第二のお父さん――高田先生
3 大学へ
先生になりたい/教育実習/「マリアナ先生、オブリガード」/本当にやりたかったこと/偽らない自分――金さんとの出会い/やっぱり外国人の子どもたちと一緒にいたい
Ⅴ章 外国人の子どもを支援する仕事に就く
1 二十二歳 国籍選択
父の実家へ/国籍選択――偽物の日本人に/外国人と意識しない弟/「実は俺、在日なんよ」/「生きていくのがしんどくなるだけだぞ」
2 愛知県での仕事
転職、そして初めての一人暮らし/どうしようもできない子どもたちの辛さ/「しんどさ」をわけてくれたルアンくん……相談員の体験から(11)/所詮、「他人事」/「ここは日本ですから」/マサトとのこと
3 母の一時帰国
姉の出産でブラジルへ/両親の老後/母の再来日
4 結婚そして出産
マサトとの別れ/いつの間にかひかれていったユウキ/フリースクール――外国人の子どもはいなかった/もっと自分らしく、子どもらしく、自然に生きる/妊娠そしてユウキと結婚/新しい命/言葉が通じなくとも接することはできる/弟のうそ/マユミからの電話/“すごいー!”――私の赤ちゃん/誰もが自由に生きられる環境/言葉の独り歩き・「多文化共生」/若き母・サラちゃん、自分らしさを出しながら自由に……出産の相談も
おわりに
解説(はつだ もとあき)
前書きなど
解説――滋賀県の外国籍の子どもたちをとりまく状況(はつだ もとあき:在日外国人の教育を考える会・しが)
(…略…)
「マリアナさんの願い」
以上挙げてきた外国籍の子どもたちを取り巻く多くの課題がある中で、マリアナさんは滋賀県で育ちました。彼女は今まで経験したこと、感じたこと、考えたことを本にしたいと願いました。それは、日本に住む外国籍の子どもたちの現実を多くの人に知って欲しかったからです。
私は、かつてアイルランドから転校してきた生徒と親しくなったことがあります。その生徒は、小学校六年の時に、アイルランドに行き、高校二年の時に日本に帰ってきたのです。その子はこんなことを話してくれました。
アイルランドの学校でテストを受けたときのことだそうです。クラスで試験を受けているときに、担当の先生が試験中に彼の横に来て答えを教えてくれたというのです。教科は歴史だったそうです。周りで試験を受けていたみんなはそのことを知っていましたが、先生に何も言わなかったそうです。
いろいろとこのことについての意見はあると思いますが、私はこう考えました。彼はアイルランドへ来たばっかりで言葉がわからない。まして、アイルランドの歴史もわからない。その子に答えを教えることはすごく当たり前のことだ、と。そして、クラスのみんなもそう思っていた。彼は、アイルランドの教育の中で自分の気持ちや意見をはっきりと言う子どもに育っていきました。が、日本に帰り日本の学校で、彼はそういう素敵なところをどんどん失っていきました。彼は高校を卒業したらアイルランドで就職することを望みました。
「世界人権宣言」の第一条に、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」と、第二条に、「すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる」とあります。
この本を通して多くの人に、外国籍の子どもたちが置かれている状況を知って欲しい。そして、この本が外国籍の子どもたちが日本の中で、外国籍市民としてその力を充分発揮でき、夢を叶えられる社会を実現するための種になることを願います。
上記内容は本書刊行時のものです。